ピーターパン 投稿者: はにゃまろ
<登場人物>
ピーターパン:ちびこうへい
ティンカーベル:ちびみずか
フック船長:七瀬留美
ワニ(着ぐるみ):椎名繭

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「ワニー、ちょっと聞きたいことがあるんだあ。いいかな?」

「みゅ? うん」

「ワニはさあ、お母さんってどんなだか知ってるか?」

「!」

「ぼく忘れちゃったんだ。よかったら教えてくれよ」

「・・・・・・うん」

「・・・お母さん、あったかくていいにおいがした」

「寝る前にいろんなおうたやおはなし、聞かせてくれた・・・」

「やさしくなでてくれた・・・」

「かなしいときに、ふわって抱きしめてくれた・・・」

「お手伝いしたら、にこって、おひさまみたいに、にこって笑ってくれた・・・」

「・・・でも、遠くへ行っちゃった。繭を置いて行っちゃった・・・」

「お母さん、もうどこにもいないの・・・」

「・・・・・・そうかあ。・・・ぼくのお母さんも、そんなだった気がするぞ。どうせどっか行っちゃうんだったら最初からいない方がいいのにな」

「うぐっ、お母さんいない、大好きなお母さん、どこにもいない・・・」

「うわっ、泣くなよワニ。ほら、テリヤキバーガーだぞ」

「・・・・・・ぅん。・・・繭のお母さん・・・」



≪第3話 ピーターパン、海へ行く(前編)≫

「海へ行くぞ!!」
ピーターパンが唐突に言いました。
「海?」
「みゅ?」
「突然すぎだよお」
フック船長とワニ(着ぐるみ)とティンカーベルはびっくりしました。
まあ、いつものことなんですけどね。
「いいか、フック船長は海賊だ」
ピーターパンがビシィとフック船長を指差しました。
「えっ、えっ、私?」
「フック船長は海賊だろっ」
「まあ、一応そうなってるみたいだけど・・・」
「だったら海しかないではないかあ。そうだろ、みんな」
「ふいふい」
「うーん、よくわからないよ」
「そうなの?」
みんなあまり納得していないようです。
「もうっ、なんでわかんないんだよ。いいか、いつまでも陸にいたら、フック船長は山賊になってしまうんだぞ。そうなったら・・・」
ピーターパンはフック船長の方をちらっと見ました。
「はまりすぎではないかあ」
「コロス」
フック船長がピーターパンに襲いかかりました。
必殺の首四の字です。
「ぐあー、へるぷワニー」
「みゅうううっ」
「ぎゃあああ、引っ張んなーーー」
ピーターパンは無事救出されました。
よかったよかった、めでたしめでたしですね。



「あのね、なんで素直に海に行きたいから海に行こうって言えないの」
ピーターパンがフック船長に怒られています。
「なんだよー、ぼくは純粋にフック船長のことを心配しているだけなんだ。別に海に行きたいなんて思ってないぞ」
「じゃ、やめましょう」
あっさり返されました。ピーターパン、ちょっとピンチです。
「ばかあ、山賊になってもいいのか。海賊の誇りはどうしたんだ」
「ワニ、ティンカーベル、今日はなにしよっか」
「・・・鬼ごっこ!」
「えー、わたし走るの苦手だよー」
ピーターパンは無視されました。みんなひどいです。
だからピーターパンは鳴きました。
「うみー」
「ピーターパン鳴いてるよお」
「ほっとけ」
鳴いて鳴いて鳴きまくりました。
「うみー、うみーー」
こんちくしょうってほど鳴きました。
「うみー、うみーー、うみーーーーーっ!!」
「あーーーー、もうっ、鬱陶しいから鳴くな!!」
ついにフック船長は根負けです。
「・・・うみー、うみー」
それでもしつこく鳴きました。
フック船長はあきらめて、やれやれといった顔でピーターパンに尋ねました。
「あのねえ、海に行きたいの?」
「・・・うん」
「じゃあ、なんで最初からそう言えないのよ」
「ぼくは性格が奥ゆかしいからな」
ピーターパンは胸を張って言いきりました。
「はぁ、疲れるわ。どうしてこう素直じゃないのかしら」
最近、癖になりつつあるため息をフック船長は大きく吐いたのでした。
結局、海に行くことになりそうです。
「フック船長、海は広くて大きいんだぞ。なんかこお、行ってみたいなよそのくにーって感じがするだろ」
「みゅー、スイカ割り!」
「えー、わたしぐるぐる回されるの苦手だよー」



