向日葵の笑顔(第1話)  投稿者:パル


 なんか久しぶりの投稿です(^^;;
 最初に一言、このSSは、鈴がうたう日のSSです
 すずEND後のと言うか、END間の物語です。
 すずネタバレ含んでますので、注意して下さい(^^;; 


 ふと振り返れば、あの懐かしい日々を思い出す。
 七海や蛍、岡田と佐久間、そして・・すず。
 あの懐かしい夏は、遙か過去の出来事だけど、今も俺の中で輝いていた。

 医者になる道を選んだ俺は、猛勉強を始めた。
 簡単になれる物ではない。元々努力という事をあきらめていた俺だけど、生まれ変わった気分で必死で勉強した。
 あの頃は、心の支えがあった。
 眠っているあいつのためにも、何か出来ることがある。何か頑張れることがある。
 そう信じて必死だった。

 何とか、地方の医大に合格できた俺は、住み慣れたこの街を離れた。
 「また、必ず帰って来るからな・・・」
 眠ったままの少女の唇に、いつものようにキスして、俺はこの街を出た。
 そして、4年。
 長い時間だった。成績的に遊ぶ余裕がなかった俺は、4年間必死だった。留年して余分な時間を過ごすわけにはいかなかったので、遊ぶ時間を惜しんで勉強に励んだ。
 その間、この街には帰ってこなかった。
 何度も、辛い事にぶつかって挫けそうになったけど、その度にあいつの笑顔を思い出し、あいつのぬくもりを側に感じて、頑張ることが出来た。
 姿は見えなかったけど、確かにいつもすずは側にいた。

 「え?目覚めたんですか?」
 この街に帰ってきた俺が最初に聞いたのは、すずが目覚めたという事だった。
 「3年前に、目覚めたさ」
 久しぶりにあった紫姉は、相変わらずの口調で話してくれた。
 「それで、今は何をしているのか知ってるんですか?」
 「社会復帰のために、一生懸命頑張ってるさな。入院している病院の場所、知りたいか?」
 そう紫姉に聞かれたとき、すぐに返事が出来なかった。
 この現実の存在しているすずにあうのが、正直怖かった。俺は、まだ研修生という身分だし、もしかしたら、すずは眠っている間のこと、覚えてないかもしれない。
 と言うよりも、眠っている間の幻だから、きっとすずは俺のことを知らない。実際にあっても、意味が無い様な気さえした。あの頃みたいに、現実から逃げているような気もしたけど、今の俺にはすずに会うだけの自信がなかった・・・。

