向日葵の笑顔 第2話  投稿者:パル


何で、こいつがここにいるのかわからなかった。でも、すぐ目の前にいるのは間違いなくすずだった。記憶の中にあるすずよりも、少しだけ大人びた感じだけど、理屈抜きですずだとわかる。
 「何で、こんな所にいるんだ?」
 「・・・帰ってきたんだよ。ここに」
 すずは、少し寂しそうな顔をしてそう答えた。
 「・・・お帰り」
 「うん」
 俺がそう言うと、嬉しそうに笑った。今まで、こだわっていた物を、自然に溶かしてしまうような笑顔。俺がすっと見たかったものがすぐ側にいる。
 「そう言えば、紫姉さんがお前のこと捜してたぞ」
 「あ、すずは看護婦さんになったんだよ」
 「見れば分かる」
 「ゆうちゃんの、お手伝いするからね」
 「お前がか?」
 「・・・ダメなの?」
 「失敗さえしなければ、それで良い。ここはいつも人手不足だからな」
 俺の手伝いをすると言ってくれたすず。これは、あの時の出来事を、目の前のすずも共有していて、あの時繋がった絆が、今も続いていると言うことの証だろうか?
 「とにかく、事務所に行こう」
 「うん」

 すずと二人で、向日葵の中を歩く。
 「ゆうちゃん、待って!」
 少し後ろを一生懸命歩いているすず。
 「遅くなると、紫姉さん怖いからな。急げ」
 嬉しいと思った。楽しいと感じている。
 こうやって、すずが側に来てくれたこと。
 こうして、一緒に歩くことだけでも、嬉しかった。

 「と言うわけで、中途半端な時期だけど、今日からここで一緒に働く仲間だ」
 紫姉さんは、そう言ってすずのことを紹介する。
 「取り合えず、児童病棟のサポート要員として働いてもらうから、そのつもりでいるように」
 「はい」
 ちなみに、児童病棟の担当医は、紫姉さんと、俺の二人だった。
 「一通りの説明は終わっているから、今日の残りの時間は桑原先生と一緒に病室をみてこい」
 「はい」
 「良いな、桑原先生。後のこと、よろしく頼むさね」
 「・・・はい」
 職員に対しての自己紹介が終わり、すずは俺の部下と言う形で配属された。ベテランの看護婦さんや、他の先生の中には、すずのことを覚えていた人がいたので、すんなりととけ込んでいた。
 「よろしくお願いします、ゆうちゃん」
 「その、ゆうちゃんと言うのは止めろ」
 「何で?」
 廊下を歩いているとき、この事だけはくぎを刺さねばと思っていたので注意する。
 「とにかくダメ。ここにいる間は、桑原先生と呼ぶように」
 「・・・」
 「他の場所なら、どれだけそう呼んでも文句は言わないから」
 少し元気の無くなったすずに対して、そう言った。俺の心の中に、すずに対する複雑な気持ちがあることを自覚しながら。
 会いに行けなかった時間。再会をためらっていた自分。すずの方から、ここに来てくれたからこうして一緒に歩けるけど、心の奥では、まだためらっている俺がいる。
 「じゃぁ、桑原先生。よろしくお願いします」
 「あぁ、最近は忙しいからな。覚悟しろよ」
 「うん」
 病室を回りながら、入院している子達にすずのことを紹介する。みんな、すずのことを、笑顔で受け入れてくれた。これはある意味凄いことだった。ここに入院している患者のほとんどが、長期入院で、あまり笑わない子達だから。
 中には、明日をも知れぬ身なのに、すずと笑って話している。少しだけ、すずに嫉妬を感じた。これは、俺には出来ないことだから・・・。

 「所で、お前の家はどこなんだ?」
 仕事が終わり、家に帰る。昨日まで宿直当番だったので、3日ぶりの帰宅だった。
 「すずは、一昨日引っ越しが終わったんだよ」
 「一人暮らしなのか?」
 「そうなんだよ」
 「お前に、そんなこと出来るのか?」
 「大丈夫だよ」
 「何で?」
 「すぐ側に、頼りになる人が住んでいるんだよ」
 もしかしたら、七海の家の近くかも知れない。紫先生もいるし、あの辺なら安心だ。
 七海の奴は、すずと過ごした時間は忘れているけど、ここにいるすずのことは知っている。
 「ここなんだよ」
 何気ない世間話や、今後の仕事上の注意をしながら歩いてたどり着いた場所。
 「本当に、ここなのか?」
 「嘘じゃないんだよ」
 「・・・」
 この場所は、確かに病院から近いし、なにより家賃が安くてそれなりに広いアパートだった。
 「引っ越そうかな・・・」
 「ゆうちゃん酷い」
 「嘘々、冗談だ」
 「うん、これからも、よろしくなんだよ、お隣さん」

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 あうあう(^^;;;
 ようやく第2話アップできました(^^;;;
 ゲーム後のすずなんですけど、違和感感じて、何度も書き直したんですけどね(^^;;
 結局そのまま強引に行くことにしました(^^;;
 次の話は、出来るだけ早い内にアップできるといいなと思いつつ、今回はこれで失礼します。

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