石に想いを 投稿者: パル
 いくつもの偶然が重なって、繭と出会えた。
 もしあの時、この場所を通らなかったら、繭とこんな風に歩くなんて事にはならなかっただろう。
 「みゅ?」
 オレと腕を組んでいる繭。雑木林の中を、ゆっくりと歩いてる。目的地はもう少し先だった。
 そう言えば、みゅを埋葬したあとで、一緒にここに来たとき、繭は大きなミスをしていたんだよな・・・。

 「で、目印になる物置いたのか?」
 あの時は、長森が一緒だった。
 「みゅ?」
 「みゅ?じゃなくて、みゅーを埋めた場所に、ちゃんと目印になる物を置いたのかと聞いたんだ」
 「・・・」
 「もしかして、忘れたの?」
 今にも泣き出しそうな繭を見て、長森がなだめる。
 「大丈夫、ちゃんと捜せばすぐ見つかるよ」
 「さがすっていっても、どこを捜せば良いんだ?」
 「ふぇ・・・」
 「浩平!」
 「はぁ、泣きたいのはこっちだぞ、まったく・・・」
 俺達は、あやふやな記憶を頼りに、みゅーを埋めた場所を探した。日にちがそんなに経っていなかったので、何か掘ったあとを一生懸命さがした。
 「まったく・・・」
 10分ぐらいった頃、疲れたオレが何気なく座った場所。そのすぐ隣に、それはあった。
 「マフラー?」
 地面から、その端っこが見えていた。間違いなく、みゅーを埋葬したときに一緒に埋めたマフラーだった。
 「長森!繭!あったぞ!」
 大声で二人を呼ぶ。
 「本当、浩平!」
 「間違いない!」
 そして、俺達は目印になりそうな石を捜して、その場所に置いた。
 「いい繭。この石は、みゅーがここに眠ってるよっていう目印なの」
 「うん・・・」
 「こうやっておけば、忘れてもちゃんと思い出せるでしょ?」
 「うん」
 「良いこと言うな、長森」
 「これからは、ちゃんとお墓参りしようね」
 「みゅー」
 元気良くこたえる繭。正直この時は繭とこんな関係になるとは思ってもいなかった。

 「ねぇ、こっちじゃなかった?」
 俺達の少し後ろを歩いている奴が、話しかけてくる。
 「お前、来たことがあるのか?」
 「当たり前でしょ。繭の親友だからね」
 「今日は二人でお祝いするつもりだっったんだぞ」
 「いいでしょ、みゅーのお墓参りぐらい一緒に来たって」
 「また、邪魔するつもりだろ?」
 「さぁ?」
 こいつは、みあと言って、自称繭の親友だ。もっとも、繭もそう思っているみたいだ。
 オレにとっては繭との時間の邪魔をする小悪魔みたいな奴だった。
 「だって、繭ったら毎週この場所に来てたんだよ・・・」
 「え?」
 「先輩が戻ってくるまで、毎週この場所で繭、泣いていたんだよ・・・」
 初耳だった。
 「めっ!」
 繭が、少し照れながら、抗議のつもりかみあの口元をふさぐ。
 「内緒だったのに・・・」
 顔を真っ赤にして、俯いてしまう。繭がそこまでオレのことを心配してくてたなんて、思いもしなかった。
 「もしかして、これって?」
 オレがその場所で見つけた物。みゅーの為の石の隣に、別の石が置いてあった。
 「・・・」
 「先輩だって」
 みあが、からかうようにそう言った。
 「先輩のことを忘れないように、この場所に目印を置いたんだって」
 「みゅー・・・・」
 「どうします?」
 「何が?」
 「先輩がちゃんと繭の所に戻ってきたから、この石をどかします?」
 「オレに聞いてるのか?」
 「勿論です」
 みあは、何か企んでいるようだった。企むと言うよりも、ちょっと違うかもしれないけど、何か考えがあるみたいだった。
 「止めておこう」
 「なんで?」
 「オレが、繭に心配をかけたと言うことを忘れないための目印にする」
 「・・・・」
 その言葉を聞いて、繭は更に顔を赤くして照れている。
 「はぁ、つまんない」
 「何がだ?」
 みあの意外な言葉に、ちょっと驚く。
 「だって、先輩がこの石どかしたら、今日は失格と言って繭の事連れ出そうと思ってたけど、先輩、合格するんだもん」
 「合格?」
 「私、繭がここで泣いてるの見てたから、この先輩の石も、大事にしたかったの」
 「そっか・・・」
 「そうだよ。繭を悲しませた分、今日はしっかりと繭に奉仕しなさいよ」
 「なんか、嫌な言い方だな」
 「いいじゃない。繭」
 「みゅ?」
 「これ、プレゼント」
 そう言って、何かが入った包みを手渡す。
 「私は、これで帰るから」
 そう言って、みあは立ち去る。
 「何を貰ったんだ?」
 「えーっとね・・」
 包みを開けると、フェレットのぬいぐるみが入っていた。しかもそれは・・・。
 「仕方ないか・・・」
 繭の方を見ながら話しかける。繭も同じ気持ちだろう。視線が合うと、無言で頷いてくれた。
 みあのプレゼントは。オレが繭に渡した物と同じだった。
 「おー−−い!」
 「みゅーーー!」
 二人で急いで追いかける。結局この日は三人で遊び歩いた。別れ際、繭が一言
 「今日は嬉しかったよ」
 と言ってくれたから、たまにはこんな日もいいかなと、素直に思えた。

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 トレカのプロフィールによると、5月15日は繭の誕生日らしいので、それにちなんだSSを書いてみました。
 みあが、浩平のことをなんと呼ぶのか結構悩んでしまい、結局「先輩」としてしまいました。実際、どうしたらみあらしいのか、他の人の意見も聞いてみたいきもします。
 あと、一つお詫びを。どうも自分ここに提示したメールアドレスが間違っておりました。最初、間違えて直したのに、直したのもミスっていたという間抜けな事をしていました。もし、今まで自分にメールだそうとして送り返されたと言う事があったら、大変申し訳ありませんでした。以後このようなことが無いよう気をつけます。


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