「みさき、手紙きてるわよ」
「はーい」
母から私は一通の手紙を受け取った。
「あれ?」
いつもなら、音読してくれる母が、手紙を私に手渡しただけで、読んでくれない。
「うー、これじゃ読めないよ」
私が文句を言うと
「これは、みさきの為だけに来た手紙だから読めるはずよ」
と、嬉しそうに言った。
「私だけ?」
そう呟きながら、手紙を触った。
「あ!!」
確かに、これは私に読めるように書いてある手紙。浩平君からの手紙だった。年賀状以来の、点字での手紙だった。
「・・・・」
「なんて書いてあるの?」
隣にいた母が、聞いてきた。
「内緒だと、言っておくよ」
顔を真っ赤にしながら、私をそう言うと、逃げるように自分の部屋へと駆け込んだ。
「もう、こんな事お母さんに言えるわけなじゃない・・・」
もう一度手紙を読んでみる。
”大好きなみさき先輩へ。明日一緒に出かけよう。先輩の家のまで迎えに行きます。時間は昼頃行きます。 折原 浩平”
少し読みづらいけど、一生懸命私のためにこの手紙を書いてくれた浩平君の優しさが伝わってくる。
「最初に、大好きだなんて言われると、照れるよ・・・」
もう一度その部分を触れてみる。そう言えば、手紙で好きだなんて言われたのは、初めてかな?だから、これは、私が最初に貰ったラブレターだね。
自分でそう考えると、また照れてきた。
そして次の日。約束通り浩平君は私を迎えにきてくれた。色々なところを歩いて、春が近づいてくるのを身体で感じて、楽しい時間を浩平君と一緒に過ごした。
「はい、先輩」
別れ際、浩平君が小さな包みを私にくれた。
「何?」
「今日は、ホワイトデーだろ?先輩前に化粧品が欲しいって言っていたから、それをプレゼント」
「ありがとう」
でもね、私は化粧した自分の姿を見ることが出来ないんだよ。だから、欲しいのは本当だけど、少しだけ喜べないな。
「あれ?」
「気に入ってもらえるといいけど」
私の手が触れているもの。確かに化粧品だと思う。でも、口紅とか、コンパクトではないと思う。小さな、ガラスのような感触。蓋があって、これって・・・。
「香水?」
「正解。先輩が気に入るか、不安だけどな」
嬉しかった・・・。浩平君は、ちゃんと私のこと考えてくれるんだ。
「あのね、凄く嬉しい・・・」
「おいおい、何も泣かなくても良いだろ?」
浩平君の声が慌てている。私の頬を、涙が流れているのがわかる。
「だって、昨日から嬉しいことが続いたから」
「昨日から?」
「あの手紙、私が始めて貰ったラブレターだよ。この香水も、始めての私が使える化粧品なんだよ」
ずっと、ずっと、憧れていたこと。だから、本当に嬉しかった。
「まぁ、これだけ喜んでくれると、こっちも嬉しいな」
浩平君の声が照れている。
「ありがとう」
私は、自分の姿を見る事が出来ないけど、今の自分は最高の笑顔だったと思う。
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こんばんは、パルという者です。一応ホワイトデーのSSのつもりなんですけど、あまり関係ない話しになってしまいました・・・。
アイデアを提供してくれたTOMさん、感謝してます。
それでは、失礼いたします