気がつけば、この世界に戻っていた。 どうしようか悩んだ結果、いったん家に戻ってみる。 「ただいま・・・」 誰もいないと思っていた家には、 「お帰りなさい」 由起子さんがいて、俺のことをすんなりと受け入れてくれた。 あの記憶は、いったい何だったのだろうか? あの世界で過ごした日々は、幻だったのか? それとも、今ここにいることが、幻なのか? それを、確かめる方法。 なによりも、誰よりも、真っ先に会いたい人の名前。 でも、もしあいつが俺のことを忘れていたら・・・。 全てが幻だとしたら・・・。 そんな恐ろしいことを考えながら夜を過ごした。 次の日、俺はある場所へと向かった。 その場所とは、学校の食堂。あいつと2度目に出会った場所。 「確か、ラーメンを背中にこぼしてきたんだよな・・・」 あの時のことを思い出しながら、澪のことを待つ。 学校の中の誰もかが、俺がいなかったことに疑問を感じていない。 まるで、当たり前の様に、俺のことを受け入れたので、澪の会いに行くのが怖くなって、ここでこうして待っている。 もし、全てが幻となっているのなら、このままあいつに会わなくても、良いような気もした。寂しいけど、澪の涙をみるのも辛いから・・・。 ちょっと、頑張りすぎ。もうすぐ、劇の本番だから、頑張らないといけない。 もっと、もっと練習しないと、みんなの足を引っ張ってしまう。 「もう着替える時間ないよ」 同じ部の子が、そう言って自分の姿を見ている。今日は学食で一緒にお昼を食べる約束だから、そろそろ行かないと、間に合わなくなる。 仕方ないので、練習のときに着た衣装のままで、学食に行った。 周りの視線がちょっと痛いけど、舞台の上だと思えば、ちょっとは大丈夫。 色々なことを頑張って、あの人が帰ってきたときに、凄いねって誉めてもらいたい。 ・・・ でも、 ・・・ 何でだろう? あの人は、学食のテーブルに座っていた。 私が待っていた時間は、何だったんだろう? 誰かを捜しているのか、あの人は落ち着きが無さそうだった。 でも、私のことには気づいてないみたい。 あの時と同じ状況。あの人は、座っていて、私は手にラーメンを持っている。 ちょっと考えたけど、意を決して背後にそっと忍び寄る。 ずっと、待ってたんだから、これくらい、しても良いよね? 心の中でそう呟いて、ラーメンの入った丼を、わざとらしく滑らす。あの人の頭の上に落ちるように・・・。 「もしかして、わざとやってないか?」 すぐ側に、澪の顔がある。 ううん ぎこちなく、首を振って否定しているけど、すぐに嘘をついているとわかった。 「これくらいは、大目に見るか・・・」 こうやって、澪が抱きついている現実。背中がもの凄く熱いけど、その熱さも、今までのことが幻じゃなかったと言うことを、俺に教えてくれる。 「服汚れるぞ」 ラーメンの汁を、体中に浴びている俺に抱きついているのだから、真っ白な服に、シミが出来てしまう。 『大丈夫なの』 「なにが?」 ・・・ 今度は、何も言わずに、俺のことを見つめてくる。 「俺に、新しいの買えっていうことか?」 うん どうやら、正解らしい。そろそろ、周りの視線も辛くなってきたし、抱きつくのを止めて欲しい。 「仕方ない。新しいやつ買ってやるから、そろそろ離れてくれないか?」 服を買いに行くという口実で、またデートの誘えばいい。 これからの時間を、今までの空白を埋める為にも、めいっぱい過ごさないといけないからな。 その時、先を越された告白を、もう一度やり直したい。今度こそ俺の方から・・・ 「・・・って、何でお前は俺がやろうとしたことを、先にするんだ!!」 澪は、離れる直前、俺の唇に軽くキスをした。それだけで、澪の気持ちは充分伝わって嬉しかったけど、なんか悔しかった。 『大好きなの』 スケッチブックに書かれた言葉。それ以上に、体で伝えてきた気持ち。今俺は、ここに戻ってきたと言うことを、体で感じていた。 --------------------------------- 今回は、久しぶりにONEのSSです(^^;;;; 今日で、SS書き始めて1年と言うことなので、ONESSに挑戦してみました(^^;; かなり急いで書いたので、雑になってしまいました(^^;;; 澪ENDは、謎の少女が語っているので、二人の視点と言うのをちょっと考えてみました(^^;; 1年過ぎて、少しはましなSSかけるようになったのか、疑問ですけどね(^^;; では、次回は鈴うたSSの続きであいましょう(^^/~~ http://www2u.biglobe.ne.jp/~palu2/