胡桃 投稿者: 睦月周

「わたし、全然さびしくなんかないよ」

 そう言って先輩は笑う。
 光を失った碧緑の瞳を優しげに細めて。

「目が見えなくてもね──」

 屋上。
 冬の冷たい風。
 ゆっくりと僕らの頬を撫でる、静かな風。

「すごく、浩平くんのこと分かるよ。息づかいで、足音で、手のぬくもりで」

 先輩の白い手が首筋に触れる。
 
「やっぱり、浩平くんは、あったかい」

 くすっと笑う。
 それにね、と先輩は囁く。

「すごく楽しいの。浩平くんのこと考えるのが──。浩平くんは今どんなふうに
笑ってくれてるんだろう、二人で見てるこの夕焼けは、どんな色をしてるんだろう」

 茜色の夕焼けが二人を包んでゆく。
 ゆっくり──ゆっくりと。

「こんなの、わたしにしかわからない幸せだよね」

 そうか。
 それが、先輩の世界なんだ。
 微笑むその唇をキスでふさぐ。
 優しく手を折れそうな背に回す。
 互いの体温を確認しあうように──。

「ずっと一緒にいようね」

 そうだ。
 たとえ世界がどうなったって、関係ない。
 先輩と、先輩を想う心が確かなのなら。
 胡桃でもいいんだ。

 それが、ハムレットの胡桃なら──。

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 どもです、周です。
 性懲りもなくまた構成とか無視して即興でやってしまいました。
 そして結局ベタベタに・・・(泣)

※ハムレットの胡桃
ハムレットの台詞に、「このおれはたとえクルミの殻に閉じこめられようと、
無限の宇宙を支配する王者と思いこめる男だ」 (小田島雄志訳)
というのがあって、そこからのインスピレーションです。
 つまり、想いのつよさを信じることができれば、二人をとりまく世界が
どんな世界であろうと関係ない、ということですね。
 シチュエーションはED後ということになるのかな。

 皆様の作品楽しく読ませてもらっております。
 今度は感想などをそえて投稿をば。