怪盗ミラクルルミ4! 投稿者: まてつや
おまえの方が死ねば良かったんだ……。
おまえは何の価値もない人間なんだ。
おまえの方が……おまえが……、おまえがぁぁ……。




朝……目覚めは最悪だった……。
留美はいつものように晴香が作ってくれた朝食を食べていた。
「ねぇ、ママ」
「ん、なあに?」
「あたしのこと……愛してる……?」
「ええ」
晴香が笑顔でうなづくのを見て、留美は涙をこぼしそうになった。




「おはよう、瑞佳」
「うん、おはよ〜、留美。あのね、昨日さぁ、なつかしい思い出のぬいぐるみが出てきてさぁ……」
うれしそうに話す瑞佳をみて、留美は嬉しくなった。



留美はいつものように浩平の席に目を向けた……、だが、いつもと違って席の前には里村茜が立っていて、何か話しているようだった。
「浩平。好きです。わたしとつきあってください」
確に、里村茜の声だった。
留美は顔面蒼白で硬直し、浩平は茜を見たまま、言葉が出せなかった。



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自分では気づいていた……はずだ、彼への気持ちに……
ずっと認める気はなかったが、普通とは違う感情を抱いているということを……
それが『恋』というカタチだと意識できたのが、たまたま他の女の子が彼に告白した……、それだけのことだ……


心が痛い……。何故、認めなかった?何故、気がつかなかった?
本当はわかっていたはずだ……。

……怖かったのだ……。
自身がなかったのだ……
自分は価値のない人間だから……


全ては……もう、遅い……

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茜の告白に対する浩平の答えが……聞きたいのに……聞きたくなかった……。
でも、離れられない……。
「お……、俺は……、茜の……こと……が……」
限界だった。

しゅん!っとカードが飛んできて浩平の机の上に突き刺さる。
「な?」


『今夜、あなたのハートをいただきに参ります。怪盗ミラクルルミ』


「……っ!?」
またも絶句する浩平。
茜もそのカードをのぞきこむと……、ゆっくりとこっちを見た……
「今夜は……、浩平の家で……泊ります」
まっすぐ、留美の方を見つめる茜の瞳には揺るぎない力が満ちていた。

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彼女は自分に自信がなかった……
だれにも心の中を見せられなかった……

それこそが彼女の『過酷』……

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2階の窓が音もなく……開く。
そこには闇に包まれたシルエットが1つ……。

「ミラクル……ルミ……」

「わたしの話を、……聞いて……くれる?」

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わたしには兄がいた。優しくて、頭も良くて、運動神経も抜群で、クラスでも人気者だった。
わたしにとっても自慢の兄だったわ……。
わたしは兄のことが大好きだった……。

でも、同時につらくもあった。
あまりにできのよい兄を持つと、何かと比べられてね。

『お前も兄のように……』なんて耳にタコができるほど聞いたわ……
それでも……兄さんに対する期待が大きい……ってだけで、まだよかったの……

兄さんが……わたしをかばって交通事故でなくなるまでは……


『おまえの方が死ねば良かったんだ!』

『おまえなんて……、なんの価値もない人間なんだよ!』

『おまえが……おまえなんかをかばったばかりに……あの子は……』


そのとき目覚めたのよ……過酷の『力』……に、
その『力』で両親を殺してしまった……制御……できずに……



それからわたしは親戚中たらいまわしにされて……、最後に晴香さんがわたしを引き取ってくれた……。
わたしの痛みを……わかってくれた……。
本当の母親以上の存在になってくれた……。

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「わたし……、自分に自信がなくて……。
何の価値もない人間なんだ……って思ってた。
でもね、澪や繭や瑞佳みたいに……わたしの盗んだモノで喜んでくれてる姿を見てると
ああ、わたしにもやるべきことがあるんだ……
価値のない人間じゃないんだ……
誰にも必要とされないわけじゃないんだ……って……思えて……
だから……わたし、ずっとこんなことしてた……。
自分を必要として欲しくて……怪盗……やってた……」

ルミ……いや留美は、浩平にゆっくりと歩み寄った。

「結局……弱かったんだ……わたし。こんなことでしか自分を確認できなかったんだ」

「おまえが……価値がある人間かどうかなんて……どうでもいいじゃないか……。
他人がどう思おうと……おまえは……おまえなんだよ……。
生きてる意味とか……価値なんて……なくてもいいんだよ……。
もしも、ダメなら……俺が……おまえの価値になってやる……」

留美の瞳からは真珠のような泪が……こぼれおちる……

「つらかったな……七瀬……」

「……あ……りが……と……う……」

浩平が……留美の顔を見つめ……
留美は……ゆっくり……目を閉じる……

そのとき……


ばんっ!っと部屋の扉を開ける音……。

「何をやっているんですか、こ・う・へ・い……?」
茜だった‥‥。
右手には、ずたボロになった……C子を引きずっていた。

どうやら……、C子をルミと間違えて『力』で倒したらしい……。
そのスキにルミに潜入されたのだった。

留美はハッ!っとして窓から飛び出す……。

「待ちなさい……」

それを追う……茜。

「あんたもたいへんそうねぇ……。どっちを選んでも、血……見そうよ……」
C子のつぶやきを聞きながら……1人、頭を抱える浩平だった……。




エピローグ
痛みを背負っている者は……他人の痛みを……考えてあげられる。
郁未や葉子や晴香や由依のように……

浩平、茜、留美……も、痛みのわかる……彼女の後継者たち……

「これで……いいのですか?」
葉子が郁未に問う……。
「わたしたちが……してあげられるのは……ここまでよ……。あとは彼女たち自身が作ればいい……、彼女たちの未来を……」

(完)


あとがき
「どうも、みなさん。完結までおつきあい、ありがとうございます。ちなみにわたしはあとがき進行役の詩子で〜す」
うん、〜光と闇〜も怪盗ミラクルルミ!も無事(?)に終わって、ホッと一息です。
「なんか、終わり方が強引な気がするけど?」
うむ、でも彼女が怪盗になった理由と過酷を結び付けたかったんだよ。
「しかし、1と2はまだしも、3と4はシリアスっぽいわね」
う〜ん、C子がいなけりゃ、ギャグなしの話になってたでしょうね。
「ウルトラC子……すごいネーミングセンス……」
誉め言葉として、うけとっておきます。
「ところで、次から何を書くのよ……」
いや、考えてないけど……(マジ汗)
「……ってことは、次回から怪盗ウルトラC子!が始まるかも!!」
……それは……ない……
「え〜、そんなわけで。次回の主役はわたしで〜す」
……おい……そんなこと、勝手に……

ごすっ!

「え〜、作者が何者かの攻撃をうけ、昏倒しているので、そろそろおひらきです」

ちゃんちゃん……(って、おい)