GTO・レッスン4 投稿者: まてつや
「なあ……、なんでおまえまでついてくるんだ?」
「……だって、浩平一人だと何をやらかすかわかんなくて、心配だもん」
浩平は軽く嘆息し、相変わらずな幼なじみを見やる。
「……ただの『家庭訪問』だって言ってるだろ……」
「はぁ……、この時期に、抜き打ちで家庭訪問をするなんて、浩平くらいなものだよ……」
「抜き打ちじゃ、なきゃいいんだろ? 椎名の家の近くの電話ボックスからちゃんと『今から行きます』っていうさ……」
「なんだよそれ……」
瑞佳はあきらめのため息を吐いた。




浩平が電話ボックスに入って、数秒後、浩平はそこから出てきた。
「どうしたんだよ、浩平?」
「テレカが使えないんだよ、あの電話……小銭持ってないか?」
「はぁ……、いいよ。わたしの携帯電話貸してあげるから……」
「サンキューな、長森」
瑞佳がから借りた浩平は、携帯のボタンを押して……いなかった。
そのまま固まっている浩平に、瑞佳はイヤな予感を感じながら聞く。
「ねえ……浩平……」
「きっと、長森の貸してくれた携帯が壊れてるんだな……あはは」
乾いた浩平の笑い。
「椎名さんちの電話番号知らないんでしょ?」
「なんていうことだ! ちゃんと調べておけよ、長森!!」
「こ・う・へ・い・が、わ・る・い・ん・だ・よ」
結局は、連絡もいれないまま、椎名家を訪問することになってしまった。




ピ〜ンポ〜ン♪

…………………………
……………………………………………………
………………………………………………………………………………

「返事がないな……」
「留守なんだよきっと、出直そうよ」
瑞佳は内心、ホッとしていた。
連絡をいれて、承諾を得てから、後日改めて来たほうがいいと思っていたからだ。

……だが……

彼をなめてはいけない、彼はグレートティーチャー折原なのだから。

「よし、強行突破しよう」

…………………………
……………………………………………………
………………………………………………………………………………

「ななななななな、何を言ってるるるるるん、だよだよだよ、ここここ浩平ぃぃぃ」
瑞佳のあわてふためくのをよそに、浩平は平然とつぶやく。
「強行突破」
「なななな、何を冷静に言ってるんだよだよだよ〜〜!」
瑞佳が浩平の首をがくがくと揺らす。

「……苦し……い……」

浩平の顔がどんどん青くなってゆくのに瑞佳は気づいていなかった……




ガチャ……
二人が何やら漫才もどきをやっている間に、玄関のドアが開かれた。

そのすきまから現れたのは、どうみても中学生以下と思われる幼い顔の女の子のものだった。
不思議そうに……だが、警戒心もない表情でこちらを見ていた。

「なんだ、いるじゃないか。せっかく用意した、強制突破用、住井ダイナマイトが役にたたなかったな」
「役に立っちゃ困るんだもん!」
「ほえ?」
少女はなんの真意もない無邪気な疑問の顔を見せた……
「えっ……と、椎名繭……ちゃんだよね? お父さんかお母さんいないかな?」
長森が優しく、少女に問い掛ける。

「みゅ……いないの」

「だってさ、浩平。出直してまた今度にし……」
「親なんかいなくたっていいんだよ、俺は椎名繭本人に逢いに来たんだからな」

「みゅ〜、いないの……もういないの……」

えぐっ……えぐっ……えぐっ……

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん…………」





あれから、なんとか繭が泣き止むのを待って、話をすることになった。

『昔の俺と同じだな……、ずっと続くと思っていた最愛の命がなくなってしまって、
 もうなにも、する気がないんだ。
 このまま一生を泣いてすごすんだろうと思っていたあの日の俺と……
 あのとき俺の力になってくれたのは長森だったよな……
 今度は、俺が……誰かを助ける番なんだ……』

「ねえ、繭ちゃん。死んだみゅ〜ちゃんは繭ちゃんが
 こんな風に落ちこんで生活していくのを望んでいるのかな? 
 そうじゃないと、わたしは思うんだよ」

「みゅ〜は、みゅ〜、死んでないもん! まだ、生きてるもん!」

「椎名……、みゅ〜はもう死んだんだ」
そう、それがまぎれもない事実、変えることのできない、絶対的な事実。

「えぐ……ぅ……みゅ〜、みゅ〜〜〜……」

「椎名。明日から学校に来い! 俺が担任になったからには、おまえを悲しませない。
 日本一……いや、世界一おもしろいクラスにしてやる……待ってるからな!」




次の日の出席。

「今日はなんだか、人数が多いな……」

いつものように、名前を読み上げていく。

「よし。次、佐藤」「はい、今朝は目玉焼きでした〜」
今日は、ノリの良い生徒は『はい』以外の返事がもらえて、浩平は少なからず喜んでいた。
「里村」………「……はい」

そして……次は……問題の……

「椎名」
…………………………
……………………………………………………
ガラガラガラ〜〜
「みゅ〜〜〜〜〜♪」
笑顔で教室のドアを開けて入ってきたのは……椎名繭だった。
「遅刻?」
「今日だけは負けてやるから、席につけよ」
繭は浩平の横を通りすぎながら、浩平以外に聞こえない声でつぶやいた。
「とりあえず、信じてみる。世界一おもしろいクラス」


(続く)

☆ちょろっとあとがき☆
うわ〜〜〜、3から間が空きすぎた〜〜(汗)
ホントは今週、修羅場なんで書くのはよそうと思ってたんだけど
3週間以上空けるわけにもいかず書きました。
今週テスト6コ、やばい〜〜

ちょこっと感想
☆いいんちょさん
スゴイッス。投稿ペースもさることながら
中崎君のあの話、読みやすくてぐいぐい惹き込まれちゃいました♪
次は、繭の伏線どおり……制服オークション!?