始まりはいつも最終章 Vol 1.0c 投稿者: 瑞希 龍星
☆あらすじ

 かつての親友、氷上に攻撃されるも、彼は本意で戦っていたわけではなかった。浩平の
強さを再確認した氷上は、彼らのために自らの命を犠牲に扉を開いたのであった

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「先を急ごうよ…長引けば長引くほど、みんなが苦しむだけなんだから…」
「そうだよ、先輩の言うとおりだよ。それに、私もこんなところには長居はしたくないよ。」
「あぁ、分かっている…だが油断するなよ。焦れば焦るほど、奴等の思うつぼになってしまう
からな。茜、椎名、周りの気配を出来るだけ掴んでくれ…」
「みゅ!(了解!)」
「…分かりました…」

 周りに注意しながら、扉の中に踏み込んでいく。今までとは比べ物にならないほどに感じが悪い場所だ。
光もろくにない。浩平は軽く指を鳴らすと、光の球体を4っつほど生み出し、それを浮遊させる。どうやら
ここは森の中のようだ。

 「何か感じるか?茜……」
 「…いいえ、不気味なまでに…」
 「そうか…」

 起伏が激しい場所に辿り着いたころ、浩平達は休憩することにした。考えてみれば、ここに突入してから
ほぼ休み無しで進んできたために、いったい何日過ぎたのかさえわからなくなっている。

 「…気を付けてください、何か来ます…」

 みんなが思い思いに体を休めていると、茜が警告を発してきた。同時に彼女の姿が消える。その近くにい
た瑞佳も姿を消す。

 「なにっ…」
 「無駄な足掻きは止めろよ、浩平…」
 「おまえはここで消えるんだ…」
 「住井!南!」
 「折原君…君はいけない生徒だね。先生の言うことは聞くものだよ…」
 「か、髪…あんたまで……」

 気配を消して近づいたのだろう、茜以外彼らに気付くものがいなかった。そのために初動作が遅れてしま
う。瑞佳と茜は、住井、南によって捕らえられている。髪が、眼鏡を指で支えながら笑っている。そのこと
に気付いた浩平達はすばやく動く。七瀬はまだ先程の戦闘で力が回復していない。みさきは奥の樹の影に、
繭は盛り上がっている土の影に、澪は目にも止まらないほどの速さで木の上に飛び登る。
 一瞬の静けさが辺りを覆う。隠れている3人を確認した浩平は、手を髪に向ける。

「我が身に仕えし精霊よ 我が盾となり
      その威力を示せ 光曲暗静!!」

 彼の手から発せられた光は、全ての間を瞬時に駆け巡っていく。あらかじめ予測できていた浩平側はその
ための対処をしていたが、何も知らない住井達は視力を奪われる。茜と瑞佳は、それぞれに肘打ちを食らわ
せて彼らの手から逃れる。住井が何とか瑞佳を取り押さえようとしたとき、繭が生み出した水流に押し流さ
れ頭を樹木の幹に強く打ちつける。また、南に対しては、澪がジャンプキックを浴びせて、その場を茜とと
もに離れている。
 光の暴走も収まり、視力を取り戻したころには、浩平達は万全の構えで住井達に対していた。

「不甲斐ない生徒だねぇ…では、今度は私からいきますか…」

 髪は手を翳すとゆっくりと流れるような動作で円を描く。浩平と同じように光球が発生し始める。

「プリズム レイン アタック!!」

 七色に輝く光の槍が無数に浩平達へと襲い掛かってくる。どう動いてもかわせそうにない数だ。茜が突然
浩平達の前に立つ。

「…シールド……」

 すべての槍が、茜の前で弾かれていく。弾かれた槍は、まるで意識を持っているかのように髪に向かって
飛んでいく。髪は素早く身を隠そうとしたが、僅かに及ばずに肩に一つ食らった。そうなると残りの槍はか
わすことが不可能に近い。次々に襲いかかってくる槍を体中に受けて髪は谷底へと落ちていった。
 ほっとする暇もなく、南が攻撃を仕掛けてくる。

