The Spirit World Ver ONE No.1 投稿者: 瑞希 龍星
 静かに目を閉じ、息を整えればいい…
 ただひたすら待てばいい……
 やがて光と光が交錯する通路への扉が開かれる…
 進もうと思えば身体は前を目指して動き始める…
 通路の向こうに見えるアーチをくぐり抜ければ…

 「よぉ、今日もあえたな。」

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 「おぉい!浩平! 」

 校門を出たところで、俺を呼ぶ声がだんだんと近づいてくる。俺の知り合いの中で、こんなに騒々しい奴は
一人しかいない。

 「ん?どうした?」
 「今日暇か?この前言っていたCDを買いに行こうと思ってるんだけど。」
 「俺にもつきあえってことか?」
 「わかってるじゃないか!」
 「しょうがないな、行くとするか。」
 「おう!」

 こいつは中学以来の友人の“住井 隆”だ。いつも叫ぶように話すので俺にとっていい友人と呼べるかどう
か知らない。だが、居ないと居ないなりに物足りなくなる存在でもある。部活なんかしていないくせにかなり
体格はがっしりとしている。ちなみに俺は部活には入っているが幽霊部員やつだ。

 「今日の掃除はサボりなのか?」
 「当然!!何で俺がそんなめんどくさいことをしなくちゃいけないんだ?」
 「まぁ、お前がまじめに掃除した日には雨でも降りそうだけどな。」
 「言ってくれるね。これでも浩平よりは真面目なつもりなんだけど。それより早くいこうぜ。」
 「あぁ。」

 本当に俺はつきあいのいい奴だ。本音を言ってしまえば、無駄な時間を消費している暇はないのだが、仕方
あるまい。友人関係とは後々自分にとって有効に働くことがあるんだからな。
 バスの窓の外を流れていく景色を見ながら、隆の話に相づちを適当に打っている。奴はこうしているだけで
満足している。他の奴ならば何かと失礼かもしれんが、こいつは話すことに集中するから他人の仕草にまで気
が回らない。
 だから必然的に声がでかくなるんだろうな。周りに目をやるってことがない奴だからさ。
目の前に座ってる婆さんなんかさっきからひたすらしかめっ面して隆を睨んでいる。
 ご愁傷様。
 そんなこんなしているうちに目的地に到着。時間潰しにはこいつの話がもってこいだな。

 「これだよ!これ!最近アルバム出してないから気がおかしくなりそうだったよ。」
 「そんなもんか?」
 「だぁっ!浩平、このグループのサウンドはかなりいいんだ!よし、俺のコレクションから
 おまえに数枚貸してやる。この良さを共に感じようじゃないか!?」
 「…」

 (あぁ……、俺は周りの客と共感してるよ…)

 その後奴に引っ張り回されて、結局家に着いたのが8時過ぎ。
 何であんなに体力が有り余ってるんだろう?その力をもっと他に有効活用できないもんかね。

 「ただいま…」

 おばさんの家に居候している身分上、家には誰も居ないことは珍しくない。おばさんはいつも仕事で帰りが
遅いし、そのくせに出かけるのは以上に早い。
 彼女でもいれば飯でもつくってもらえるんだろうなぁとか考えながら夕食の準備に取りかかる。別に女が嫌
いって訳でもないけど、でも必要性が感じられない。理由はあるのだけど……。それに比べれば住井なんかは
欲望の固まりって感じだ。思わず含み笑いをしてしまう。去年の秋頃、住井が胸をかなり強調した女性と擦れ
違ったとき、ふらふらとついていこうとしたのを瑞佳と共に押さえたのを思い出したからだ。
自分の部屋のドアを開け、後ろ手で静かに閉める。ふと机の上に整頓された封筒に目をやる。
確かこれはベットにあったはずなのだが…。瑞佳のやつまた勝手に人の部屋を掃除しやがったな。あれほど
俺の物に絶対触れるなるなと言ってるんだがな。
 クラスの連中に言わせればよくできた幼なじみということになるらしいが、変に気心が知れているだけにか
なりうざい。早く大学にでも行って一人暮らしがしたいものだ。それでも瑞佳のことだ、何かにつけて世話を
焼こうとするに違いない。
 夕食を終え、また自分の部屋に戻った俺は不意に軽く頭痛を感じた。他の奴らならば、病気の前触れかなど
と考えて薬などを飲むかもしれないが、俺にとってこれはもう一つの世界への扉が開かれる前触れである。
 今日はいつもより早いじゃないか。彼女もかなり退屈しているようだな…。まぁ、遅く行くとまた機嫌が悪
くなるだろうから旅立つとするか……。
 俺は部屋の照明を暗くし、ゆっくりとベットに沈み込む。後はいつも通りに呼吸を整えればいい。だんだん
身体から力が抜けていき、視覚が暗いはずの周りから残された光を凝縮し瞼の裏側に集まってくる。光の筋と
闇の筋が交互に入れ替わったり交わったりする。まるでワープでもしているようだ。そして筋上の光が突然粒
に変換され無限の闇へと広がっていく。目を開けるとだんだん色彩がはっきりしている。いつもと同じように
俺は雲の中に登場した。下に行こうと思えば自由に動くことが出来る。ゆっくりと雲から離脱し地上に向かっ
て進んでいく。目標はいつもと同じ緑の広がる高原。その場所にはまだ点にしか見えないが、やはり彼女が頬
杖をして待っている。やがて彼女も俺に気付いたようで、手を振りながら俺の降りてくる場所を予想して駆け
てくる。地上に降り立った俺は同じようにやはり手を振りながら彼女の元へと急ぐ。

