ピーターパン  投稿者:はにゃまろ


<登場人物>
ピーターパン:ちびこうへい
ティンカーベル:ちびみずか
フック船長:七瀬留美
ワニ:椎名繭

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真っ暗でした。

辺りは一面の闇に覆われていて、何も見えませんでした。

その真ん中で一人の男の子が泣いていました。

悲しい事がいっぱいありました。

辛い事がありました。

楽しい事も、おかしな事も、心があったかくなる事もありました。

でも・・・悲しい、哀しい、かなしい事がいっぱいいっぱい、本当にたくさんありました。

悲しい事を越えても、哀しい事があって、それを越えても、またかなしい事があって、このままずっと回転木馬のように、悲しい事がぐるぐると回っていきそうで、それが悲しくて、その男の子は泣いていました。

ずっと泣いていました。

ずっと、ずっと泣いていました。






「君、泣いているの?」

突然、声をかけられてその男の子はびっくりしました。

辺りをぐるりと見回すと男の子のすぐ横に、いつのまにか一人の女の子が腰を下ろしていたのです。

真っ暗なはずなのに、男の子はその女の子をはっきりと見ることができました。

その女の子は男の子がよく知っている女の子に似ていましたが、どこか違った感じがしました。

「どうして泣いているの?」

その女の子は男の子に話しかけました。

「君はなにも悪くないんだよ。ほんとだよ」

そう言って女の子はすっと立ち上がりました。

「あっ・・・」

男の子は思わず声を出すと、女の子の方に手をのばしました。

その女の子がそのままどこかへ行ってしまうかもしれない。

そう思ったのです。

「本当に、なにも悪くないんだよ・・・」

女の子は男の子の前に立つと、真摯な瞳で男の子を見つめました。

「わたしはずっと見てたから・・・だから、君が悪くない事を知ってるよ」

女の子の言葉には不思議な説得力があって、男の子の心は少しだけ軽くなりました。

「これからはわたしがずっとずっといっしょだから・・・」

女の子は一生懸命、男の子に想いを伝えようとして、すわり込んでいる男の子をのぞき込むように語りかけました。

「だから、もう泣かないで」

「わたしは、君の前からいなくなったりしないから・・・」

「ずっといっしょにいるって、約束だよ」

そう言って女の子は自分を見上げている男の子の口に、ちょんと自分の口をあてました。

その瞬間、真っ暗な世界が少しだけ明るくなりました。

「もう、寂しくなんかないよね」

男の子は女の子の問いかけに、長い間、ぎゅっとむすんでいた口をほんの少し和らげて、こくりとうなずきました。

その口元はほんのわずかでしたが、確かに微笑んでいました。

その微笑みを見て女の子もにっこりと笑いました。

女の子は男の子の後ろに回ると、彼の背中をやさしく抱きしめました。

「君の身体、あったかいね」

冷え切った男の子の身体を抱いて女の子はそうつぶやきました。

女の子の温もりが背中越しに伝わってきて、男の子の身体は少しずつでしたけど、あたたかくなっていきました。

「ほら、おっきなお月さま」

男の子はその言葉につられて空を見ました。

そこには本当に大きなまんまるのお月さまが、男の子と女の子だけの、このなにもない世界を優しく照らしていました。

「ここにはなにもなかったけど、でも今はお月さまがあるよ」

女の子は男の子の背中を抱いたままそう言いました。

「ね、これからいろいろ創っていこうよ」

「かなしいことのない世界を、いっしょに創ろうよ」

「ここが、君のネバーランドだよ」






≪第5話 ピーターパン、海へ行く(後編)≫

ぐて〜〜〜
「フック船長〜、くたくただぞお」
「うみゅ〜、くたくた・・・」
ここはネバーランドのどこかにある海岸。
びーちぱらそるの下でピーターパンとワニがへたばっています。
まあさんざん海で遊びまくったのですから当然ですね。
すぐ横では二人の様子をフック船長が苦笑しながら眺めています。
