刹那の永遠  投稿者:ひさ


「なあ、長森……何か欲しいものあるか?」
「え!?」
 わたしはその言葉に驚いて、パッと浩平の方に顔を向けてしまった……顔が
くっついてしまいそうな程、お互いが近付いていたとも知らずに。
 その結果……
 
「…………」
「…………」

 わたしは頭が真っ白になった。
 浩平の方から離れたのだけれど、何が起こったか理解するのには、それから
しばらくの時間を要した。
「え……あ……う……」
 自分でも何を言ってるのか分からない、うめき声のような言葉。
 実際には僅か数秒の出来事だった……と思う。
 だけど、その瞬間わたしは時が止まったような気がした。そのままの状態が
永遠に続くような感覚だった。
 ううん……きっとそれは、わたしの願望なんだ。
 ずっと終わらないでいて欲しい。
 こうして浩平といつまでも……そんな想いが抱かせた錯覚。
 やがて現実へと引き戻されると、わたしの中でだけ凍り付いていた時間は唐
突に動き出し……そして全てを理解した。
「わ、わたし……浩平と今……そ、その……」
「あ、あのさ……誕生日だろ、今日……おまえの」
 浩平にも予期せぬ事だったのか、しどろもどろの口調でわたしの言おうとし
ていた言葉を遮る。
「え? あ……うん」
 どうしても顔を合わせられないわたしは、足元を見ながらやっとの思いで返
事をしただけ。
 最初に驚いたのは、浩平が誕生日の事を覚えていてくれたからだった。
 去年までは、その事さえ話題に上らなかったのに……。
 やっぱり浩平も、わたしを幼馴染みじゃなく恋人として意識してくれてるの
かな?
 そんな事を考えていると、意外にも浩平の方から自分の気持ちをわたしに打
ち明け始めた。
「今までそういうの全然事考えて無かったからさ。だけど、付き合い始めたか
ら長森にそうしたいんじゃなくて、俺はおまえの誕生日の事ずっと知ってたん
だけど……ほら、その何だ……きっかけが掴めなかったっていうか……それで
今なら自然に事を起こせるっていうかさ……あーー!! 何言ってんだろ俺…
…」
 浩平はそんな風に一気に捲し立てて、終いには自分の頭をくしゃくしゃとか
きむしる。やっぱりさっきの出来事が、浩平にとっても余程衝撃があったのか
……だから、こんな普段自分からは余り言わないような事を照れ隠しに使った
んだと思う。
 でも、わたしには浩平の気持ちがよく理解できていた。伊達に長い事幼馴染
みをやってた訳じゃない……不器用だけど、わたしの事をいつも気遣ってくれ
ている。思い上がりと言われるかも知れないけれど……。

「何か、欲しいものあるか?」
 再び浩平が、さっきと同じ事を問い掛けてきた。
 だけどわたしは……、


「もう……貰ったから……欲しいもの……」
 うつむきながら、そう言葉にするだけで精一杯だった。


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 ……あ〜やだやだ、ネタが詰まるとこういう展開に逃げてしまう自分が(核爆)。

 タイトルはあれだし、全然それっぽくないですけど何の事は無い、瑞佳の誕
生日SSです(確か9月26日だったはず)。
 本当はもっと長めの話を書いてたのですが、どうも間に合いそうに無かった
ので(結局これも間に合いませんでしたが(^^;)) こんな短いものになってしま
いました。
 あえて直接書かなかったのですが、この二人に何が起こったかは……分かり
ますよね?(^^;)
 時間無し、ネタなしの即興SSで失礼しました。機会があれば、書きかけの
本当に投稿したかった誕生日SSを何処かで出したいです…。


 最後に、ここまで読んで下さった方、前回投稿までの感想を書いて下さった
方、どうもありがとうございましたm(_ _)m

 それでは……。