喜待 〜マツコトノヨロコビ〜【中編】 投稿者: ひさ
結局……私は浩平にデートの約束を取り付けられてしまった。
別にその事自体が嫌と言う訳ではなくて、むしろ誘ってくれた事はすごく嬉しかった。
ただ、昼休みに訊く事の出来なかった浩平の返答が気になって仕方がない。
おかげで午後の授業は、先生の話が右耳に入ってそのまま左耳から抜けていくような状態だった。

待たせる事と、待たされる事……どちらが嫌か。

私はどちらが嫌なのか、浩平は当てて見せると言った。
私は「待つ」という言葉がとても痛く感じる。辛い……深く悲しい想いが心に刻まれている。
その感情は、おそらく浩平の中にも少なからず存在している……と思う。
だからこそ私は答えを切望する。浩平に私の心を言い当てて欲しい……。

ふと浩平の方へ顔を向けると、ちょうど浩平の視線と重なり合った。
浩平の瞳が私の瞳へと語りかけてくる。

(さっきの事、怒ってんのか?)
(……いいえ)
(そうか)
(……でも、浩平は意地悪です)
(そうかな?)
(はい)
(……やっぱり機嫌悪いだろ)
(あの事、もったいぶって教えてくれなかったからです)
(それはあとでズバリ言い当ててやるからさ)
(……はい、きっとです)

やがて私と浩平の視線が離れるのと同時に、今日最後の授業の終わりを告げるチャイムが教室内に流れた。



「……なにをそんなに急いでいるんですか」
「そうか?俺はいつもと同じように歩いてるぞ」
学校の帰り道……そう言った浩平の歩調は、明らかに普段より速く感じる。
「今日の浩平、なんだかおかしいです」
「そんなことないぞ。ただ早く茜とのデートを楽しみたいから急いでるだけだ」
「……やっぱり急いでたんですね」
そう言った私の横で、浩平が「ぐあっ」という声を上げた。

「それじゃ、4時にいつもの公園で待ち合わせでいいか?」
「……嫌です。3時半にしてください」
別れ際に浩平が待ち合わせ時間を訊いてきたので、私は少し意地悪な返答をした。
今からだと、急いで帰ってなんとか間に合うという時間……。
「さ、3時半か!?それはちょっと無理……い、いや、わかった。3時半だな?」
私はその浩平の言葉を訊いた時、何か奇妙なものを感じた。
どうも驚き方が大袈裟で……それに、浩平の足ならこの時間でも無理ということは無い筈……。
でも結局その事は、さして気にも留めなかった。
「……それでは、3時半に公園で待ってます」
そう言って、私は浩平と別れて家路へと歩を速め出した。その時……、

「茜!もし、万が一俺が遅れたとしても必ず行くから待っててくれよ!」

少し離れた所から投げ掛けられたらしいその浩平の言葉に、
私は他人が見てもはっきり分かる程ビクリと身体を震わせた。
「!……それはどういう……」
ぱっと振り返り、そう言いかけた私の声はしかし浩平には届かず、
ただ瞳には全速力で翔けて行く浩平の後ろ姿が小さく映るだけ。
「……事なんですか?浩平……」
その呟きは、髪を撫でて行く乾いた微風にさえ掻き消されてしまいそうだった……。

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つっこみ浩平:こら!なんだこの【中編】ってのは!
「(言うと思った……)前編に対して後編がえらく長くなりそうだったからバランス調整の為にね……」
つっこみ浩平:どーせ話数稼ぎの為だろう。
「ははは、何言ってんのかな〜浩平君。初心者が出し惜しみなんか出来るわけ無いでしょうが(^^;)」
つっこみ浩平:でも日数かかってる割にはなんか短くないか?
「まあ中編は繋ぎと思って頂きたいです」
つっこみ浩平:じゃあ後編はもう書けてんのか?
「大体半分くらいってとこかなぁ。あ、でもその前に皆さんへの感想書かなきゃね♪」
つっこみ浩平:だったらさっさとそれ(後編)を完成させんかぁーーーーーーーーい!!!!


済みません、そんなわけで3話分になってしまいました(^^;)。
伏線を張った(と自分では思っている)部分がうまく纏まらず、
後編が予想より長くなってしまったのが原因です。
なかなか大変なテーマを選んでしまったかな?と、後悔しまくり……。
とりあえず自分の思いだけは精一杯込めるつもりですが、はたして破綻なく纏まるのか?(爆死)

それでは〜