七瀬さんの進め!オトメ大作戦!!(第1話) 投稿者: 将木我流
Operation1『七瀬さんの決意!』

「はぁ…」
ガシャン、という音が屋上に響く。七瀬留美がフェンスにもたれかか
ったからだ。ふぅ、とため息をつく七瀬。空を見上げると、かすかに赤
く染まっていた。ふと視線を横にそらすとそこには一人の男子生徒がい
た。七瀬と同じクラスの、折原浩平である。

「で、話って何だよ?」
浩平は七瀬に呼び出されたのだった。『放課後、屋上に来てくれない
かな?』と。一体何をされるんだろう?と思ったがまあすぐに終わるだ
ろう、と思ってここに来たのだ。すると、七瀬がぽそりとつぶやいた。
「やっぱし瑞佳って人気あるんだねぇ…」
『瑞佳』というのは、もちろん七瀬と同じクラスにいる長森瑞佳の事
である。
「…んな事言ったってよぉ…一応お前は2位なんだぜ?」
ちなみに説明しておくが、2位というのはつい先日七瀬と浩平のクラ
スの男子によって行なわれた『女子人気投票』のことである。ひょんな
理由でこの事を知った七瀬は、この人気投票で1位となるべく様々な努
力を行なったのだが、結果は2位だった。そして、その人気投票で1位
だったのが長森瑞佳だったのである。
「俺としては2位でも十分だと思うんだけどなぁ…」
「ダメよ!」
さらりと慰めれば七瀬がぽそぽそ言って終わるかな、などと甘い考え
をしたのだがやはりそううまくは行かなかった。というか、浩平の心中
としては早く帰って再放送の某刑事もののドラマが見たかったのだが、
そんな事を言うと七瀬に何をされるかわからなかったので、やめた。
「それじゃあダメなの!これはまだ私が認められていない証拠なのよ!」
「…そんなもんかぁ?」
「そんなもんよ!」
…おいおい、どうやったらそうなるんだ?と思ったが、ここでヘタな
事を言うとマズイというのは七瀬が転校してきてから今までの僅かの時
間しかないが十分に承知していたので、黙る事にしといた。
「で、どうする気なんだ?」
こういう時は七瀬に好きに話させればいいや、と安易に考える浩平。
すると、
「修行よ!」
「…は?」
七瀬の口から発せられた言葉に浩平は素直に驚いた。
「修行をするのよっ!私が完璧なオトメになるための修行をねっ!!」
というか、今時乙女を目指す者が『修行』なんて言葉を使うか?もしか
したらギャグ?と思ったが…それは七瀬の様子を見れば一目瞭然だった。
マジだ、こいつ…
その時、浩平は七瀬のバックに炎を見たという…イメージだけどね(笑)
「ま、まあ…それはいいだろう…(あんましよくないけど)
…ところで、七瀬。お前の修行になんで俺が関係あるんだ?」
「ふっ、そんな事もわかんないなんて、まだまだ甘いわね浩平君」
わかるかっ!と言いたかった浩平だったが、やめといた。
「いいこと?今回の人気投票を見てもわかる通り、女子の評価をするのは
男子なのよ。つまり、理想のオトメになる為には男子の意見が必要不可欠
なのよっ!」
「…それで、俺か?」
「まあサンプルとしては粗悪かもしれないけど、ないよりはマシ、ってや
つね」
「な、なんだとぉぉぉ!!」
サンプルはともかく(いや、それでも十分不快なのだが)粗悪まで言わ
れては浩平も黙ってはいなかった。だがその時、
「ふ〜ん、浩平ちゃんは粗悪品なんだぁ〜」
「えっ!?」
「おわっ!?」
突然現われた第3の声に驚く2人。慌てて振り返ると…
「…あ、なんだ、先輩か」
「ふふっ、こんにちは折原くん。それと…七瀬さん、だったよね?」
「は、はい。こんにちは…川名先輩」
そこにいたのは川名みさき。七瀬と浩平とは1年上の3年生である。
ちなみに、何故七瀬と川名先輩がすでに顔見知りであるのか、という事
をツッコんではいけないよ(笑)作者が困るから(^^;;
「…ところで先輩、今日は何用だ?」
「別に用なんてないよ。今日は掃除当番でもないしね。それに、私がこの
場所が好きだって一番知ってるのは折原くんな筈だよ」
「…あ、そういえばそうだったな」
そんな話をしていると風がそよりと屋上を流れ、みさき先輩の髪がふわ
りと揺れた。
「今日の風は気持ちいいね。七瀬さんもそう思わない?」
「えっ?あ、えっと…ちょっと寒いかな?」
「う〜ん、確かにそうかもね。あ、ところで、こんな人気(ひとけ)のな
い屋上で一体何をしてたの?」
「あ、それは…むぐっ!」
何の抵抗もなく喋ろうとした浩平の口元を慌てて七瀬の右手が塞ぐ。そ
して浩平の耳元で息だけを吐き出すような声で、
(ちょっと!軽々しく言わないでよね!)
(いーじゃねーかよ!減るもんでもないだろが!)
(減らないけど恥ずかしいでしょーが!)
(恥ずかしいんだったらやるなよ!)
(努力はあんまし人に見られたくないのよ!)
「…ううっ、私を無視して話さないでほしいよぉ〜」
向こう側で一人取り残されたみさき先輩がさびしそうにつぶやいた。
「えっ?あ、いや、別にそーいうわけじゃねーんだけど…」
浩平がそこまで言った時、
「…あ。わかった」
強制割り込みをかけるようにみさき先輩がつぶやく。そして急に恥ずか
しそうに、慌てるようなそぶりを見せた。
「わかった…って、何が?」
そんな浩平の問いかけを無視するようにみさき先輩はしゃべり始めた。
「ああ、なんだ、そうだったのかぁ…人気(ひとけ)のない冬間近の屋上
でうら若き男と女が…ああ、これは悪い事をしちゃったね。あ、別に私は
構わなくていいからね。私、目が見えないから声さえ出さなければ…」
「ちょ…ちょっと川名先輩!?一体何を言ってるんですかぁぁぁぁ!?」
顔をぼうっ!という効果音が似合いそうな程に真っ赤にした七瀬が先輩
につっかかる。続いて浩平も、
「違うっ!なんで俺が七瀬なんかと!」
「何よっ!私だってどーして折原なんかとっ!!」
異常興奮する浩平と七瀬。それに対してみさきはとぼけたように、
「二人とも、一体何を言ってるのかな〜?」
「えっ?だ、だってみさき先輩が…」
「別に私は何も言ってないよ。私が言った言葉を二人が勝手に邪推しただ
けだよ。違うかな?」
ふふっ、と微笑むみさき先輩。してやったりな笑顔。
それに対して浩平は…
「うっ…ぐぐぐ…言い返せない」
正直言って、自分が想像した事はとてもじゃないが声に出して言えるも
のじゃなかった。まんまと先輩にハメられてしまったのだ。
不覚!折原浩平!!
「へへっ、私の勝ちぃ〜」
そう言いながらみさき先輩は両手で小さなガッツポーズを作った。
…外見からは想像できないような無邪気な笑顔を見せる川名先輩…とい
う風に七瀬には見えたそうだ。七瀬から見ると川名みさきという女性は
『おしとやかで物静か』に見えるらしいが、実際には非常におちゃめな人
である。
「ま、とにかくお熱い2人の邪魔はしちゃあいけないから、私はこれで失
礼するよ」
「誰がお熱いんですか、誰がっ!?」
「それじゃぁねぇ〜」
最後の浩平のセリフを無視しつつみさきは手を振りながらドアを開け校
舎に戻っていった。これで、屋上にいるのは再び浩平と七瀬だけとなった。
「全く…みさき先輩もいい加減にしてほしいぜ。なんで俺が…って、あれ?」
ふと気付くと、七瀬は肩を振るわせながら両手でフェンスの金網を掴ん
でいた。
「ど、どうした七瀬!?」
「…ダメだった…」
「へ?ダメだったって、何が?」
「さっきの私…自分が保てなかった!みっともない姿を見せちゃった!」
…ああ、さっきのみさき先輩のやつか。七瀬のやつ、完璧に自分の本性
さらけだしてたからなあ…
「やっぱり私には修行が必要だわ!それしかないわっ!」
「…なあ、七瀬。本気か?」
「本気っ!」
瞬時に返された。こりゃあもうダメか…
「とにかくっ!明日から私の修行が始まるわ!あんたは私の補佐!いいわ
ねっ!」
「…へいへい」
気付かぬ間に再放送ドラマが始まる時間になっていた浩平の心情を作者で
ある僕が推測するならば…きっとこうだろう。
『もう、どうにでもしてくれ』