「ゴースト フレーム……」

 一瞬の風を感じたと思ったとき、浩平の周りには、七瀬、繭、澪、そして敵対している住井しかいなかっ
た。

「なっ…ここはどこだ!?」
「折原…今ここで貴様を葬り去ってやろう…」

 先ほど、したたか打った首を2,3回ならすと、攻撃態勢に移る。浩平は、繭に七瀬を守るように指示を
送り、同時に澪に攻撃の布陣を組ませる。住井は、とりあえず防御力の回復してない七瀬に狙いをつけ、執
拗なまでに追いかける。その動作は同時に浩平達からの攻撃をかわすことにも通じていた。繭はひたすら水
の精霊を召喚しては防御に徹している。だが、だんだんに気力が失われ、召喚することもままならない状況
に追い込まれていった。

「っ!」

 小さな悲鳴を上げて、繭は倒れた。足下を入り組んでいる木の根に取られていた。とっさに今まで庇われ
ていた七瀬が木刀を横に構えて防御に入る。

「そんなものは、なぁんの役にも立ちはしないよっ、七瀬さん!」

 住井は回し蹴りと斜蹴のコンビネーションで木刀を弾き飛ばした。指を軽く鳴らし、三つ又の槍を取り出
すと彼女の喉元を目掛けて突き刺す。すんでの所で繭が足下をすくう。後ろに流れた体を住井は地面を軽く
蹴って体制を整えて今度は繭の側頭部を突く。繭は左前方に回り込むと、腹部目掛けて拳を投げ出す。素早
く彼は柄の部分を使って彼女を弾き飛ばす。一進一退の攻防が続いた。

「やるね…繭ちゃん。でも、これはかわせるかな!?」

 素早く炎を槍先に発生させると、彼女に向けて、3方向に飛ばす。一見、見当違いの場所に飛んでいくよ
うに見えたが、やがて、彼女を取り囲むように襲いかかる。気づいたときにはもはや手遅れだった。火炎が
収まると、そこには彼女の手に巻いていたスカーフが燃えていた。

「そ、そんな…あれは私があげた制服のスカーフ…」
「残念だったね、七瀬さん。彼女が悲しまないように君にも逝ってもらおうかな?」

 ニヒルに口元を曲げ、槍で彼女を貫こうとした瞬間に、激しい衝撃に包まれて、彼は空を飛んだ。身を翻
して、彼はすぐさま体勢を立て直す。

「折原……、ようやく僕の動きについてこれたか…」
「住井ぃ!消えろ!」
「無駄だとは分かっているけど、一応忠告しておくよ……君は僕には勝てない。」
「やってみなければ分からないだろっ!
    我が身に仕えし精霊よ 我が刃となりてその威力を示せ!
                         光牙乱舞槍!!」

 浩平の両手より離れた光の槍は、所狭しと飛び交い、やがて住井を包み込むように突進していく。住井は
片手を天に上げ、静かに振り下ろす。彼の足下から発生した炎はやがて巨大な渦に姿を変えながら天に駆け
上った。その渦に巻き込まれた光槍は、同じように天に向かってその姿を消した。

「な……」
「どうだい?これで力の差が分かっただろう?繭ちゃんが可哀想だから君たちも早く彼女の
下にいったらどうだい?」
「ふん……繭は生きてるぞ。そんな簡単にあいつを死なせるわけにはいかない。」
「なに?」

 やがて、浩平の背後にある木の陰から澪に支えられて繭が姿を現した。

「情報力不足だな、住井。澪の能力をなにも分かっていないようだな。」

 浩平は薄暗く笑うと、七瀬を立ち上がらせ繭に預ける。繭に、とりあえず安全領域に行くことを伝える。
繭はすぐには了承しなかったが、七瀬が苦しそうにしているのに気づくと、了解することを示すべくその場
を離れた。住井は、なぜ繭への攻撃が不完全に終わったのか理解できたなかった為に、動揺して次の行動を
とれない状況にいた。

