【37】 奇跡の少年・・・第0章・みずか |
「・・・やあ」 色のない・・・明るくて暗い世界に、その少年は現れた。 彼女と・・・彼しかいないはずの世界に、その少年は突然現れたのだ。 「・・・誰?」 首を傾げて、少女・・・永遠のみずかは問いかける。見覚えのない少年だった。無論、 彼女が誰かを見て、覚えているなどと言うことはあり得ないが、彼女を作った少年の記憶 と照らし合わせても、その少年の記憶はなかった。 そもそも、この少年は一度見たら絶対に忘れようのない外見を持っていた。雪のように 白い肌と、透き通るような白髪。細い眉と瞳、小さい唇・・・声や雰囲気で辛うじて少年と 分かるが、外見だけ見たらほとんど少女にしか見えなかった。 「ここととても似た世界から、君達を・・・ただ見るためだけに来た者だよ」 半分悲しげに、半分嬉しげに、白髪の少年はそうつぶやく。 「未来の約束された世界は残酷なのか優しいのか・・・なら、滅亡の裂けられぬ世界は 残酷なのか、それとも優しいのか・・・僕は「終わってしまった世界」の後の世界で、 生きようと足掻く人達の世界から来たんだ。終わってしまった世界は優しいのか残酷なのか、 そもそも、僕はすでに終わっているのか否なのか・・・その答えを探すためにね」 可憐な美少女の姿を持った白髪の美少年は、この世界のみずかに微笑みかけた。 「・・・ここは、もう終わってしまった世界・・・こうへいと私だけの世界だよ」 「そう、ここは永遠かも知れない・・・けど、ここと繋がっているいくつもの世界は、 まだ永遠と別離していない・・・」 そう、みずかにも分かっていた。自分の好きな人、自分を造り出した人が、この世界から 向こうの世界へ帰ろうとしていることを、そして、その人を・・・みずかの好きな人を、 みずか以上に想っている人達が、向こうの世界にはまだいることを。 「・・・僕は、僕の世界では何の制限も受けず、いつでもどこでも、いくつでも、望まれた 「奇跡」を起こすことができるんだ」 不意に少年が口を開く。そして、自分より遙かに小さなみずかにまた微笑んで、 「彼がこの世界にとどまることで、本当に救われる人は誰もいない。彼自身も、彼を待つ人 達も・・・そして君自身も、彼が彼を待つ人の元へ帰ったときに初めて、救われることができ るはずじゃないかい?」 「・・・分からない」 「そう・・・なら、君の分も僕が「見て」来てあげるよ。この世界から繋がったたくさんの 「もしも(if)」の世界で・・・僕と、君の答えを出すために」 「・・・あなたの、名前は」 「この世界では「奇跡」と呼ばれている者・・・本名はF/S(フェアリー・スノゥ)って いうんだ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あとがき すいません、中途半端な話で。でもまだプロローグなんで、続きに期待してください。 (いつになるかは分かりませんが) 変身動物ぽん太さんに励まされて、書いてみました初めてのSS。相変わらずの筆の遅さに 自己嫌悪モード大爆進でしたが、気長にがんばっていこうと想います。 さて、このシリーズ(もちろん続けます)に登場する白髪の美少年(姿は美少女)F/S は、実は俺のオリジナル小説「昼色の夜」(未完、未発表)に登場するキャラクターなんです。 どうしても、ONEのキャラクターだけでは話が作れなかったので。だからって自分のキャラ を主人公にしちゃうのもどうかと思いますが。 というわけで、この「奇跡」そのものことF/S君(人間名は浅野雪彦と申します)は これから「向こう側の世界」に旅立ち、浩平を待ち続けるメインヒロイン達と出会っていきます。 彼と、永遠の世界で待つみずかの「答え」を探すために。 設定ですが、彼は「奇跡」そのものですから、自分で言ったとおりいつでもどこでもいくら でも、好きなように「奇跡」を起こすことができます。ちなみに原作で最初に起こした奇跡は 真夏に雪を降らせることでした。 彼はこの世界でも「奇跡」を起こすことができますが、それをすることが本当にヒロイン達 を救うことになるのかどうか、彼は必死で悩みます。 彼の行動・・・そして「答え」は、続きを期待してください。実はまだ結末未定だったり しますから。 では、近い内に続きを発表できることを信じて。 以上。 |