両親にも内緒で出てきた、2人だけの初めての旅行。
すごく急で驚いたけど、誘ってくれたときはすごく嬉しかった。
『結婚しよう』
それは、浩平のほうが一大決心をして言ってくれた言葉なのに……
心の奥でずっと待っていたはずの言葉だったのに……
何を迷っていたんだろう?
答えは……本当はずっと前から決まっていたはずなのに……
『あなたのとなりにずっと寄り添っていたい』
どうして、肝心なときに用意しておいた答えが口に出せないんだろう?
そんな想いを抱いたまま、2日目の朝を迎えた。
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それぞれの想いが……口に出せなくて……
ゆっくり流れる雲の下で、わたしたちはただ空を眺めていた。
浩平のくもりのないまっすぐなキモチを受け止めたい……
背中まであつく震えるほどのトキメキを感じているのに……
言葉ではうまく言えない心配が、わたしの中で止まらなくて……
ためらいがまだ、心の奥で揺れていて……
踏めこめない……あと1歩が……
言葉にならない想いは、からまわりするメリーゴーランド……
そして、また……太陽が沈んでゆく……
「いっしょに……散歩しよう」
2人の沈黙をやぶったのは浩平のほうだった。
「見せたいものが……あるんだ」
浩平が案内してくれたところは、海の見える橋の上だった。
ひゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……どおおん!
大きな音とともに花火があがる。
ひゅ〜〜〜〜〜……どぉん!
ぱん!ぱぁん!どん!どん!どん!
「わぁぁ………」
「……すごいだろ、瑞佳……」
浩平が見せたいもの、ってこれのことなんだ……
写真なんかじゃ……キレイには感じられない……
心の中だけにしか刻めない美しさがあった。
花火が夜空に次々とひろがってゆく……
「この花火みたいに、フレームにいれないでおまえのこと、見ていきたいんだ」
そのとき……わたしの中にあった冷たい心の壁が音を立てて溶けていった……
「もう1度……言うな……」
浩平は小さな箱を出して、わたしに渡す。
「旅行のためだけに、3年もバイトしてたわけじゃないんだぜ」
浩平のくれた箱の中には……、小さなゆびわが……
「まぁ、安物だけど……とりあえずな。うけとってくれ」
涙がこぼれそうになった。
「ちょっと、待ってて浩平。すぐ、戻るから……」
わたしは『あるもの』を買って、急いで浩平のもとに戻る。
「シャボン玉?」
「うん。いっしょにやろうよ」
わたしたちは、たがいにシャボン玉を風に放った。
音をたてて、はじけるまで……不思議な魅力に目が離せない……
「どこまでも風に舞うシャボン玉を、壊さずにそっと見守るように、浩平のこと想っていきたいな」
これが、わたしの偽りのないキモチ。
わたしが花火で、あなたはシャボン玉。
「結婚しよう、浩平」
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「へええええ、お母さんにも青春時代があったのねぇ……。ところでそのあとはどうなったの?やっぱり、若き情熱がはじけてそのまま、2人は……」
「もお。その辺は想像にお任せするわ。好きな人ができれば、きっとわかるから……」
「ただいま〜。今、帰ったぞ〜」
「あ、お父さんが帰ってきた……」
「まずい、掃除そっちのけで、ひたってた〜」
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その夜、家族3人で、季節はずれなのに、花火とシャボン玉を出しました。
アルバムの余白には……フレームにおさまりきらない2人の想いが……いつまでも存在します……
(おわり)
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あとがき
あえて、前後編にするまでも、なかったかも……ま、いいか。
感想
WTTSさん>二次創作応援歌(投稿 3rd)
くうう、いいです。
特に切手のない贈り物バージョン!
偽善者Zさん>詩子の番外編
くううう、どっちがお目付け役なのさぁ(笑)
いちごうさん>戦う乙女たち
ええ〜〜〜〜、これで完結なんですか〜〜?
もっと、行きつくとこ(どこだよ?)まで書いて欲しかったなぁ。
かっぺえさん>おねくえすと
うあ…、非常に困った生徒を浩平がなんとかするネタはわたしも考えていたのに
GTO(グレートティーチャ―オリハラ)って言うのを考えてたんだけど…
参考にさせてもらおうかな
え〜、以上です。
あんまし書けなくてすみません。……では……