そのちょっと後ろではティンカーベルが同じように困り笑いしながら二人の様子を見ています。
「あんたら、はしゃぎすぎなのよ。あんだけ遊べば満足でしょ」
「フック船長だって一緒に騒いでたじゃないかあ」
「私は鍛え方が違うの」
「それって、乙女だからか?」
ピーターパンが容赦ないつっこみをいれます。
「うっ、ま、まあそんなところね」
「そおか、それはうらやましいなあ。うー、疲れた〜」
「みゅ〜、疲れた・・・」
「ピーターパン、今日はいっぱい遊んだよね」
困り笑いしながらもティンカーベルは嬉しそうにしています。
「おい、おまえはなんで平気なんだよお。ティンカーベルも疲れろ」
「えー、そんなのりふじんだよ。わたしは泳げないから浮き輪でぷかぷかしてただけだもん」
「うー、二人ともずるいぞ」
「そんなこといわれても困るよお」
相変わらずピーターパンは自分勝手な事ばっかりです。
「ねえ、あんた色々出したり消したりできるんだからさ、疲れないようにするとかもできたりしないの?。
ぱらららーって魔法で疲れを一気に回復させるとか」
「やれやれ、フック船長はばかだなあ」
<はー、やれやれこれだから・・・>のポーズでピーターパンは首を横に振りました。
「むっ、なによ!」
「思いっきり遊んだらくたくたに疲れて、疲れたら眠くなって、転んだら痛くって、そのうちお腹はへってくる、それが普通だろ。そうじゃなかったら、なんだか全部夢みたいじゃないか」
フック船長はちょっとドキッとしました。
ほんの一瞬だけ、あの寂しげな表情がピーターパンの顔をよぎったのです。
「・・・・・ごめん」
「あれ?、なんであやまるんだ?。変なの」
「わ、私はもうちょっと泳いでくるね」
ちょっと気まずくなったので、フック船長は逃げようとしました。
「そうか、ぼくは疲れたからお昼寝タイムにするぞお。がんばれよ」
本当に疲れたのでしょう。
ピーターパンは仰向けに寝転がるともうお休みモードです。
「うん。じゃあ、おやすみなさいね」
そう言って立ち去ろうとしたフック船長の髪の毛がくいくいっと引っ張られました。
もちろんワニです。
「あぐっっ」
「みゅー」
「ねええ、引っ張んなっって言ってるでしょ。いいかげんにしないとちょっと痛いかもしれないわよ」
いつものようにフック船長はワニに優しく言い聞かせました。
ワニもいつものように素直にうなずきます。
「うん」
「はぁ、ほんとに分かってるのかしら?、なんだかおんなじ事ばっか言ってる気がするわ・・・で、なに?」
「・・・一緒に寝るぅ」
かっくんとフック船長の首が90度、曲がりました。
すいへいになった地面とにらめっこをしています。
かなりがっくしきたようですね。
「・・・・・・ねえ、私はもうちょっと泳いでくるの。ワニはピーターパンと一緒にお昼寝すればいいでしょ」
心なしかフック船長の声が疲れているように聞こえます。
「・・・お歌」
「はへ?」
「寝る前のお歌・・・」
「・・・私が?」
ワニがこくんっとうなずきます。
「えっと・・・」
フック船長はとっさにティンカーベルへとヘルプミーな視線を送りました。
「?」
でも全然伝わりません。
「あれ?、どったの」と言った感じでにこにこしています。
「あの、私、歌はあんまり得意じゃないかなあって」
「みゅぅ・・・」
ワニの手がフック船長のお下げをしっかりと握り締めます。
「えー、あれよ、あれ。ほらっ、ピーターパンが寝てるじゃない。起こしちゃ悪いでしょ」
「ふわあ、ぼくは起きてるぞ・・・」
残念ながらピーターパンはまだ寝てませんでした。
目をこすりながら大あくびをしています。
「なんで起きてるのよお」
「別に減るもんじゃないし歌くらい歌ってもいいじゃないか。それにぼくも聞きたいぞ」
「だって、なんだか恥ずかしいじゃないのよ。ね、ティンカーベルもそう思うでしょ?」
「えっと、わたしも聞きたいんだけど・・・ダメかな?」
ティンカーベルまで加わっての三面攻撃です。
こうなってはさすがのフック船長も諦めるほかありません。
「ねえ、冗談でしょ?」
「みゅぅぅ」
くいくいと引っ張って催促しています。
「はうー、わかったわよお。言っとくけど簡単なのしか歌えないからね」



