夜の闇に音もなく閃く1つの影……
『ムーン・パープルはいたたきました。怪盗ミラクルルミ』
と書かれたカードを発見した警官が大声で叫ぶ。
「追えっ! 追うんだ……。ヤツを逃すなぁ〜〜〜!!」
「ダメです。すでに影も形も……」
「おのれ〜、怪盗ミラクルルミめぇ〜!」
折原警部は、今日も彼女を取り逃がしていた。
「留美〜〜! 朝よ、早くおきなさい」
「わかってるわよ。晴香ママ」
母親の用意した朝食をささと食べ、身支度を整える。
「いってきま〜す」
「車にぶつからないようにね〜」
「ママ……、あたしがいくつになると思ってるのよ……」
「いくつになっても心配なのよ。1人娘のあなたが……」
ずどおおおおおおおぉん!!!
強烈な音とともに、留美の視界は回転し、地面に倒れた。
「うわ、やべ」
と、少年の声がする。留美のクラスメイトの折原浩平だった。
留美はがばっと顔をあげ……
「あんたは車よりたちが悪いんか。この、ど阿呆!」
「うーん。それだけ元気なら大丈夫だな。じゃ……」
「『じゃ……』じゃないでしょ!か弱き乙女に激突しといてそれはないわよ」
「俺、急いでるから」
「待てぇぇええええぇっ!!……」
浩平は無慈悲にもその場を立ち去った……
「だああ、鬼〜。悪魔〜!」
(ったく、なんであんたたち親子は、いっつもあたしのじゃまばかりするのよっ!)
「おはよ〜、瑞佳」
「あ、おはよう。留美。今日はいつもより来るのが遅かったよね。なにかあったの?」
「うう、聞いてよ瑞佳。今朝ねぇ、折原のヤツが……って、きゃああああ!!」
突然、留美が涙目で絶叫した……。
「ま……繭。あんたねぇ……」
「みゅ〜」
クラスメイトの椎名繭が留美のお下げを、ひっぱって遊んでいたのだ。
「髪にサボテンでも仕込んでおけば、大丈夫だぞ」
と、浩平がからかってくる。
「嫌すぎるわ。そんなのっ!」
「ほえ?」
彼女はそんな普通の学生生活をこなす、ふつうの乙女を夢見る女の子だった。
そう……昼の間は……
女の子2人しかいない、学校の裏庭……
「留美、お仕事だよ」
「わかってるわ。今回の依頼はなに?」
『今夜、ボロボロのスケッチブックいただきにまいります。怪盗ミラクルルミより』
「なんだとぉぉぉーーー!」
いつも聞く折原警部の怒号に、部下たちはすでに慣れていた。
そんなわけで折原警部はボロボロのスケッチブックのある広瀬邸にはりこむこんでいた。
「ふふふ、これだけの警備で正面突破は不可能だぞ」
そう宣言する刑事が成功したためしはない……。
「それはどうかな?親父」
と、折原警部の1人息子の浩平。
「なんだと」
「ヤツをつかまえるには、もっと特別な手が必要だ」
「仕事のじゃまだ、でていけ!」
「はいはい、でていきますよ」
折原少年はそこでにやりと笑い、小声でつぶやく
「俺が彼女を捕まえてみせる」
浩平はボロボロのスケッチブックのある部屋にこっそり隠れていた。
(親父のヤツ、部屋の前だけ固めたってダメなんだよ)
しばらく身を隠していると……突然、扉が開く。
1人の警官だった。
「?」
(俺が隠れているのに気付いたのか?親父)
しかし、その警官からもれた言葉は、意外なものだった。
「あはは。あのバカ警部。あたしの変装にまるで気がつかないなんて……」
……っ、と息をのむ……
「さて、おめあてのモノいただいていきましょうか?」
ルミがボロボロのスケッチブックを手に取った瞬間……
浩平はタックルをしかけた……
(このスキを待ってたんだ!)
「……!!」
ルミが声にならない悲鳴をあげる……
「このっ!つかまえたぞ……かんねんしやがれ……」
床でじたばたとからみあう2人。
「くっ……」
「さあ、正体をみせやがれ……」
(な……なんで折原(こいつ)がここにいるのよ!?)
ルミは胸中でひたすら悲鳴をあげる……
(だぁぁぁ、どさくさにまぎれて変なとこさわるんじゃないっ)
(こうなったらあの『力』を使うしか……)
ルミは両手を浩平の腹部に当てて、息を吐く……
「ハッ!」
どんっ!!
