おんぶおばけ 投稿者: パル
 「おや?」
 目を開けると、辺りは薄暗かった。
 「・・・」
 辺りを見る。どうやら教室のようだ。
 「またやったのか・・・」
 授業中居眠りをして、そのまま夜になってしまったみたいだった。
 「長森の奴め、起こしてくれてもいいのに・・・」
 ぶつぶつと文句を言いながら帰る準備をする。時計は、8時を少し過ぎたところをさしている。
 「もう校内にいるのは、俺だけだろうな・・・」
 そんなことを思いながら、玄関を出る。もっとも、正面玄関は既に施錠されていて、裏口からこっそりと出た。
 「しかし、暖かくなったよな〜」
 背伸びをしながら外の空気を吸い込む。
 
 ガシッ!

 突然、何かが俺の後ろから捕まってきた。
 「何だ!」
 俺は驚いて、それを振りほどこうとする。右に、左に、激しく動いて振りほどこうとしたが、俺の腰辺りにしがみついているそれは、なかなか離れない。
 「!」
 そう言えば、前にも同じ様なことがあった。すると、これは澪か?
 「澪なのか?」
 俺は聞いてみたが、リアクションはない。後ろからしがみついているだけで、決してその手を離そうとしない。
 「澪だろ?」
 俺は、それを引きずりながら歩き始めた。澪なら、こうやって歩いている内に離れるだろう。
 「何かあったのか?また忘れ物か?」
 ずるずると、引きずりながら歩いている。何度か話しかけても、返事はない。
 「いい加減にしないと、怒るぞ?」
 かれこれ、200メートルは歩いたはずだ。でも、澪はその手を離さない。
 「う〜ん、お前太ったか?」
 なんか、歩くのが、辛い。気のせいか、澪の体重が増えているような感じがする。
 「みさき先輩につられて、大食いなんかするから太るんだぞ」
 もの凄く、辛い。ほんの少しの距離を歩いただけのはずなのに、体力がどんどん減っているような気がする。
 「なぁ、いい加減自分で歩こうな?」
 今度は、優しく話しかける。ここまでずっと、澪を引きずって歩いたことになる。
 「忘れ物したなら、一緒に取りに行ってやるから」
 両手で俺にしがみついているのだから、当然スケッチブックを持っていない。
 「また、あれを忘れたのか?」
 仕方ない奴だ・・・。
 「はぁ・・・、はぁ・・・・」
 何だ?これは、俺はどうなったんだ?身体が、もの凄く重い・・・。
 「ふぅ。ふぅ・・・」
 取り合えず、少し休もう。俺は足を止める。
 「浩平?」
 誰かの声。俺は顔を上げる。そこには茜と、そのおさげにしがみついている澪がいた。
 その時、俺にのしかかっていた重さが消えた。そうか、澪がそっちに行ったので軽くなったのか。
 「何をしてるのですか?」
 「俺のことか?」
 「はい」
 「何って、家に帰る途中だ」
 「でも、何か変でしたよ」
 「そりゃそうだろう、ずっと澪を引きずってたんだ」
 「え?」
 「学校からずっとしがみついてたのお前だろ?」
 俺は澪に話を振ってみた。
  ほえ?
 と言った感じで澪は俺のことを見る。
 「澪は、私達とずっと一緒でしたよ」
 「私達?」
 「はい、さっきまで、詩子もいましたから」
 「ちょっと待て、じゃぁ俺が引きずっていたのは何だ?」
 なんか、寒気がした。確かに、俺の背中に誰かいた。俺を抱きかかえるように、しがみついていた手をこの目でハッキリ見た。
 「どうかしましたか?」
 俺は、恐る恐る後ろを見る。当然のように誰もいない・・・。
 「何でもない・・・」
 俺は自分の体験したことを信じたくなかった。でも・・・
 「これは何です?」
 茜が指さしたもの、それは何かを引きずった様な跡。そしてそれは、学校まで続いていた・・・。


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 こんばんは、パルという者です。今回は季節はずれの恐い話です(笑)
 あまり、怪談という雰囲気ではないかもしれませんけどね。たまには、違う系統の話を書いてみたいと思ってこれを書きました。
 細かい設定とかに、かなり無理があるかもしれませんけど、出来れば気にしないで下さい。
 浩平の背中にしがみついていたのが何かは、謎です・・・

 自分のSSの感想書いてくれた方々、ありがとうございます。
 今回、感想書けませんでした申し訳ないです。
 それでは、この辺で失礼します!

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