ネバーランドの海岸に中の上くらいの歌声が流れています。
遊び疲れたピーターパンとワニに、フック船長が子守唄を歌っているのです。
案外熱心に歌っているようです。
きっと、本当は歌うのが好きなんでしょうね。
肝心のワニは真っ先に寝てしまいました。
ピーターパンのまぶたもだいぶ重くなってきたようです。
「なあ、フック船長。いつもに比べて少しやさしい感じだな。なんでだ?」
うとうとしながらもピーターパンはもごもごとフック船長にたずねました。
「うん・・・私ね、こういうのが夢だったりするのよ。おかしいかな?・・・って、こらっ笑うな」
ビシッ
ぐはははーと笑うピーターパンにフック船長はチョップをかまします。
「ごめんよお、普段とのギャップがちょっとな。でもさ、けっこう似合ってると思うぞ」
「そ、そおかな?、なんだか照れるわね」
がらにもなく頬を赤らめてフック船長は照れました。
「うん・・・ぼく、忘れちゃったけどさ、でもお母さんってこんな風なんじゃないかなって思うんだ。
ワニもこんな風だったって言ってたぞ」
「そうなんだ・・・少しは満足してくれたかな?」
そう言ってフック船長は眠っているワニの頭を撫でました。
その様子をピーターパンはなんだか懐かしそうな顔で見ていました。
もしかしたら、ずっと昔のことをちょっとだけ思い出したのかもしれません。
ただ単にねむいだけなのかもしれませんけどね。
「・・・なあ、フック船長。よかったらだけどさ、ぼくやワニのお母さんになってくれないか?」
いきなりピーターパンがフック船長に告白しました。
ほんとに寝ぼけてるのかもしれません。
「ちょ、ちょっと、いきなり何言いだすのよ。私はまだ十七なのよ。ふつーお姉さんでしょ」
「だめか?」
ピーターパンは真剣な表情で聞きかえします。
「えっと、あの・・・どーしてもって言うなら、その、少しは考えてもいいわよ」
さっきよりももっと赤くなりながらフック船長はぶっきらぼうに答えました。
「・・・・・・・・・じょうだんだよ、じょ−だん。今のは寝言だから忘れちゃっていいぞ」
目を閉じて、半分寝言のようにピーターパンはそうつぶやきました。
フック船長にはその様子が、なんだか何かに怯えているように見えました。
「・・・ねえ、膝枕してあげよっか?」
「んー、別にいいよ。汗かくだけだしな。それよりも続きを歌ってくれよ」
「・・・うん、わかった。寝つくまでそばで歌ってあげるわ」
それからしばらくの間、フック船長は子守唄を歌っていました。
その歌声を聞いているうちに、ピーターパンはいつのまにか心地よい眠りの中に沈みこんでいったのです。
フック船長のちょっと後ろでは、ティンカーベルがうれしそうな、少しさみしそうな笑顔で、その様子を静かに眺めていました。



