ねぇ、私達なにやってるの?」
ズズ、ズズズズ
「ラーメンを食ってるつもりだけど?」
「そうじゃなくて!」
「何だ?お前ここのラーメン好きだろ?」
「そりゃ好きだけど・・・」
「怒鳴ってばかりいると、ラーメン伸びるぞ」
ズズズズ
私の目の前に座っている男、折原浩平は、昔から全然進歩してなかった。
あの時、私の中の止まった時間が動き出した日から、数年の年月が流れている。
残酷だった一年は、長すぎたけど、折原と過ごした数年は一瞬だった。
「今日が、なんの日か知ってるの?」
お互い、社会人になって別々の場所で仕事をしている。今日は私の誕生日。毎年一応それなりにお祝いしてくれるので、今日もデートの約束を折原からの方からしてきたのが嬉しかった。
「勿論、知ってる。だから、今日はオレのおごりだ」
「せこいよ・・・」
「仕方ない事だ。今月は財布の中身が寂しくてな」
「彼女の誕生日に奮発できるぐらいのお金は残しておきなさいよ」
「実は、プレゼント買う金もなかったんだ」
「はぁ・・・・」
私は、呆れて小さな溜息をついた。
「とにかく、オレは生まれて一世一代の大勝負のために大金を投資してしまった。プレゼントは、またの機会と言うことにしてくれ」
「一体、何に使ったのよ?」
「ふっ・・・。男には、やらねばならないことがあるんだよ」
「あんたねぇ・・・」
美味しそうにラーメンを食べている折原を見ながら、なんだか少し虚しくなった。
「ごちそうさま」
お互い、ラーメンを食べ終わったので、店から出る。
「少し、歩こうか?」
珍しく真剣な調子で折原が話しかけてくる。こう言うときの折原は何か企んでいる。長年のつきあいから、そんな事が解る。
「良いわよ」
折原が何か企んでいても、私は平気だった。それはそれで、楽しい事だから・・・。
「なぁ留美」
「ん?」
さっきのラーメン屋から少しあるいた場所にある広場。
「踊ろうか?」
「へ?」
突然、折原が変なことを言ってくる。
「あっ!」
でも、その言葉を聞いたとき、私は忘れていた大切な思い出を思い出した。
さっき一緒にいたラーメン屋、そしてこの広場・・・。
あの時の思い出の場所・・・。
「やっぱ、踊るの止め・・・」
折原は、私のすぐ側まで来て立ち止まる。
「まぁ、何だ、折原浩平、一世一代の大勝負だ」
そう言いながら、私の掌に小さな箱を置く。
「誕生日プレゼント?」
「・・・違う」
「開けて良いの?」
「ちょっと、待って欲しい」
そう言って、折原は大きく深呼吸する。
「結婚しよう、留美」
「え?」
「そ、その箱開けていいぞ」
「へ?え?え?」
頭の中が、真っ白になっている。それでも、箱の中身が気になって、振るえる手を落ち着かせながら、ゆっくりと中を見た。
「指輪・・・」
「俗に言う、給料3ヶ月分の汗と涙の結晶だ」
「もしかして、このせいで今貧乏なの?」
「それもあるけど、もう一つ別の事に使った」
「何に使ったの?」
「長森が、結婚するみたいだから、そのお祝い」
「え!私、そんな事聞いてない」
長森さんとも、ずっと友達としてつき合ってきた。最近彼と上手く行っているという話は聞いていたけど、結婚するなんて初耳だった。
「オレも、今日知った。おかげで、今日のディナー費用、全部ぱぁ」
「別に、今日すぐに買わなくても良いじゃない・・・。私と一緒に買いに行こうとか思わなかったの?」
「それも考えたけどな。一人で選んだものを、長森には贈りたかったんだ」
「・・・」
「別に、お祝いは一つじゃなくても良いんだから、今度一緒に探しに行くというのもあるぞ」
「そうね・・・。その後で、長森さんからお祝い貰うことになりそうだけどね」
「何で?」
「私達も、結婚するんでしょ?」
「・・・」
「・・・」
「あぁ」
今日は、私の誕生日。生まれてから何度も繰り返してきた特別な記念日。
特別な、たった一つの記念日。
でも、来年からはこの日は、私の誕生日と、折原からプロポーズされた日という、二つの記念日。
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トレカのプロフィールだと、8月8日は七瀬留美の誕生日みたいなので、それにあわせてSS書いてみました(^^;;
急いで書いた+留美苦手と言うのもあって、七瀬らしくないかもしれません(^^;;
自分のSSに感想くれた方々、ありがとうございます。
今回もちょっと感想書けなかったです(^^;;
次こそは...(^^;;
では、最後に「七瀬留美」誕生日おめでとう(^^;;http://www2u.biglobe.ne.jp/~palu2/