 「はぁ・・・」
 いつもの昼休み。施設の前にある広場で、休憩をしていた。
 「なんか、時間の経つのが早い気がするな・・・」
 大学を卒業して、2年の月日が流れていた。その間、医者として色々な経験を積んできた。それでも、まだすずと会う決心はついていない。
 今となっては、会う必要はないと、思うときもある。俺を支えていてくれたすずは確かに存在して、今も挫けそうなときに、思い出の中から俺を助けに来てくれる。それで、充分だと思った。
 今の俺は、色々な患者を抱えて、それどころじゃない。
 「・・・違うな」
 その事は、自分でも理解していた。そう、結局俺はまだ逃げている。悲しいこと、辛いこと、この場所はそれが多すぎて、昔の俺に少しずつ戻っているのが解る。
 一生懸命手を尽くしても、結局は失われていく多くの命。あの時の猫達とは違い、意志を通じ合えた人との永遠の別れは、思っていたよりも辛くて、耐えることが難しいことだった。
 にゃーー
 近くで、猫の鳴き声が聞こえた。
 「稲造?」
 その鳴き声は、妙に馴染みのある声で、長い間一緒に過ごした愛猫の鳴き声に似ていた。
 稲造は、俺が引っ越したとき、七海に預けた。そして俺が再びこの街に戻ってきたとき、新しいアパートの住猫として、一緒に過ごしていた。
 しかし、ここ数日姿を消していた。稲造ももう歳なので、このままお別れかとある程度意識していた。
 「稲造なのか?」
 声のした方に向かった歩き出す。この季節、広場に近くにはでっかい向日葵が咲き誇り、見通しが悪くなっている。
 「こら、祐児!!」
 少し歩き出したところで、後ろから呼び止められた。
 「紫姉・・・」
 「勤務中は、紫先生と呼べといつも言ってるどろ」
 そう言いながら、鉄拳が飛んでくる。
 「痛い!!」
 「今朝のミーティングで言ったこと忘れてないか?」
 「????」
 げし!!
 考え込んだ俺に対し、二度目の鉄拳。
 「思い出したか?」
 「・・・今のショックで、忘れた」
 「どれ、もう一度・・・・」
 「嘘嘘!!新人の看護婦が来るって話だろ?」
 「ちっ・・・」
 紫姉は、残念そうに、振り上げた拳をゆっくりとおろす。
 「その新人なんだけど、見かけなかったか?」
 「どうかしたんですか?」
 「行方不明」
 「はぁ?」
 「各施設の説明終わって、ある人を探しに行ったまま、行方不明になった」
 「この場所で?」
 「勿論さ」
 「・・・一体どんな看護婦だ?」
 「さぁな。とにかく、見かけたら事務室まで連れてこい」
 「了解。じゃぁ、その辺捜してみます」
 「頼むさ」
 そう言いながら、紫姉は施設の中に向かっていった。
 「そう言えば、さっきの猫は・・・」
 新人看護婦の事も気になったけど、それよりも稲造らしき猫の方が気になる。
 「稲造?」
 向日葵畑の中を、あてもなく歩く。
 にゃーー
 鳴き声が再び聞こえた。結構近い。
 「あ、稲造!!」
 もう年寄り猫で、足取りも遅く、よろよろと歩く稲造。
 「何だ、最後のお別れに来たのか?」
 そんな予感がした。
 にゃーー
 稲造は、俺と目が合うと、ついてこいと言う感じで歩き出した。
 「何かあるのか?」
 黙ったまま、稲造の後をついて向日葵畑の中を歩く。そして、畑の中にある小さな空き地に出たとき、そこにそいつはいた。
 「え?」
 その場所には、誰かが倒れていた。服装からして、さっき紫姉が言っていた新人看護婦だろう。
 「大丈夫か?」
 俺は慌てて駆け寄る。
 「すーー・・・」
 え?
 その看護婦は、その場所で熟睡していた。
 「おい?大丈夫か?」
 軽く揺さぶって、起こそうと努力してみる。
 「すー・・・、すー・・・」
 駄目だ、起きようとしない。
 「 おい、起きろ!こんな所で寝てると風邪ひくぞ!」
 そう言う問題じゃない気もするが、他に言うべき言葉が見つからない。
 「・・・ん?」
 お、どうやら目が覚めたみたいだ。
 「・・・・おはよう・・・・」
 だけど、まだ寝ぼけているみたいだ。
 「何でこんな所で寝てたんだ?」
 俺は、疑問に思ったことを質問してみた。
 「ん?・・・・おはようなんだよ」
 どき!!
 何故か、胸が熱くなった。
 「おはようなんだよ」
 どきどき・・・
 鼓動が早くなる。
 「朝の挨拶は、おはようなんだよ」
 「今は、朝じゃないぞ」
 「・・・うん、でも、おはようなんだよ・・・・ゆうちゃん」

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 で、言い訳一つ(^^;;
 実はこのSS、自分のHPに一月以上前から書きかけになっていたものです(^^;;
 続き書き始める前に、こっちに投稿してみました(^^;;
 続きは、出来るだけ早い内に書く予定です(^^;
 では、今回はこの辺で失礼します(^^
http://www2u.biglobe.ne.jp/~palu2/