「やれやれ、やっと寝ついたわ」
「フックせんちょー、ごくろうさま」
「もう、二人ともこうやって寝てる時はかわいいのに、性格に難があるわね」
自分のことは棚に上げて、ずいぶんと勝手なことを言ってます。
「それはちょっと失礼だと思うよ」
ティンカーベルがもっともな事を言います。
「ほんと、寝てる時は天使みたいなのに、起きると小悪魔になっちゃうんだから・・・こいつら、いったいどんな夢を見てるのかしら?」
フック船長はぐっすり寝ているワニのほっぺを突っつきました。
「うーん、わかんないけど、たのしい夢を見ていてほしいよね。でも、ワニはたぶん夢を見てないと思うよ」
「へ?、どうして」
「だって夢の中で寝ても夢は見ないんじゃないかな?、わかんないけどね」
ティンカーベルは首をかしげながらそう言いました。
「・・・そっか。そうよね、全部・・・夢なんだよね」
「うん、夢だよ。フックせんちょーやワニにとっては、朝になれば全部消えちゃう夢、なんだよ」
水平線のずっと向こうを見つめてティンカーベルは寂しそうに笑いました。
「・・・あのさ、私、なんだかこっちにいる時の方が本当の自分でいられるし、楽しいし、生きてるって気がするのよ。向こうでは嫌な事とかもあるしね」
「フックせんちょー、それはちょっとの間だけだからだと思うよ。夢がずっと続いたら、生きてるなんて思えないんだよ・・・」
ティンカーベルは、また寂しそうに笑いました。
フック船長にはティンカーベルのその言葉が、ピーターパンが時折見せる寂しげな顔の事を言っているんだとわかりました。
「・・・・・・ねえ、あなたたちって何者なの?」
フック船長はちょっと真剣な顔でティンカーベルの方を見ました。
「ピーターパンは普通の男の子だよ。ちょっとやんちゃであまのじゃくだけど、どこにでもいる普通の男の子だよ」
そう答えたティンカーベルの顔は笑顔でした。とても悲しそうに、笑っていました。
「ただ、悲しいことがいっぱいあっただけなんだよ。いっぱい、いっぱいあっただけなんだよ・・・。
それ以外は、ほんとに普通の男の子なんだよ。ほんとだよ」
「悲しいことが、いっぱいあったから、ここにいるの?」
フック船長はなにかが喉につかえたような感じがして、途切れ途切れに聞きかえしました。
「どうなのかな?、ほんとの事はわたしにはわからないよ。きっと、ピーターパンにもわからないと思うよ。でもね、向こうには悲しいことが多すぎるから、だからピーターパンには、もうこの世界しかないんだよ」
「悲しいことが、多すぎる・・・そうなんだ・・・」
「うん・・・」
「・・・あなたもそうなの?」
「えっ?」
話が自分にふられてティンカーベルはびっくりしました。
「あなたは、どうしてここにいるの?」
フック船長が尋ねます。
「わたしは、ティンカーベルだよ。ネバーランドの妖精。フックせんちょー、知ってる?。妖精って向こうの世界には、どこにも・・・どこにもいないんだよ。ネバーランドにしかいないんだよ」
「よく、わかんないんだけど・・・」
「うん・・・わたしにもよくわからないんだよ。おかしいよね、自分のことがわからないなんて」
「・・・そうなの。じゃあさ、ティンカーベルの名前はなんて言うの?」
「わたしはティンカーベルだよ」
「だから本当の名前よ。あいつだって本当はこうへいって言うんでしょ」
「な、な、なんで知ってるの!?」
「なんでって、あなたがそう呼んでたじゃない」
「うにゃあ、こーへーごめん」
「大丈夫よ、黙っとくから」
フック船長がぱちんとウインクしました。
「・・・約束だよお。・・・えっとね、ピーターパンはね、本当は折原浩平って言うの」
「折原、浩平ね」
ふんふんとフック船長はうなずきました。
「でも、こーへー自分の名前があんまり好きじゃないんだよ。だから・・・」
「わかったわ、これからもピーターパンって呼んであげるわよ」
「うん、お願いだよ・・・それとね、フックせんちょーにもうひとつだけお願いしてもいいかな?」
「別にいいけど・・・なに?」
「こーへーの名前を、覚えておいてほしいんだよ」
「覚えておく?」
「うん・・・それだけだよ」
「ふーん、わかったわ、覚えとく。それであなたの名前は?」
「・・・わたしはね、ずっと名前がなかったんだよ」
「へ?、名前がなかったって、なによそれ」
「ずっと名前を付けてくれる人がいなかったんだよ」
「・・・ごめん、悪いこと聞いちゃったわね」
「ううん、いいんだよ。今のわたしには名前があるからね。こーへーが付けてくれたんだよ」
「それがティンカーベル?」
「違うよ、わたしの本当の名前はみずかって言うんだよ」
名字はないんだけどねと言ってティンカーベルはてへへと笑いました。
「・・・みずか」
「うん、わたしはみずか。わたしはこっちの名前の方が好きなんだよ。だって、こーへーが付けてくれた名前だからね」



ピーターパンとワニはまだまだ眠り込んだままです。
よっぽど疲れたんでしょうね。
「この二人、ほんとにぐっすり寝てるわね」
「うん、今日はいっぱいいっぱい遊んだからね」
ティンカーベルはとってもうれしそうに言いました。
「いっぱい遊ぶのはいいんだけど、付き合わされる方はちょっと大変よ」
フック船長のその一言にティンカーベルの肩がびくんと震えました。
「・・・フックせんちょー・・・こういうのって、迷惑かな?」
心配そうにティンカーベルがたずねます。
「ん、どういうの?」
「このネバーランドの夢って、迷惑かな・・・」
「まったくもう、いい迷惑よ」
フック船長はきっぱりと言い切りました。
「うにゃっ、そんなにはっきり言わなくてもいいのに〜」
ティンカーベル大ショックです。
そんなティンカーベルをしり目にフック船長は寝ているピーターパンの頬を突っつきました。
「まったくもう、ほんとに寝顔はどこにでもいる普通の男の子なのにね・・・聞いてる?、あんたが私たちに見せてる夢は、きっと飛びっきりの夢よ。だからね、」
「フックせんちょー・・・」
「だから、いい夢見なさいよ、浩平」
そう言って、フック船長はぐっすり寝ているピーターパンの頬を優しく撫でました。
その時、ピーターパンはほんの少しだけ微笑んだようでした。
もしかしたら、誰かに頬を撫でてもらう夢を見ていたのかもしれません。
それから、ピーターパンが目を覚ますまで、フック船長とティンカーベルはずっとピーターパンのことを見守っていました。
やがて時が経ち、ネバーランドの海に真っ赤な夕陽が沈んでいきます。
向こうの世界に朝がきたのでしょう。
フック船長とワニは向こうに帰っていきました。
ピーターパンとティンカーベルも家に帰りました。
ネバーランドの、自分たちの家に帰っていきました。
ネバーランドのある一日のお話はこれでお終いです。






