今日はデートの日。お気に入りのリボンをつけて、私は家を出た。
いつもの待ち合わせの公園。彼はいつもの場所に座っていた。
「遅いぞ!」
彼の背中に抱きついて挨拶をする。体に伝わってくるぬくもりが暖かくて心地よかった。
「今日は、どうする?」
穏やかな時間。彼一緒にいられる大好きな時間。一緒に街を歩いて、買い物をして、食事をする。楽しい時間だった。
「・・・・」
それは喫茶店でのことだった。私がいつものようにパフェを食べていると、彼がなんだかいつもとは違った表情をしているのに気づいた。
いつもなら、私の顔を見てにこにこしているか、半分あきれた顔をしている。私は、そんな彼の顔を見るのが好きだった。
でも、今日は違う。なんだか難しそうな顔をしている。何かあったのかな?
『どうかしたの?』
私が聞いても。
「何でもない」
と、ただ答えるだけだった。
穏やかな、日曜日の喫茶店。私達の周りに、大勢のカップルがいて、楽しそうにお喋りをしている。もしかしたら、私とお喋りが出来ないので退屈なのかもしれない。私が、お話しできないので、つまらない思いをしているのかもしれない・・・。
「どうかしたか?」
彼が聞いてきた。私は、大好きなパフェなのに、これ以上食べる気が起きなかった。
『あけるの』
残ってしまったパフェを彼にあげようとした。いつもなら、仕方ないと文句を言いながら、きちんと食べてくれる。でも今日は、結局食べてくれなかった。やっぱり、私といるのがつまらないのかな?
私は、悲しくなってきた。彼だけは、他の人とは違うと思っていたけど、そうじゃなかったのかもしれない。私は残っていたパフェを大急ぎで食べて、喫茶店から飛び出してしまった。
「ちょっと、待つんだ澪!」
後ろから、私を呼ぶ声が聞こえる。でも、私は振り向かずに走り続けた。
ここは、私に好きな場所だった。彼と始めて会った公園。自分から逃げ出したのに、ここにいれば彼が来てくれるような気がした。そして、その通り彼はやって来た。
「いったいどうしたんだ?」
『つまらないの』
「何が?」
私は彼を指さした。
「俺がつまらないのか?」
私は首を横に振る。
『私がお話しできなくて、つまらないと思ってるの』
と、スケッチブックに書いた。
「俺がか?」
今度は首を縦に振る。
「馬鹿なことを言うな!俺は一度もそんなことを思ったことはないぞ。一生懸命なお前を見ているのは楽しいからな」
『喫茶店で怒ってたの。パフェ食べてくれなかったの』
「あれは・・・」
何か言いにくそうだった。
「ふぅ、それで、俺が怒ってると思って逃げ出したのか?」
ちょっと違う。彼は、そんなこと考える人じゃないの知ってたのに、私の方が勘違いして逃げ出したのだ。
「お前の前で、あんまりみっともないこと言いたくないけど・・・。実はな」
何だろう?凄く真剣な顔で私に話しかけてきた。
「虫歯が痛い」
ほぇ?
「朝から、奥歯が痛くて、我慢してたんだ。パフェなんか食べたら染みるから、断ったんだけど・・・」
彼は、私の目をまっすぐ見てそう言っている。だんだん顔が近づいてくる。
そして、彼の唇が私の唇に触れた。そのまま少しの間キスを交わす。
「お前、慌てて食べたから、口の周りにパフェがついてたぞ・・・。恥ずかしい奴だな。取り合えず、パフェ美味しかったぞ」
こんな所で、突然キスをする方のがもっと恥ずかしいのに・・・。
私の、小さな勘違いだったけど、もっと彼のことを信じよう。大好きな人のことはきちんと理解しようと、そう強く思った。
余談ですが、嫌がる彼を歯医者に無理矢理連れていったことは、他の人には内緒です。
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これは、一応澪SSです。
HPとか作ってたら、感想書けなくなってしまいました。すいません。
では今回はこれにて失礼します・・・。
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