これもまた日常…になる? 投稿者: 本間ゆーじ
静かに授業の終わりが近づいてきた。
浩平「(さて…今日も屋上に行くか…)」
誰にともなく心の中で呟く俺。

しかし、その前に俺には振り切らねばならない強敵がいる。

長森だ。

あいつは最近どんどん足が速くなってきているのだ。
今では俺と互角…いやそれ以上かもしれない。
「いつの間にそんなに早くなったんだっ!」と俺が尋ねると
長森は、「浩平に逃げられないようにするためだよ」と言っていたが…多分マジだろう。
しかし俺は今日だけはどうしても振り切らねばならなかった。
みさき先輩と約束をしていたからだ。
遅れるわけにはいかない。
俺は教科書を机の中にしまい、戦闘態勢をとった。

キーンコーンカーンコーン

授業終了のチャイムが鳴り、髭が背を向けた瞬間に俺は廊下へと飛び出した。
浩平「(最高のタイミングだぜ)」
俺は心の中でそう思った。

しかし、俺のささやかな得意を打ち砕くかのように廊下には1人の女が立っていた。

言わずもがなのおせっかい長森だ。

手にはほうきとちりとりを持っている。おそらくあの武器で俺を攻撃するつもりなのだろう。

長森「浩平。掃除当番さぼっちゃだめだよ〜」
自慢げな顔をして長森が言う。

浩平「どけ、長森!!俺は今日は病院に行かなければならないんだ!!!」

長森「うそばっか〜。浩平どこも悪そうな所無いじゃない」

浩平「いや。こうしている間にも体が痛くてしょうがないんだ」

長森「そう…じゃぁ力づくでもつれていくもん!!!」

そう言いきると同時に長森が懐に飛び込んで突きを放ってくる。

ヒュッ!

浩平「うわっ!」

なんとか避けた俺だが体勢が大きくくずれてしまった。
その隙を狙って、長森が横にちりとりを払う!

ブンッ!

ちっ!避けられねえ!
そう思った俺はすかさず隣を通り抜けようとしていた住井を掴んで押し出した。

住井「折原?一体何を…」


ズバキイッ!


やけに小気味良い音がして住井が吹っ飛ぶ。

ものすごい威力だ。まともにくらっていたら俺がああなっていたことだろう。
助かったぜ、住井。成仏しろよ。
俺は泡を吹きながら失神している住井を見ながらそう心の中で呟いた。

浩平「いいのか?長森?住井を保健室に連れて行かなくても。」

その言葉に長森が真っ赤になって反論する。

長森「ち…違うもん。わたしは悪くないもん!住井君を押し出した浩平が悪いんだもん!」

見苦しい言い訳だ。

浩平「ばかっ!お前があんな物騒な技を繰り出すからだっ!」
長森「うっ…いいもん。任務遂行には多少の犠牲はつきものだもん!」

どうやら開き直ったようだ。悪め。

俺達が1歩も動かず対峙していると、七瀬がやってきた。

七瀬「アンタ達…何してるの…?」

浩平「見てのとうりだ」
俺はそう言うと顎で殺された住井を見るように促した。

長森「まだ死んでないよっ!」
七瀬「こ…この死体は一体」
長森「だからまだ死んでないって!」
でも時間の問題だろう。

そのとき俺の頭に良い考えが浮かんだ。
そして俺はそれを即座に実行する。

浩平「じゃあ、俺が住井を保健室に運んでいく。それでいいだろ」

長森「えっ?…うん。まぁいいけど」
驚いたような長森だったが渋々了解した。

七瀬「はいはい、好きにしなさい。じゃ、あたしは部活の見学に行くから」

浩平「おう。がんばってこいよ。牛乳部兼魚拓部…あれ?すもう部はどうした?」

七瀬「誰がいつそんな部に入ったあっ!!!!!!」
唾を吐いてどすどすと去っていく七瀬。
その後ろ姿を見ながら俺は(ああ、なんてたくましい奴なんだ)と、思わざるを得なかった。

浩平「それじゃな、長森」
俺は住井を背負いながら言った。
長森「うん。じゃあね。浩平」

廊下を歩きながら俺はほくそえんだ。

時間はまだ10分ぐらいしか経っていない。今から屋上に行くか。

そう考えた俺はまだ起きない住井(まあ当然だろう)を階段から下に転がした。
保健室など最初から行くつもりは無かった。
あくまであの場から抜け出すための口実だ。
住井は…まぁ、死にはしないだろう。多分。

すばやく誰も居ないことを確認して廊下を一気に駆け上がる。
『立入禁止』と書いた看板の前にきた。

そして鉄製の扉を開けようとする…と、声。

「浩〜平〜。やっぱり保健室に行かなかったんだね〜〜」

この声には聞き覚えがある。さっきまで聞いていた声だ。
しかし、さっきまでとは違い、声に殺意が込められていた。

浩平「な…長森。どうしてここにいると分かった」

俺は冷や汗を流しながら振り向く。

長森「浩平の後を付けていたら、いきなり廊下の下に住井君が転がっていたんだよ…びっくりしたよ」

浩平「じゃあ俺の作戦は成功じゃないか」

長森「わたしが聞きたいのはなんで保健室にも行かないでこんな所にいるのかってことだよっ!!!」

怒っている。手には、ほうきは持ってはいないが鞄を持っている。さっきより120%ぐらい危険だ。

俺は素直に折れることにした。みさき先輩には悪いがここであっちの世界に行くわけにはいかない。

浩平「分かった。俺が悪かったんだ。ここには住井を背負ってたら気持ち悪くなったんで、来ただけだ」

長森「そうなの…じゃあ、今から一緒に帰ろう」
俺の答えに少しだけ機嫌を良くしたのだろう。にっこりと長森が言う。

俺が「ああ…」と答えようとした瞬間。

「浩平君…なの?」

扉の向こうから声がした。

まずい…まずすぎる…。
俺は凍りついた。
長森を見ると…同じく凍り付いていた。

しばらくの硬直状態の後長森が言った。

長森「浩平…ちょ〜っといいかな」

浩平「・・・」

俺は何も答えなかった。いや、答えられなかった。
あっちの世界の到来を感じつつ俺は長森についていくのだった。


みさき「あれ?浩平君?いないの?」

彼女が扉を開けたとき、看板の前に、もう人は居なかった。
ただ何処からか聞こえてくる叫び声が耳にうるさかった。

ーーーーー後書きーーーーー
どうも〜。始めて投稿する、本間と言います。
このSSはなんとな〜く暇なときに書いたものなんで、
感想なんかいただけると今後の励みになります〜。
あと、感想のお返事は割と早く返しますから…よろしくです。 

http://www.geocities.co.jp/Playtown/9618/