"次回予告!"

オトメの階段を昇ろうとする少女、その名は七瀬留美!
しかし、そんな彼女に迫りくる影!
果して彼女の運命はいかに!
そして…極限状態で彼女が見たものとは一体!?
うなる七瀬さんの新必殺技!その名は…!!

てゆーか、本気でそんな事を考えてるのか作者!?
まあ、どうせこんな作者の事など誰も信用しないだろうからいいけどっ!
(本当か!?本当にそれでいいのか俺!?)

とにかくっ!次回『七瀬さんの進め!オトメ大作戦!!』
Operation2『オトメの黄金率作戦』に、進めっ!七瀬さんっ!!

<追伸>
諸処の事情により内容が予告と異なる場合がありますので、その点につ
きましてはあらかじめご了承下さい(爆)

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どもども〜、SS初登場の将木我流です〜。
散々またせといて、書いたSSがこれ…
はぅぅぅ、申し訳ないですぅ〜!
しかも続きもの!どうお詫びすればいいんだぁ〜!!
しかも文章ボロボロだし…ネタはベタだし…タイトルしょぼいし…
でも僕にシリアス書く能力もないし…
ああ、なんか今回であっさり脱落の運命を辿るかも…
一応第2話も完成間近だけど…う〜みゅ〜…
僕なりには頑張ってみましたけど…ううっ。
とりあえず、叱咤下さい。激励は…ついででいいです(^^;;

でわこれで…