太陽は黄金の林檎  投稿者:はにゃまろ


灰色・・・

空は灰色だった。

今日もぼくの空は灰色だった。

そんな世界の中で、

ぼくはまた、空を見ていた。

何度見上げても、そこには灰色の黒ずんだ空しかない。

わかっている。

ぼくにはわかっている。

そこにはもう太陽は昇らないって、

もう二度と陽の光を見ることはないって、

わかっているんだ・・・

ぼくの太陽は消えてしまった。

しっかり握り締めていたはずなのに、

ぼくの手のひらから永遠に零れ落ちてしまった。

でも、ぼくはそれでも空を仰ぐ。

あの空の向こうに、もうひとつの世界があるから。

朝日の昇る世界が・・・

陽光に照らされた世界が・・・

夕陽の沈む世界が・・・

太陽が空を巡る世界が・・・

そこにはある。

すぐそばに、ほんの少し手を伸ばせば届く距離に、

あの輝いていた世界があるんだ。

だから、ぼくは空を見る。

今日も灰色の空の下で、ぼくは世界の思い出に浸る。

空の向こうを思って涙する。

そこはもう、永遠に訪れることのない世界・・・

ぼくは、帰れないんだ。

だって、ぼくはあの日、盟約を交わしてしまったんだから・・・






あの頃のぼくは泣きながら生きていた。

悲しいことがあったから、

泣きたいほど悲しいことがあって、

それ以外にどうしたらいいのかわからなくって、

ずっと、泣いてた。

だから彼女と出会ったあの日も、やっぱりぼくは泣いていたんだ。

「泣いてるの・・・?」

その日は、ちょうど今のように空が灰色に濁っている日だった。

不思議そうにそう尋ねた彼女に、ぼくは嗚咽を漏らすことしかできなかった。

その時のぼくは空っぽの存在だったんだ。

泣く事しか知らない人形のようなものだった。

ぼくは彼女の方を見る事さえしなかった。

でも、彼女はそこに居続けた。

いったい、彼女が何を待っているのか、ぼくにはわからなかった。

だから、

「・・・きみは何を待っているの」

ぼくは初めて、彼女に話しかけた。

「キミが泣きやむのを、待ってるんだよ」

返ってきたのはそんな答えだった。

知らないからだ。

ぼくの事をなんにも知らないからそんな事が言えるんだと、ぼくは思った。

「ぼくは泣きやまないよ。ずっと泣き続けて、生きるんだ」

こんな事を言ったのも、何も知らない彼女が少しだけ憎かったからなのかもしれない。

そんなぼくの言葉に、彼女は少しきょとんとしていた。

「どうして・・・?」

そういって、彼女は不思議そうにぼくの顔を覗きこんだ。

その時の、海に沈む寸前の夕陽のような彼女の瞳を今でもよく覚えている。

ぼくは吸い込まれてしまいそうなその瞳を見ているうちに、なんだか素直な気持ちになっていた。

ぼくは誰かにぼくの悲しみを伝えたかった。

ぼくがこんなに悲しんでいる事を知ってほしかったんだ。

だから、ぼくは彼女に言った。

「悲しいことがあったんだ・・・」

悲しいこと・・・

「・・・ずっと続くと思ってたんだ。楽しい日々が」

ずっと続くと思っていた日々・・・

「でも、永遠なんてなかったんだ」

永遠は、どこにもなかったんだ・・・

ぼくの思いが、言葉で伝わるとは思わなかった。

でも、彼女は言った。



「永遠はあるよ」



「ずっと、わたしがいっしょに居てあげるよ。これからずっと・・・」



そう言って、彼女はぼくのくびすじをかぷっと・・・



・・・



・・・



・・・



・・・・・・・・・かぷっ?



・・・



・・・



ちうちうちう



・・・・・・・・・












彼女は言った。



「太陽と十字架には要注意だよ☆」



でも、ぼくはこんな永遠はいらなかったんだ。



ああ、太陽が見たいなあ・・・

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ども〜、はにゃまろです。
えー、真面目に読んでた方々、こんな話でごめんなさいです。
いや、こういう話ってぎりぎりまで騙し通す事に意義があるかなって思ったもんで・・・
すげー、ありがちなネタなんだけど、こういうSSを読んだ記憶がなかったんで書いちゃいました。
途中で落ちがばれていなければよいのですが・・・
では〜