ざくっ ざくっ ざくっ 掘っている 僕は今、穴を掘っているんだ 僕の思い出を埋めるためにね 学校の制服 カバン 教科書、筆記用具etc. それが僕の思い出 僕が見ていた夢の欠片 僕はあの世界にずっといられると思っていたんだ 他のみんなと同じように、あの世界にいられると思っていた でも、それは違ったんだよ 僕の本当の世界は病室のベッドだった 僕はそこで夢を見ていたんだ いくら望んでも決して叶わない夢を・・・ あの輝く世界を、夢見ていた どれだけ努力しても、決して叶わない夢がある そんな夢は見ない方が幸せなのかな? 僕はこれから旅立つ 僕が旅立つ世界、それがどちらなのかは、まだ分からない ただ、もうここにはいられないんだ それだけは確かな事だ だから、僕は墓を掘っている もしかしたら、僕の墓は作ってもらえないかもしれないからね 僕はこの世界に何かを残しておきたいんだ 僕がここにいた証し、みたいなものをね それが、絆を求める事のできなかった僕にできる最後の作業さ ふう、さすがに寒いや・・・ ・・・そろそろ身体の方も限界みたいだよ 少しばかり・・・苦しいかな・・・ わずか17年の付き合いだったけど、最後に君の事をずいぶんと酷使してしまったね すまないとは思っているよ 別に憎かったわけじゃないんだ ただ、少し気になる人がいてね 彼と話がしたかったんだ ちょっとした思い出がほしかったんだよ 彼となら、友達になれそうな気がしたんだ・・・ これが最後だからもう少しだけ我慢してほしいな これで、最後だからね ・・・彼は今頃、どうしているのかな 最後に会えなかったことが、心残りだよ メリークリスマス・・・ あの日、屋上の扉は開かなかった これぐらいでいいかな? ふふ、僕は自分の墓穴を掘っていたんだ ちょっと象徴的じゃないか 僕は自ら破滅へと突き進んでいた そして訪れるのは死か、それとも・・・ 死・・・ それは終わり 苦しみの終わり 全ての終わり 永遠の安らぎだ 死はあらゆる生き物に訪れる そう、ちょっとした例外を除いてね 死ねば、存在は消えても心の中からは消えない 忘れていても、ふとした拍子に思い出すかもしれない それに、たとえ忘れ去られたとしても、僕がいたという事実は消えないんだ 今ここで僕が死んだとしたら病院は大騒ぎになる 行方不明として記録に残るだろうね でも、そんな事よりも大切な事は死体が残るって事だ もし発見されればニュースになる 発見されなければ・・・朽ちて地球の一部となる 僕としては、発見されない方が好みかな この世界に形が残るんだ 大地に溶け込んで草木の糧となる 灰になるよりよっぽど素晴らしい事じゃないか この世界に生きる限り、いつかは必ず終わりが来る 永遠に続く時間の流れから見れば、全ては一瞬の煌きでしかない わずか数秒の命も、数百億年にわたる星の輝きも、すべては一瞬の輝き・・・ だからこそ、すべてがかけがえのない瞬間だったんだ こんな当たり前の事が、今はこんなにも重いなんて・・・ 僕は弱い人間だ それがわかっていて、こうなってしまった それがわかっているのに、まだ、こうして生きている そう、僕は死が怖いんだ どうしようもなく怖い それが、たまらなく怖いんだ その瞬間に僕は消えてしまう それが怖いんだ だから、望んでしまった 消えるという点ではどちらも同じ事なのにね それは絶対的な結末と相対的な結末 どちらにしろ、この世界にとっての僕は消える 後になにかが残るか残らないか、それが違うだけだ それは自己の完全な消滅と完全な存続 相反する二つの世界から、僕は前者を選んだ 選んだはずなのに・・・ まだ、それを選びきれずに、こうして墓を掘っている 僕は臆病なんだよ 僕には、自ら命を絶つ勇気なんてない だからこうして待っているんだ 訪れつつある世界に怯えながら 死が先に訪れるのを待っている この季節に一晩中外にいれば、凍える事ができるかもしれない それが来るよりも早くね よいしょっと うん、これで完成だ これが僕の墓 僕の思い出が眠る場所だ これで成すべき事は全部終わったよ 後は、待つだけか 待つ・・・か 僕はずっと待っていた 待つ事だけをしてきた 僕は臆病だからね 選択肢はずいぶんと少なかったけど、その中から待つ事ばかりを選んでいたような気がするよ あの日も、僕は屋上で彼を待つことしかできなかった でも、何かを待つのもこれで最後だ さてと・・・ どちらが早いかな? 寒いなあ たまらなく寒い 寒さが感じられるってことは、僕はまだこの世界にいるのだろうか? でも、寒いよ 凍えてしまいそうだ あはっ、おかしいね 凍えてしまいそうだと思っているなんて・・・ 僕はそれを望んでいるって言うのにね それにしても寒いや まだ来ないのかな? こんなに待っているのにね 早く来てほしいな それにしても・・・ ああ、寒い 寒いなあ 凍えてしまいそうだよ 待っている・・・ 待ち続けている・・・ 時さえも凍てつきし世界で、 彼は待っている 彼が待っているのは死? 永遠? それとも・・・ 彼は待ち続ける 何かを待ち続けている 未来永劫に、待つ 世界の果てまで 果てしなき流れの果てまで 永遠の、時の果てまで・・・ ただ、待ち続ける 自らの墓標の前で 思い出が凍てついた墓標の前で・・・ 「寒いなあ、凍えてしまいそうだよ」 屋上の扉はまだ開かない Endless... ------------------------------------------------------------------------------- ど、ども、はにゃまろです さて、今回のお話は? 氷上シュンが墓を掘る話です(爆) あ、あはははは なに書いてるんでしょうね これ、夜中に飛び起きて書いたSSだったりします なんか変な夢を見てたみたいで・・・ つ、つかれてるのかなあ 永遠の部分は何も考えずに書いちゃってますが、 永遠の果ての果てを描くSS、いつか書いてみたいと思っています 前の蛇のSSのONEシリアス版になるかな? でもたぶん思うだけですね 誰か永遠の時の流れについてのSFっぽいSS書いてくれないかなあ ピーターパンは来週(たぶん)