「あ、あの・・・」

「・・・浩平でいいぞ」

「こーへー、今日はごめんね」

「なにがだ?」

「わたし、またみんなの前でこーへーって呼んじゃったよね。ごめん・・・」

「べつに気にしてない。いつものことだしな」

「で、でも、でも」

「いいんだよ、ピーターパンって呼べって言ったり浩平って呼べって言ったりしてるぼくが悪いんだ」

「そ、そんなことないよ。こーへーは悪くないよ」

「ぼくは・・・ピーターパンの時は寂しくないんだ。でも、ぼくは浩平だよな」

「なあ、みずか、本当のぼくはどっちなんだろう・・・どっちが偽者なんだろうな」

「ピーターパンが偽者なのかな?、それとも・・・浩平の方が、偽者なのかな。みずかはどっちだと思う?」

「ぼくにはわかんないんだ。もう、わかんないんだよ。長い長い時間がたって・・・ぼくは、ぼくは本当にいたのかな・・・」

「どっちも偽者じゃないよ・・・。ピーターパンも、こーへーも、本当にいるよ。ここにいるよお」

「だって、だって浩平はいなかったんだぞ。どこにもいなかったんだ。誰も浩平のことなんか知らなかったんだ!!。もしかしたら、最初から浩平なんてどこにもいなかったのかもしれないじゃないか・・・」

「わたしが知ってるよ。向こうの世界に、こーへーがいたってことを・・・わたしは知ってるよ」

「そうだよな。ぼくは、浩平だよな」

「うん!、こーへーはこーへーだよ」

「・・・みずかはぼくのこと、忘れないよな」

「うん、大丈夫だよ。わたしはこーへーのことをずっと覚えているから、ずっとずっと一緒にいるから・・・ね、ほんとだよ」

「約束・・・したもんな。絶対だからな。約束やぶったら、針千本ぐらいじゃすまないぞ」

「うん、どんなことがあってもずっと一緒だから、だから大丈夫だよ」

「約束だからな」

「うん、約束だよ」

「・・・・・・なあ、やっぱりフック船長とワニも、いつかぼくのことを忘れちゃうんだろな」

「こーへー・・・」

「そんな顔するなよ、もう慣れちゃったさ」

「こーへえ」

「そんな顔するなって言ってるだろお。みずかがそんな顔してると、ぼくまで悲しくなるじゃないか・・・」

「ご、ごめんね。こーへー、こういう顔がきらいだったよね。こーへーがいやならもうこんな顔しないよ。えっと・・・これでどうかな?」

「だめだな、そんなんじゃ笑えないぞ。こんなふうに笑うんだ」

「こんなかな?」

「ちがーう、こんなふうだ」

「こ、こう?」

「びみょーにちがうな。こうだ!」

「こうかな?」

「そうじゃなくてだな・・・」

「こう?・・・」

「うーん、まあまあだな・・・」


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ども〜、はにゃまろです。
だんだんペースが遅くなる今日この頃、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
やっと、海の話が終わりました。
まったく3話書くのにどれだけかかってるんだか・・・
この調子じゃ年内に終わるのは無理ですね。
こんな遅い話に付き合ってくれてるみなさん、ありがとうございますね。
なんだか、ますます遅くなりそうな気配が濃厚です。
でも、がんばりますのでひとつよろしく。
ちなみに冒頭の部分はほとんど前のやつの流用だけど手抜きじゃないよ〜
ほんとだよ
・・・
では〜