澪と遊園地で(前編) 投稿者: 楓鳥 瑠留
『わぁ〜すごいの〜』
スケブを胸に抱え、ぐるっと辺りを見る澪。顔には驚きと喜びが満ち溢れている。
ここは首都圏にある、東京ワンダーランド(以下TWL)。
新聞の勧誘から半ば強引に奪うように、(因みに契約はしてない)優待チケットを手に入れた浩平が澪を誘って来たのだ。
季節は初夏手前、暑くも無く寒くも無くまさに遊園地日和と言えよう。
二人は浩平はジーパンにシャツと言うラフな格好、澪はキュロットスカートと言う動きやすい服装だった。
実は前の日に浩平が動きやすい服にしろと言ったのだった。
まだ入り口にも入ってないのに、早くも喜んでいる澪を見て、浩平は素直に、連れてきて良かったなと思う、しかし・・・。
「ほんと、久々に来たけど凄いよねー相変わらず、ねぇ茜?」
「・・・凄いです」
詩子と茜だった。
「なぁ、なんでお前らがここにいるんだ?」
「あ、折原君あんなこと言ってるよ、酷いよねぇ」
「・・・わたしがいると迷惑ですか?」
「あ、いや、そう言う意味じゃなくてな、なんで誘った記憶が無いのに居るのかって思ったんだが・・・」
しどろもどろの浩平。
詩子はにっこり笑って答えた。
「こないだ、茜を迎えに学校に行ったら折原君達が見えたんだよ。
そしたら澪ちゃんとTWDに行くって話が聞こえたんだ。
それで、茜を誘って来たんだよ」
「そういうときは俺に一緒に行きたいって聞くものじゃないか?」
「やだなぁ、折原君はわたしの趣味じゃないよ、それに澪ちゃんって子がいるのに浮気はだめだよ」
「んな意味じゃないっ!大体おまえはいつも・・・」
くいくい
「ん、なんだ澪?」
『あのね、みんなで楽しむの』
「うんうん、そうだよね澪ちゃん」
「はぁ〜、まぁ澪がそれで良いのならいっか、ところでチケットは二枚しかないぞ」
「あ、それなら大丈夫だよ、ねぇ〜茜」
「・・・はい」
ガサゴソとポシェットを探る茜、やがて二枚のチケットを取り出した。
「おっ、俺のと同じチケットだな、どうしたんだこれ?」
「・・・行き付けの鯛焼きやで頂きました」
「な、なるほど・・・、おっ、そろそろ入園時間だな」
『わくわく』

程なく10時になり、開園となった。因みに今日の他のお客は現段階で100人と言ったところか。
いつもより遥かに少ないと言えよう。
「じゃあ行くぞ、先ずはどれに乗ろうか?」
『うんと〜えっと〜、はう〜、いっぱいあって迷うの』
「ははっ、それもそうか、澪をジェットコースタは好きか?」
「わたし大好きだよ」
「柚木には聞いてないつーの」
『あのね、乗ったことないからわからないの』
「ふーん、そっか、どうだ行ってみるか?」
『うん』
「じゃ、れっつごー」
「だから柚木がしきるなっ!」

『はう〜、真っ暗なの』
怯えた感じの澪。手はしっかり浩平の服のすそを握っている。ここはTWLでも人気の高いスプラッシングマウンテン。乗り場が室内にある為、演出のせいか灯りが少ないのだ。
「茜、ちゃんといる〜?」
「・・・後ろに居ます」
「あ、居るわね、あんまり喋らないと忘れられちゃうわよ」
酷い言いぐさである。
そうこうしてる間に浩平たちの番になった。丸太の形を模した8人乗りの船に乗りこむ4人。
浩平、澪が一番前、茜、詩子が後ろである。
ビー!
出発の音が鳴り、ガタッガタとやや乱暴な音を立て水のコースを走る。今のところゆっくりと動いている。
「楽しみだなぁ澪」
「〜〜〜〜」
首から画板のようにスケブをぶら下げ(浩平がそうさせた)安全バーの隙間から起用に何かを書いた、しかし読めない。
「・・・えっと?」
「・・・『楽しみなの』だそうです」
後ろから見えたのだろう、茜が替わりに答える。
「ははっそうか、じゃあそろそろスケブ仕舞って手すりに掴まっておけよ」
コクコク。
ガタッガクン、ゴトゴト・・・
船は登り坂に差し掛かる。徐々に頂上が見え、やがて・・・。
ガタッ、ヒュー・・・ザザーン!バッシャーン!
一気に上から落ち、水飛沫を上げ着水する。そして船はまたなだらかなコースになった。まだ室内である。
ちょっと心配になって浩平が聞く。
「・・・」
「・・・澪?」
見ると澪は放心状態だった。
「だ、大丈夫か?」
はっと我にかえり、うんうんと激しく首を上下する澪。
ほっとする浩平。

「さぁ最後の大落下だぞ」
船は再び坂に差し掛かろうとしていた、今度は先ほどの倍以上ある。
「楽しみだよねぇ茜」
「・・・・は、はい」
詩子は乗りなれているのか余裕の表情だ。それとは対象に茜、澪はかなり緊張して手すりに掴まっている。先ほどのが利いたのだろう。
明かりが見えてきた。頂上から外の滝壷に向かって落ちるようである。そのときが来た。
ガクン、ズシャーーーーーッ、バッシャーーーーーン!
さっきとは比べ物にならない距離と、激しい水飛沫があがる。これで終わりのようでゆっくりと乗り場に戻る。
「ふぃ〜、凄かったなぁ・・・はっ澪大丈夫かっ?」
見ると澪は・・・びしょ濡れだった。どうやら運が悪かったらしく、返り水を思いっきり浴びたようである。
はうぅ〜。
完全に参っていた。

詩子と茜にタオルで拭いてもらい、ベンチで待っている浩平のところに戻ってきた。
『あのねあのねあのね』
「いいから落ちつけ」
苦笑する浩平。
『あのね、さいしょはびっくりしたの、からだがうくかとおもったの、でもすごかったの』
興奮して言いたいことを一気に書きたいのか、全部平仮名である。
「そうか〜面白かったろ?」
うんうん。
激しく首を振る。
「さて、じゃあ次は何に乗ろうか?」
『あのね、もいっかいのりたいの』
「おっ?よっぽど気に入ったんだな、柚木達はどうする?」
「・・・わたしはもう少し休みたいです」
「そうね、わたし達は休んでいるから、折原君達行ってきたら?」
「そっか、んじゃ行ってくるか、わっ澪引っ張るなって」

結局5回も乗らされた浩平であった。

続く

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突発で書いてみました。実は昨日TDLに十数年振りに行ったんですよ(笑)
実体験に基づいて書いてますので、TDLの参考になればと・・・(笑)
続きは明日になります。

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