「これで心おきなく全力が出せるってものだろう、なぁ住井ぃ。」
「なにも状況が変わったようには思えないのだけど?」
「お前だけならば、澪がいれば十分だ。」
「へぇ〜、すごい自信じゃないか…では、試させてもらおうか!!」

 住井は、掌で空を切り裂いて鎖のようにつながった炎を作り出し、二人に向けて走らせた。炎が接触しそ
うになったとき、二人の姿は住井の斜め後方の場所にあった。それに気づくと素早く指先で文字を描くよう
にして、再び二人に迫る。しかし、今度は逃げずに浩平が片手で打ち消した。

「なかなかやるな…」
「澪…少しここで休んでいろ…」
『わかった』
「俺が合図したら、予め頼んでおいた通りに頼む。」
『それまで、気力を蓄えとくの』
「さて…今度はこちらから行かせてもらうぞ、住井!」
「望むところさ。」

 地面一蹴りで住井のやや上方に飛び立つと、体を前面に回転させ踵落としの体制に持っていく。住井は予
測していたように、その蹴り側の足を体の外方向に打ち抜き、腹部に膝蹴りを入れようとする。両手でその
膝を受け止め、片足が地面につくと同時に足払いと足払いとは反対方向に左胸部へ肘打ちを入れる。彼は、
足払いのみを受けた方がダメージを軽減できると体を急速に倒しつつ地面を蹴る。浩平の足払いは途中から
変化し斜め上方へと走った。住井の踵部分に当たり、彼は頭強打した。しかし後方回転で素早く間合いを取
ると多少ふらつきながらも、浩平に向かい攻撃の構えをとった。

「っ〜〜〜なかなかいいものを持っているな…浩平」
「このまま倒してもいいんだがな、長森たちの居場所を聞かなくてはならない。」

 浩平が長森の名を口にしたとたんに、住井は今までのふざけたような表情から、一気に怒りの表情に移っ
た。

「長森…、長森…、長森 瑞佳…」
「……?」
「そうだよ…お前が居るから彼女は俺を見てくれないんだよ…」
「は?」
「俺は彼女に交際を求めたのに、お前…お前…貴様のせいで断られたんだっ!!」
「何で俺のせいなんだよ!?」
「誰も貴様のことなんか覚えていなかった……覚えているはずがなかったんだ…」
「なぜそのことを知っているんだ!?」
「うるさい!!そうだよ…七瀬さんもいけないんだ…彼女が貴様のことを覚えていなければ長
森さんも貴様のことを忘れていたはずだ…貴様らはどうして俺の邪魔ばかりするんだ!!」
「それはお門違いってものだろ…」
「里村さんもそうだ…南は彼女のこと好きだったのにふられたんだ…それも貴様が戻ってくる
からだ!この現実世界にっ!」
「ここが現実世界だ?そんなわきゃねぇだろ…」
「ここはな…俺たちにとって現実の世界なんだ…お前はここでは生きていてはいけないんだ。
今頃、里村さんと長森さんは南に従っておとなしくしていることだろうよ!」
「……もう一度だけ聞くぞ……」

 浩平の髪が不気味に波打ち、やがて彼が伸ばした腕の先に光の渦が複雑に入り組んだ光球が現れた。上か
ら落ちてきた木の枝が、その光球を通過したとき、粉末状になって空中を彷徨った。

「長森達は何処にいる…」
「……」

 住井は答える代わりに地面に拳を叩き付ける。その後、一本の炎の渦が立ち上り、浩平に向かって走り始
めた。浩平は、その周りのもの全てを巻き込むようにして突き進んでくる炎とは対照的に、静かにその光球
を解き放つ。光球が突き進む速度は、亀の如く遅い。住井は、彼は術の構成に失敗したものと思い油断して
いた。彼は気付くべきであった。先ほど、繭を攻撃したとき何故に彼女は退避できたのか。そう、彼は気付
くべきであったのだ。長森の名前を耳にしたとたんに、彼の頭脳は冷静という二文字を完全に闇の中へと消
してしまったのである。浩平が、指を軽く鳴らす。住井がその音に気付いたとき彼の視界に浩平の放った光
球が迫っていた。