 「よぉ、また会えたな……」
 「そうね、私ずっと待っていたの…」
 「そいつはどうも。」
 「いいえ、どういたしまして。」

 俺がまじめな顔で礼を述べると彼女はスカートの裾をつかみ首を傾げて答える。しばらく見つめ合っていた
が、やっぱり俺たちにこんな動作を似合わないように感じられる。

 「慣れないことはしないほうがいいね。」
 「そうね、同感よ…」
 「いつきてもここは気分が落ち着くなぁ。」
 「いきなりどうしたの?」
 「実は向こうで今日さぁ………」

 俺の世界での話を聞かせてあげると彼女はいつも興味津々といった顔で熱心に聞いている。彼女のこの仕草
がとても気に入っている。いつまでもここに二人で過ごせればいいのに、別れの時間はいつもやってくる。誰
にも邪魔されない俺だけの時間、俺だけの世界。それでも別れはやってくる。矛盾しているとは思うが、この
世界がどういった理念で形成されているのか理解できない以上いくら考えてみても無駄なことでしかない。

 「こんどはいつきてくれるの?」
 「来れるときに来るさ…」
 「意地悪なのね…」
 「そうかな?」
 「そうよ…」
 「うーん……そうなのかなぁ?」
 『早く気付いてほしいの……』
 「えっ、何か言った?」
 「いいえ、別に…。ほら、早く行かないと駄目なんでしょ。」
 「あぁ。それじゃ」

 いつも別れ際に行うように彼女の頬に優しく口づけをし、空に上っていく。最後に彼女の言ってることは実
は聞こえているけど、彼女自身が実際に話してくれるまでは俺は聞こえないふりをしようと決めている。来た
ときとは逆の順序で光と闇の競演が行われる。身体に急速に重力が戻ってくる。

 「浩平!早く起きてよぉ、遅刻するよぉ。」
 「う…ん…」
 「……」
 「っ!!!」

 いつも通りに起こしに来た瑞佳がなんかいつもと違うことをしやがった。頬に何か心地よい感触を感じ、そ
れがこいつの唇だと思ったのだが、何か違う……。やけに野生のにおいがする。ゆっくりを目を開けてみると
目の前にきょとんとした猫がいた。瑞佳は猫の肉球を気持ちよさそうにいじくり回していた。

 「お前なぁ!なにをしやがるんだよ!」
 「目覚めの悪い浩平が悪いんだよ。でも目が覚めたでしょ?」
 「あぁ、ばっちり覚めたぞ。」
 「早く着替えないと今日も遅刻だよ。」
 「う…、もうそんな時間なのか……、今日は風邪をひいている、重傷だ、だから自主休校にする。」
 「だめだよ、早く起きて!」
 「わかったよ……」

 布団を退かしてゆっくりと立ち上がる。なぜか瑞佳は顔をだんだんと赤らめて最後には倒れるんじゃないか
と思うくらいになった。

 「¢£%#&*@§☆!!!」

 訳の分からない言葉を発して瑞佳は力任せに扉を閉め、階段をあわてて降りていく。
 おっ、今3段目あたりで足を滑らしたな…。まったく、何やってんだ……。
 いつもと変わらぬ世界。ここは現実というなの世界。だったらさっきの世界はさしずめ幻想といったところ
かだ。

 「おはようさん、浩平と永森さん。」
 「朝から元気だな…住井……」
 「おはよう、住井君。」
 「なんだなんだ?朝っぱらから調子悪いのか?」
 「あぁ、瑞佳の起こし方が悪いからいつもこうだよ。」
 「えぇ!ちゃんと普通に起こしたよ。」
 「瑞佳さんに起こしてもらえるんなら良いじゃないか!」
 「お前…一度おこされてみたらいいんじゃないか?」
 「ひどいよ浩平。いつもなかなか起きないから悪いんだよ。」
 「ところで浩平。今何時だ?」
 「ん…と、………」
 「おぉい!なぜに走り出す!」
 「遅刻するぞ、今のままのペースじゃ!」
 「だ・か・ら、今何時なんだぁ!!」
 「待ってよ、浩平!!」

 俺達三人は押し問答しながら急いで学校へと走るのであった。

 「あら、おはよう。」
 「おぉ、早いな、七瀬。」
 「俺達が遅いと思うんだがな、浩平……」
 「浩平はいつも時間にルーズなんだよ……」
 「そんなことはない!学校を出る時間はいつも守ってるぞ。」
 「「「あたりまえ!!」」」
 「お〜〜い、お前ら、俺が誰だか分かるか。」
 「最近白髪の増えた髪先生じゃないですか。」
 「……折原……廊下でたってろ。他は座れ点呼とるぞ。」

 そして今日も過ぎていく………

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後書き

 自分で書いた小説を自分でパロディにしている…… (^^;;
しかも本編の方が途中なのでこれも途中…
良いんでしょうか(−−;;

感想
天ノ月紘姫さん
  やはり常識を打ち破る激甘ワッフルには副作用があるんですね(笑)
 しかも最後はほぼ自爆ですか?七瀬は
いけだものさん
  これが本当にあったら怖いですね。何か自分だけ周りの人と違うみた
 いに(--;;
  今後の展開が気になります
しーどりーふさん
  しんみりさせられるような良い詩ですね。自分もこんな詩を是非書い
 たみたい!自分が書くととことん暗い詩になることが多いので(笑)
  しかし前奏15秒とはどんな曲なんでしょう?
OZさん
  みずかとみさおとのかけひきがすごく心に残りました。やはり愛の力
 は何よりも強いんでしょうね

@感想を下さった方々へ
  前回の詩はかなり不出来でしたが、感想を多々頂けて感謝しています
 2次作品は結構昔は書いていたのですが、最近は遠ざかっていました
  (HP作り±αに忙しかったので……)
  今後ともよろしく
  それでは………

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