暑い南国の太陽が辺りを照らしつけています。
そうです、ピーターパンたちは海にやってきたのです。
なんとそこにはっ!!
「ふっはっはっはっはー、見ろっ、あれこそが超弩級海賊船うるわしのひぽぽたます号だ!!」
どどーん!!
ピーターパンは海岸に寄せられたばかでっかい海賊船をズバァっと指差して叫びました。
海賊船の舳先には「がおーっ」と吠えているフック船長の胸像が取り付けられています。
「ほえー」
「うわー」
「はあ、頭痛い・・・」
みんな驚いています。ピーターパンの計画は大成功でした。
「どうだ、びっくりしただろ」
「みゅー、びっくりした」
「すごくびっくりだよー」
「あのさあ・・・もしかしてこんなのが理由で海に行きたかったの?、海で泳ぎたいとか遊びたいとかじゃなくって」
残念ながらフック船長はあんまり驚いていないようです。どっちかって言うとあきれています。
ピーターパンがっかりです。
「なんだよお、フック船長のために造ったんだぞ。ギャフンって言えよー。もっと驚いてくれなきゃドッキリ大成功にならないじゃないか。そんなんじゃ視聴率とれないぞ」
「はぁー、驚くのを通り越してあきれるのも通り越して、なんだかがっくりきたわ」
フック船長はため息を吐きました。がっくりしてます。
「もうっ、ノリが悪いぞ。さあ、フック船長、いざ大海原へレッツゴーだ!。おれたちゃ海賊四人組〜」
「いやよ」
一言で片付けられました。ちょっとひどいですね。
フック船長は顔を上げるとくわっと辺りを見回しました。
「・・・青い空・・・白い雲・・・このマリンブルーの海!、美しいサンゴ礁!、白い砂浜に輝く太陽!!、なにが悲しくてひぽぽたますなんかに乗らなきゃなんないのよ。泳ぐに決まってるでしょ。あこがれのぷらいべえとびーちバカンス!!」
フック船長は両手を広げて太陽を仰ぎました。
「ああ、これが南国の陽射しなのね。ざまあみなさい梅山海水浴場の監視員」
なんだかよくわかりませんが、フック船長はとても嬉しそうです。
顔がすっごく輝いてます。もう涙ぐんでます。
ピーターパンは計画を死守するために説得にでました。
「フック船長、ひじょーに残念なことなんだけど・・・」
「なにかしら?」
フック船長は微笑んでいます。
「実は・・・ここはワニがでるから遊泳禁止なんだ!」
「みゅー、わにーわにー」
「・・・で?」
フック船長の眩しい笑顔です。
「ワニがでるから遊泳禁止なんだ!!」
「わにーー」
「だからあ?」
フック船長は本当に嬉しそうです。
「だからワニがぁ・・・」
「うー、わにぃ・・・」
「そうなの、それは大変ね。じゃあがんばってね、私は泳ぐから」
フック船長はさわやかな笑顔を残して泳ぎにいってしまいました。
後にはピーターパンとワニがぽつんと取り残されています。
「ワニよおーーー」
「みゅうーーー」
ガシィ
ピーターパンとワニはなんだか悲しくなってガシィと抱き合いました。
「うう、悲しいなワニー」
「うぐ、わにだもぅん」
「なあ、ワニー」
「みゅ、なあに?」
「おまえさあ、暑くないのか?」
「・・・・・・うー、暑い・・・」
そうなのです。ワニは分厚い皮(着ぐるみ)に覆われているため暑いのは苦手なのです。
ピーターパンはいいかげん暑苦しいのでワニから離れました。
「ちぇっ、まあいいや。ぼくたちも泳ぐか」
「うん!」
ワニは嬉しそうにうなずきました。きっと本当はワニも泳ぎたかったのでしょう。
さっそく暑苦しい着ぐるみを脱ごうと背中に手をやります。
すかっ
「・・・ほえ?」
すかっ、すかっ
ふぁすなーに手が届かない!!
「みゅうっ!?」
衝撃の事実がワニを襲いました。
ワニ大ショックです。
「うーー、みゅう、みゅうう」
いきなりワニがなんだかよくわからない踊りを踊りだしたのでピーターパンもびっくりです。
「うーむ、ワニはそういう気分なのか?。わかる、わかるぞー、そういう気分の時ってあるよな。じゃあがんばれよ、ぼくは泳ぐから」
そう言うとピーターパンはさわやかな笑顔を残して泳ぎにいってしま・・・
「みゅーー、ピーターパン、ふぁすなー!」
「ワニー、ぼくはふぁすなーじゃないぞ」
天然なのかわざとなのかはちょっとわかりませんが、ピーターパンはぼけました。
「うーー、背中のふぁすなーだもぅん」
「背中のふぁすなー?、そんなのあるわけないだろ、ワニなんだから」
「みゅみゅっ!?」
ピーターパンがもっともなことを言いました。
ワニ再び大ショックです。
「どうしたんだ、ワニ。お腹でも痛いのか?」
ショックを受けているワニに向かってピーターパンが心配そうに尋ねます。
「・・・ふぁすなー、付けて・・・」
ワニがぽつりと呟きました。
「なーんだ、おしっこか。じゃあ海の中で・・・」
ビシッ
ワニチョップがクリーンヒットしました。
今度のはたぶんわざとだから当然ですね。
「あうう、ご、ごめんな。ぼくとしたことがレディーに対して失礼だったよ。今ふぁすなーを付けるからな」

