ドサッ
校舎から出ようとしたオレの背中に、何かが抱きついてきた。
「誰だ?」
オレはその正体を確かめようと、身体を左右に振って背中に抱きついてきたものを振り払おうとした。
「・・・・」
「なかなか、しぶといな!」
「・・・・」
何となく、その正体が誰なのか見当はついていた。こんな事をするのは、澪しかいない。
「くっ、今日の澪はなかなかしぶとい!」
オレがいくら振り払おうとしても、澪は背中に抱きついたままだった。
「えい、この!!」
「多分、浩平君」
「え?」
俺達の後ろから、声が聞こえた。この声は、みさき先輩だろう。澪が邪魔をするから、振り向くことが出来なかった。
「みさき先輩も今から帰るのか?」
この際、澪は無視することにした。後で拗ねるかもしれないけど、パフェの一つでもおごれば機嫌をなおすだろう。
「そうだよ。浩平君も帰るところ?」
「そのつもりだ」
「じゃぁ、途中まで一緒に帰ろう」
みさき先輩から誘ってくるのは珍しかった。もっとも、一緒に帰ると言っても、先輩の家はすぐそこだから、あんまり一緒に帰るという気分じゃない。
「みさき先輩、今日は深山さんの手伝いはしなくて良いのか?」
「雪ちゃん、今日は風邪でお休みなんだよ」
そんな事を話しながら、歩き出す。
ずる、ずる・・・
オレの、背中にしがみついている澪を引きずったまま歩く。
「お前、また太ったか?」
「酷いよ浩平君、突然太ったか?なんて言うなんて」
「あ、みさき先輩に言ったんじゃない。澪がさっきから背中にしがみついてるんだ」
「澪ちゃんいるの?」
「丁度、みさき先輩の前にいるはずだけどな」
さっきから、みさき先輩は俺達の少し後ろを歩いていた。
ずる、ずる・・・
「やっぱり、重い・・・」
なんか、疲れてきた。身体から、力が抜けている感じがする・・・。
その時、オレの中で忌まわしい記憶が蘇った。
前にも、こんな事があった。でも、今回はすぐ側にみさき先輩がいる。
「どうかしたの?」
「・・・何でも無い」
そう答えて、周りを見たとき、あることに気づいた。
「え?」
かなり歩いたはずだけど、まだ後ろに校舎がハッキリ見える場所にいた。それに、みさき先輩の家は、もう通り過ぎていた・・・・。
「みさき先輩だよな?」
そう言えば、、今日校門で出会ったときから、みさき先輩の声しか聞いてない。
「・・・」
返事はない。
「澪?」
背中にいるはずの澪に呼びかけてみる。
「・・・」
当然返事はない。でも、腕をぎゅっと締める動作をした。
「ほ・・・」
それが返事だと思い、安心する。
「なに馬鹿なこと思ってるんだろうな・・・」
自分の中の恐怖を否定する為に、そっと澪の手を握った。
「・・・」
その瞬間、頭の中で、何かが壊れた気がした。
「み、み、みっ、み、澪?」
触れた手は、もの凄く冷たくて、硬かった。
オレを包み込んでいた手に力が入る、まるで締め付けるみたいだった。
「ひっっっっっ!!」
オレは、必死に抵抗してそれを振りほどこうとする。
「駄目だよ浩平君」
すぐ側でみさき先輩の声。
「おとなしくしてないと」
優しい感じの声。でもそれは既にみさき先輩の声ではなかった。
「ぎゃぁぁっぁああ!!」
オレは悲鳴を上げて、その場所に倒れ込んでしまった。
そして、オレの意識はここで途切れてしまい、この後何があったのか、知ることはなかった・・・。
<完>
------------------------------------------
こんばんは、パルというものです(^^;;
今回は鈴うたではなく久しぶりのONESSです(^^;;
夏と言うことで、怪談風のSSに挑戦しました(^^;;
おんぶお化けの正体は、謎と言うことになってます(^^;;
正体は、あの子なんですけどね(^^;;
すいません、今回も感想書けないです(^^;;
ゆっくりとSS読んで感想書く時間が欲しい今日この頃(^^;;http://www2u.biglobe.ne.jp/~palu2/