息吹とともに見えない力が生まれ……
その衝撃が浩平をはじき飛ばす
「ぐあ……」
浩平は痛みをこらえてなんとか立ち上がる……
「くっ、今のは一体!?」
「ハア……ハア……」
『力』を使ったルミはひどく疲れたように肩で息をしていた。
「に……、逃してたまるか。俺の用意した最終兵器を食らえ……」
(さ……最終兵器……!?)
「みゅ〜〜〜!」
「いけ、繭!あいつのおさげを引っ張りまくっていいぞ!」
(げっ、繭。なんでこんなところにぃぃぃ)
浩平は朝見た出来事を活かすつもりらしい。
(ま、まずい。『力』はもう使えないし……。本当に髪に何か仕込んでおけば良かったかも……)
「みゅ〜」
繭が元気良く飛びつこうとしてくる……
(そうか、アレを使えば……)
ルミはとっさに判断してアレを投げる。
「みゅっ? みゅ〜みゅ〜〜!!」
繭は方向を変え、嬉しそうにそれに飛びつく。
「あ……繭……」
浩平が唖然としている。
「みゅ、てりやきば〜が〜」
心底うれしそうに、繭はそれをほおばりはじめた。
其のスキにルミは窓を開け
「フフフ、今夜はなかんか楽しめたわよ」
「ま……待て。ここは4階だぞ!?」
バッ!
浩平の言葉を無視してルミは宙に身を踊らせる……
「なっ……」
(住井博士につくってもらった、特製ハンググライダーよ)
夜空に消える彼女の姿を浩平はただひたすら眺めていた。
(繭はひたすらてりやきば〜が〜を食べていた)
その夜、上月家の一人娘、澪の部屋で……
『思い出のスケッチブックが帰ってきたの』
次の日の朝。
「ああ、くそ。逃げられた……」
不機嫌そうに浩平はだらだらと愚痴をならべていた。
それを彼のとなりで聞いていたのは
同じくクラスメイトの里村茜だった。
「……マジカルルミのことですか……?」
「『ミラクル』だっ!」
(それにしても、あのときの不思議な力はなんだったんだろう)
そのことを茜に話すと、
「……わたしの親族に不思議な力をつかえる人がいるんですけど。訪ねてみます?」
「あ〜ら、おはよう。浩平」
と背後から声。
「ああ、七瀬か……」
七瀬留美は普通の学園生活を送っているただの女の子……のはずですが……
つづく(のか?)
…………………………………………………………………………………………………
あとがき
なんだか、目茶苦茶です(笑)
もっと、ギャグをふんだんにいれたかったけど
作者の力量不足でこんなかたちになりました。
さて、次回はいよいよ〜光と闇〜2ですが
以前に似たような話を書いていた人がいるようですね
なんという作品でだれが書いたんだろう、りーふ図書館にあるかな〜?
しってる人、誰かおしえて〜
えー、それでは
いまいち感想になってない感想
いけだものさん サンマの塩焼き
茜のためなら火の中、水の中……ですね
雫さん むすめ
繭がかわっていくのと同じでおかあさんもかわってゆくのです。
偽善者Z さん 吾が輩はハムスターである5
「そんなことあるわけないもんっ」って
せめて語尾を「よ」にしないとホントに嫉妬してるみたいですぜ、瑞佳さん」
浩平犯科帳 第一部 第七話
茜が味のあるキャラに仕上がっている、いいです(わたしは、茜を書くのがヘタだ)
藤井勇気さん 特別企画 氷上シュン無謀SS
ぐは、ついにそっちにはしるかシュン!
いんたぁみっしょん 天ノ月紘姫 さん
飯に練乳は、さすがに気持ち悪いんですが……
わっふるな午後がんばってください。毎回たのしんで読んでます。
KOHさん 温泉に行こう−6−
挑戦的な注意書き……って{笑)
T.Kameさん The Third Child
茜に・・・
(あなた誰ですか?)
・・・と言われる前に・・・
だけど・・・
茜「あなた誰ですか?」
……って、大笑いしてしまいました(マジ)
kou さん if
2人で開く永遠への扉……という感じでしょうか
いままでにない展開が瑞佳と浩平を襲う。
だよだよ星人さん 歌う詩子さん
なんだか、ほのぼのしてていーです。
3人がこの先、こんな風にすごしていくと思うと微笑ましいです。
でも、クリスマスでビールのんでも茜は全然平気だったような……
11番目の猫 さん エピローグ 「届きましたか」
ああ、最近わたしは繭に弱いのぉぉぉぉ。
あってるもぅん…
が、一番キました……
では、できるだけ早いうちに次回作をかけることを祈りつつ……