スケッチブックのいらない日 投稿者: パル
 お気に入りのリボンを結ぶ。今日は特別な日・・・。
 いつも持っているスケッチブックを机に置いて、少し勇気が必要だったけど、家から出た。

 「今日は、さすがに遅刻しなかったな」
 大好きな人。その人の背中に抱きつく。
  うん
 大きく頷く。今日は、一日スケッチブック無しで街を歩く。そう言う約束の日だった。
 「まず何処に行こうか?」
 頭の中で、色々と行きたいところを思い描く。映画館、喫茶店、商店街、遊園地、動物園・・・。
 「よし、取り合えず、商店街に行くか?」
  うん
 私も、そこに行きたいと思っていた。
 「ほら」
 歩き始めてすぐに、私に向かって手を差し出してくる。
 ???
 「こう言うときは、手を繋ぐもんだぞ」
 顔を赤くしながら、手を差し出している。
  うん

 手を繋いで街を歩く。少し恥ずかしい気もするけど、なんだか楽しい。
 手から伝わるぬくもりが、言葉じゃない言葉を伝えてくれる。
 色々と、話しかけてくれる。その度に、私は身体全体を使って返事をしている。
 時には、大きな笑顔で答える。時には、小さく微笑む。
 繋いだ手をぎゅっと握ったり、大きく振り回したりした。
 いつもと違う言葉・・・。それでもちゃんと、想いが伝わっているのがうれしかった。

 「楽しかったか?」
 空はもう星がきらめきだしていた。さすがに、私達は手を繋いでいなかった。
  うん
 笑顔でこたえる。
 「たまにはこう言うのも良いかな」
  うん
 いつもなら、スケッチブックを抱えている。
 だから今みたいに、好きな人と腕を組んで歩くなんて、思いつかなかった。
 楽しい時間。それもそろそろ終わりに近づいている。
 
 「なぁ、澪」
  ん?
 「今日一日、不便じゃなかったか?」
  え?
 「俺の我が儘で、スケッチブック無しのデート企画したけど、辛くなかったか?」
 ・・・。もし、私がそう思っていたら、今みたいに腕を組んで歩いたりはしない。
 抗議の意味を含めて、掴んでいた腕をぎゅっと強く抱いた。
 「・・・。そうか、変なこと聞いて悪かったな」
 確かに、言葉にしないと分からない事もある。でも今日は、身体全体で、言葉を伝えた。
 お話ししたいこともあったけど、それを忘れるぐらい楽しかった。
  少し、考えてから行動に移る。
 「え?」
 何か言いかけた口元めがけてキスをする。
 「また、お前に先を越されたな・・・」
 照れながら苦笑い。
 
 この後、家に着くまでは何も言わなかった。だた腕を組んで歩いているだけだった。
 それでも、沢山お話ししたような、そんな気分になれた。
 最初は正直不安だった。でも、たまにはこんな日も良いかなと思う。
 だって、好きな人と一緒じゃないと、こんなに甘えた一日なんで、過ごせないから・・・。
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 こんばんわ、パルと言います。新しい人も結構増えましたので、はじめましてと言った方が良いかもしれませんけどね(^^;;

 一応澪視点のSSですけど、澪らしくないかも・・・。
 本当は、アイコンタクトと言う会話手段(?)も組み入れたかったんですけど、出来ませんでした。
 浩平と澪の会話。スケッチブック無しでも結構通じる気がするのは自分だけでしょうか?


 

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