風邪の日の憂鬱【後編】 投稿者: ひさ
(今日のお昼になにがあるのかなぁ……)
瑞佳は、今朝の浩平が言い掛けた言葉の事を学校に来てからずっと考えていたが、
昼休み前の最後の休み時間になってもその答えはまだ見つかっていなかった。
「長森さん」
あれこれ考えていると、誰かが横から声を掛けてきた。
振り向いて見るとそこに立っていたのはクラスメイトの住井護だった。
「あっ、住井君」
「折原の奴、今日も風邪で休みなの?」
「うん。熱がなかなか下がらないみたいなんだよ」
「でもその割には全然雨が降らないよなぁ」
「ははは……」
「しかし折原も可哀想になぁ。あれだけ今日の事で張り切ってたってのに」
「えっ!?」
その住井の言葉を聞いた瑞佳は、浩平が今朝言い掛けた事だと半ば確信すると、
少し躊躇したが思い切って聞いてみる事にした。
「住井君、実は……」
今朝の浩平の行動、そして例の気になる言葉など出来るだけ詳しく住井に話してみた。
「なるほどね〜。多分折原が必死になってたのってその事だよ」
「お昼に一体何があるの?」
「えっと、それはね………」


「……ん……う…ん?」
今朝の事を考えていた浩平は、どうやらいつのまにか眠ってしまっていた。
目を覚ました時には、既に部屋の中は薄暗くなっていた。
「ふぁ〜、もう6時か……」
時間を確認して、布団からむっくりと起き上がりしばらくぼんやりとしていた浩平だったが、
次第に目が冴えて来ると、ふと机の上に何か乗っているのが目に付いた。
「なんだ、これ?」
布団から這い上がった浩平は、机に置かれていた紙袋をがさごそと探ってみる。
中から出てきたのは、何かの調理パンと誰かが書いたメモだった。

『これ食べて早く元気になってね』

たった一言で、一見誰が書いたのか解からないようなメモだったが、浩平はそれだけで全て理解していた。
「あのばか、大変だったろうに……」
調理パンを手にとって呟く浩平。これこそが、浩平が今日どうしても学校へ行きたかった原因――
月に一度、限定30個で売り出される「至高のダブルソースカツサンド」――だった。
これは、手に入れるために毎月毎月必ず激戦になるという代物で、先月あと一歩の所で買い損ねて
涙を飲んだ浩平にとっては風邪を押してでも食したい一品だったのだ。
それを買うのに、どれだけもみくちゃにされて苦労しただろうか……。
「ありがとな……」
浩平はポツリと呟くと、手にしたパンにかぶり付いた。
肉汁とソースが絶妙に絡み合って、それが口の中いっぱいに広がり、やがて全身に染み込んで行くような感じがした。
その時になって、ようやく浩平は風邪のだるさなど何処かに行ってしまっていた事に気付いていた……。


――翌日
浩平の風邪もすっかり良くなり、いつもの如く瑞佳と学校まで全力疾走を繰り広げていた。
「なあ、長森。おまえ昨日の朝さぁ、俺が朝倒れて意識遠くなった時なんか言ってなかったか?」
「え?あれはね、由起子叔母さんを呼んでたんだよ。だって浩平を玄関にそのままって訳にも
いかないし、わたし一人じゃ重くて浩平の部屋まで運ぶなんて出来なかったから」
「ふ〜ん、そうだったのか」
「でも良かったよ、浩平元気になって」
「しっかし風邪は直ったんだけど、何かこう身体の節々が痛むんだよなぁ」
「き、きっとそれはずーっとベッドで寝てたからだよ」
「う〜ん、まぁいっか。あ!おい、早くしないと遅刻しちまうぞ〜」
「もー、浩平が起きるのがいつも遅いからだもん!」
瑞佳は先に駆けて行く浩平の背中を見て、話そうかなと思ったがやっぱりやめる事にした。
由起子と二人で浩平を運んでいた時に、手が滑り誤って床に身体を落としてしまった事を……。
「心配かけた罰だよ浩平」
そっと呟いた言葉は、浩平に届く前に朝の爽やかな風に流されていった。

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「引っ張っといてこんなオチで済みません(^^;)」
つっこみ瑞佳:また食べ物オチで懲りないよね、ホントに。しかもつまんないよ。
「で、でも前編から間は開かなかったわけだし……」
つっこみ瑞佳:それなら最初っから一本で投稿すればいいんだもん!
「分かってるんだけど、その方が続きを書くぞって意欲も沸くし……」
つっこみ瑞佳:……はぁ〜。
「その、ただ溜息だけってのはいや〜ん(爆)」
つっこみ瑞佳:まあ、今回は風邪引いてるって事で大目に見てやるんだもん。
「ちなみにまだ治っておりません〜(;x;)」
つっこみ瑞佳:次は時期的にホワイトデーの話だよね?
「書ければいいけどね、ものすごぉ〜くらぶらぶぅ〜なやつ(^^;)」
つっこみ瑞佳:らぶらぶはともかく、とりあえず日曜日に投稿決定だもん。
「ちょ、ちょっと待てやーーーーーーーっ!!(TT)」
つっこみ瑞佳:それじゃあ、まただもんっ。