ばばんっ

ワニの、えー、なんというかその・・・股の間に・・・チャックが付きました。
「みゅーーーーーーーーーーーっ!!」
ビシッ
バシッ
ゲシッ
トリプルワニチョップ炸裂です。
「ワ、ワニー。も、もしかしてぼく、なんか間違ってたか?」
どうやらピーターパンは天然だったようです。
「うー、違うもぅん。背中のふぁすなー!!」
ワニはピーターパンの方に背中を向けて、くいくいとふぁすなーがあるべき場所を指差しました。
「おお、もしかしてそのワニスーツを脱ぎたかったのか?」
「うん・・・」
ワニ怒ってます。当然ですね。
「うーん、でもそうするとりありてぃが無くなっちゃうじゃないか」
「みゅー、ふぁすなー」
「それに脱いだらワニだってわからないぞ」
「ふぁすなあ」
ワニがじりじりとピーターパンに詰め寄ります。
普段が普段なだけにちょっと怖いです。
「わ、わかったよお。付けるよ、ふぁすなー付ければいいんだろ」

ばばばんっ

こうしてワニの背中にはでっかいふぁすなーが付いたのでした。
これなら一人でも外せますね。
「みゅー」
ワニは満足そうです。
でもピーターパンはなんだか不満そう。
きっと、りありてぃが無くなったからでしょう。
「むーー、とりあえずひぽぽたます邪魔だあっ」
ピーターパンは所在無さげにどでかい船体を海岸に寝そべらせているひぽぽたます号にやつあたりしました。
シュポンッ
ピーターパンが3時間もかけて作成した大傑作、超弩級海賊船ひぽぽたます号は役立たずのまま消されてしまいました。可哀想ですね。
「うにゃーーーーーーっ」
ボッシャーーーン
そして先にひぽぽたますに乗りこんでいた律義なティンカーベルは海に墜落したのでした。
めでたしめでたし、とっぺんぱらりのぷー


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ども〜、はにゃまろです。
夏です。
夏と言えば海!
青い空、白い雲、きっとあの水平線の終わりには虹の橋があるんだ。
そういえば今年は海へ行ってないなあこんちくしょう。
ってなわけで海へ行く話です。
なんか無茶苦茶です。
えーと・・・続く!!