「なにっ!」

 とっさに避けようとしたが、その為にはあまりにも光球に近付きすぎていた。光球の速度は変わってはい
ない。

「そ、そうだったのか…澪ちゃんの能力は……」

 彼の右側を光球が掠めていく。彼の右腕及び、右耳付近を、赤い粉末に変えられていた。

「澪の能力はな…ものを瞬間的に移動させることができるんだよ。ただし、一日に何度も使う
と発動しなくなるがな…。」
「くっ……今の光球は失敗じゃなかったのか…」
「俺の使える数少ない最終奥義の一つなんだがな…欠点は見ての通りだ。」
「ふっ…、効いたぜ……」
「住井、長森たちは何処に行ったんだ?」
「……お前がどうあがこうと無駄さ…」
「??」
「南のあの技は……複数の別世界…を作成できる…ものなんだ…」
「で、どうやれば元に戻る?」
「だから…言っただろう……無駄だと……長森さん達が南を…倒さない限りね……」
「そうか…」
「このまま…この世界にいた方が……お前に…とって幸せかもしれないぞ…」
「なんのことだ?」
「そ…のうちに…わかるさ…」
「??」
「………」

 やがて、しばらく痙攣してから彼の体は動くことは永遠に叶わなくなった。浩平は、最後に住井の漏らし
た言葉に疑問を持ちつつ、木の幹にもたれ込んでいる澪を抱え上げ、七瀬と繭の元へと向かった。

「おわったの?」
「ああ……」
「みゅ……」
「大丈夫、大丈夫だ、繭。何も心配いらない。」
「みゅ〜!」
『これから、どうするの?』
「待つ…」
「誰を?」
「長森たちな、こことは別の世界に南と移ったらしい…だから、あいつらが南を倒して戻って
くるのを待とう。」
「何か出来ることはないの?」
「あいつらが戻ってきたら、俺達が彼女たちを守らないといけない。せいぜいそれまでは休息
をとって、気力の回復につとめる。今出来るのはそれだけだ。」
「そうね…彼女たちも疲労して戻ってくるだろうしね。ここにいる間はどうやら敵もでないよ
うだし……私…一眠りしてもいい?」
「あぁ……」

 七瀬は、浩平に体を預け目を閉じた。繭はそれを見て、浩平の膝に頭を乗せて目を閉じた。澪も、笑いな
がら七瀬の反対側に身を預け、袖をしっかりつかんで同じように目を閉じた…。しばらくすると、3人とも
かわいらしい寝息をたて、深い眠りについた。浩平は、幹に背を預けて、微笑んだ。

(そういえば、こっちにきてから微笑むことなんて無かったな…長森…茜…みさき先輩…無事
に帰って来いよ……)

 やがて浩平も、疲労回復の眠りへとついた。

                                    To be continue ...

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☆あとがき

 前回からかなり時間があいてしまったので、前回のa、bの部分忘れてしまった人が多いのでは
ないでしょうか?
 しかも、私自身、タイトル大忘れしてしまってます(−−;;
 最終章とか言っておいたにもかかわらず、なかなか終わらない〜〜〜(前回も言った……)
 dパートは出来るだけ早く公表したいです……いやホントに…嘘じゃないですって……あれ?浩平君、
何でその光球、俺に向けてるのぉ〜〜〜(;_;)

☆感想

すみません〜〜まだ読んでないです

ps.
 また過去ログ頼むかもしれません……
前回頼んだときに、暖かくメールをくださった方々に
再び心から感謝します
 それと……HP持っている方々に無断でリンク張りました(^^;;
ご了承のほどを m(_ _)m

http://www.freepage.total.co.jp/Ryuhsei/