心の中の小さな花 投稿者: まてつや
今日は、折原とデートの日。
前の夜から胸がドキドキして、
着ていく服をあれこれ選んでいたら、なかなか寝付けなかった。


ガタンゴトン……、ガタンゴトン……
電車のゆれる音。
窓の外に流れていく景色。
いつも、大学に通っている景色と同じはずなのに
毎日の朝のラッシュがウソのように、すごく心地いい。


時計を見る。
待ち合わせの時間まで、まだ1時間くらいあるな。
この、あなたを待つあたしだけの時間がすごくうれしくて、


彼が人ごみの中からわたしを見つけて、
「待った?」
って、言いながら手で合図して。
「ううん、そんなことないよ」
って、微笑みかけてあげるあの瞬間が大好きだから
わたしは、待ち合わせに早く来て、待っててあげられる。
真の乙女にしかできない技よ。



ウソ……そんなの本当の理由じゃない……。
わたしが、待ち合わせにどうしてもはやく来たいのは……
そんな、あなたのことを想ってのことじゃないの……本当は!

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「今、ドレスを贈った。届きしだい、すぐにあの公園に来てくれ……」
「え……? うそ? 冗談でしょ、折原!?」
ピ〜ンポ〜ン!
「え、あ。まさか本当に来た!?」
「じゃあ、待ってるから……」
「ちょ……、折原!」
プープープー……
それが、あの日。わたしが聞いた最後の言葉。



「はあ……。はあ、はあ……。少し、遅刻しちゃった……」
でも、折原はそこにはいなかった。
「もう、自分ですぐ来い、なんて言っておいて、まだ来てないじゃない」
それは、違ったんだ。
折原はあたしの来る前にここにいたんだ……本当は……

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待つことなんて、本当は全然好きじゃない!
あの日以来、あたしが待っている間、
どれだけつらかったか
どれだけ苦しかったか
あたしのあの1年が……、どんなに過酷で、長かったことか……

ただ、あの日。
あたしがもう少し早く、あの場所に着いていれば……
最後に一目、折原に会うこともできたのに……、間に合わなくて……

あたしが待ち合わせに時間よりはやく来るのは……
そんな想いを2度したくないからっ!
遅れたら……
また折原があたしの前から、あたしの知らない場所で……
知らないうちに……消えてしまいそうで……


『もう、2度消えたりしない』って、言ってくれたのに
あたしは、まだ折原のこと信用できてないんだね。
いつも「愛してる」って言いながら
ただ愛して欲しがってばかりいる、そんな嫌な女の子なんだ……あたし。

そんな自分が、たまらなく嫌なのに、
早く来てないと不安なの……


あたし……きっと、どこかで大切なこと……見失ってるんだね……



「はあ、はあ……やあ、お待たせ」
「お……折原!?どうしたの? 約束時間の30分も前なのに、息切らせて走ってきて……」
「……おまえがいつも早く来る理由……知ってるから……」
「……っ!?」
「ゴメンな……、言葉だけじゃあ、おまえの心は癒せないのはわかってる……」
折原は、真剣な瞳で、あたしの顔を覗き込んできた。
「俺といっしょに、もう1度やりなおしてくれ……」

風が吹いた……
わたしの涙を、風がさらっていった……


あたしの悲しみの闇を、取り除くのは……やっぱり、折原なんだ……

「こんなあたしでいいの? あたし、すっごく嫌な子だよ? あなたのこと愛してるつもりで、本気では愛してはないかもしれないんだよ?」

あああ、こんなにあたしのことを想ってくれる折原のことを……

全てを投げ出すほどまっすぐに、何も求めずに愛せたらいいのにっ!

「おまえと、俺ならできるさ」

いつも、折原は……、あたしのことを考えていてくれる……
あたしは……、そんな折原が……大好きなんだ。

「改めて言わせて……、大好き」

折原と2人で
心の中にかけがえのないモノを育てよう。
そして、それが花開いたとき……
本当に……、あなたとひとつになれる……そう思うの……


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あとがき
え〜、なんだか今回の話は自分でも何が書きたかったのか……
いまいち書ききれなかった気もしますね。

なんか漠然としたモノです。

書くきっかけは、七瀬が消える前の浩平に会えなかったことからです。
長森、茜、澪は消える直前までそばにいるし、
みさき、繭も何かを買いに行っている間に消えたとは言えど
いっしょにいました。
それに比べて七瀬はすごくかわいそうで、後悔してるんじゃないかと
もう少し早く公園に行けばあえていたかも知れないのに……

ただ、それを書こうと思ったんだけど……なんか暴走してしまった。

一応、七瀬救済SS第2弾ということで(笑)

>いちごうさんの作品
ううう、今回のSSは久々に涙腺を刺激されたです。
あと少しで泣きそうだったよ。

感想はこれだけ(涙)
前回の書きこみから1番心引かれたのがいちごうさんの作品だっただけで
みんなのもおもしろかったよ〜。
ただ、感想を全部書いている時間がないだけなんだよ〜