第4話 ブランコに揺られて
懐かしい公園。今でも、たまにブランコに揺られることがある。
泣きたいとき、辛いとき。私はここでブランコに揺られる。
そうすれば、あの時みたいに、私にとって大切な人が声をかけてくれるかもしれない・・・。ここは、そんな場所だった。
その公園のとなりに、目的のお寺はあった。お姉さんの案内で、先輩の姿を探そうとしたけど、えんちゃんの方が先に先輩を見つけた。まるで、お墓の場所を知っているみたいだった。
「浩平・・・」
お姉さんが、先輩の後ろから声をかけた。
「・・・、茜か・・・。来なくて良いと言っただろ?」
「泣いているの、見たくないからですか?」
「・・・、あぁ」
お姉さんの言うとおり、先輩の目は少し赤かった。
「その気持ち、わかります。でも、来てしまいましたから・・・」
「ありがとな」
そんな、二人のやりとりを、私とえんちゃんは後ろから見ていた。
「やっぱり、そうだったんだ・・・」
??
えんちゃんが、何か呟く。
「折原君!」
「おや?何で、お前達までいるんだ?」
「少し、話があるけど、いい?」
???
「あぁ・・・」
先輩も、なんだかわからずに、返事をした。取り合えず、私達は簡単にお参りを済ませて、思い出の公園へと移動した。
えんちゃんと先輩は、少し離れた所で何か話している。
「澪の家は、この近くですか?」
お姉さんが、私に話しかけてきた。そう言えば、お姉さんは私の家に来たことがない。
”そうなの”
機会があれば、今度招待しようと思う。
「確か、浩平も昔この辺に住んでいた見たいです」
”そうなの?”
?マークを書き足す。
「はい。その頃の話は、あまりしてくれませんが、妹さんと一緒に、公園で遊んでいる写真を見せて貰ったことがあります」
”公園?”
「はい。そう言えば、この公園と、よく似た公園でした」
よく似た公園・・・。兄妹で写っている写真・・・。なんか、気になる。もしかしたらと言う考えが、心の中で動き出していた。
「どうかしました?」
お姉さんが、心配そうに聞いてくる。
”なんでもないの”
私は、慌てて、平静を保とうと努力した。
「そうですか?」
お姉さんは、疑っているようだった。
「ごめんね、澪」
そこへ、話の終わった二人が戻ってきた。
”何の話なの”
「・・・、あとで、教えてあげる。少し、時間が欲しいの」
えんちゃんは、なんか深刻そうな表情で、答えた。
「それじゃ二人とこも、俺達は帰るからな!」
先輩が、元気良くそう言った。さっき泣いていた人とは別人のようだった。
「それでは、またね」
お姉さんも、先輩と一緒に帰ってしまった。ただ、帰り際に先輩が
「叔母さんに、俺は元気だと、言っておいてくれ!」
と、えんちゃんに言ったのが気になった。
”知り合いなの”
同じクラスでと言う意味ではない。
「ごめん。もう少し気持ちの整理をしてから、話ね。多分、澪にも関係あることだから・・・」
そう言って、無口になる。私の家について、えんちゃんと別れ際に、こう言ってきた。
「澪、先輩がもし・・・」
もし、何だろう。えんちゃんの言葉がそこで止まった。
「何でもない・・・。おやすみ」
”おやすみなの”
部屋に戻り、ベットに横になった。たくさん歩いたからなんか眠くなってきた。晩御飯まで時間があるから、少しだけ眠ってもいいかな・・・・。
今日も来ない・・・
昨日も来なかった・・・
明日は来るかな・・・
泣きながら、ブランコに揺られている。手には、大切なスケッチブックとクレヨン。
「ねぇ、何で泣いてるの?」
誰かが、話しかけてく来た。
「・・・、これ、なんだかわかる?」
その子は、突然私の前で、何か怪しい動きをはじめた。何となく、鳥さんに見えたので、私は
”鳥さん”
と書いてその子に見せた。
「あ!正解!わかってくれたの!」
凄く嬉しそうに、喜んでくれた。手にしている、スケッチブックがなかったら、この子と、友達にはなれなかったかもしれない。
その事も含めて、先輩には感謝している・・・。
「ねぇ、これは?」
その子は、色々と動物の物まねをしてくれた。何でも、児童劇団で、動物の劇をやるらしくて、その練習をしていたみたいだった。
「澪も、友達待ってるの?」
”そうなの”
あれから、何回もあっているうちに、その子と友達になった。
「私の、友達も遠くに行っちゃったんだ・・・」
”あえないの?”
「入院したんだって」
”元気になるといいね”
「そうしたら、一緒に遊ぼうね」
うん
その子の友達とは、結局遊べなかった。理由はよく解らないけど、ある日、その子が公園に来て、ずっと泣いていた事がある。
それから、その子と一緒に過ごしてきた。大切な友達。ブランコで泣いていた私を、優しく慰めてくれたえんちゃん・・・。
「澪!えんちゃんから、電話!」
お母さんの呼ぶ声がする。それで目が覚めてしまった。えんちゃんと出会った頃の夢・・・。
私は起きあがり、受話器を受け取った。えんちゃんとの電話は、お互い決めた合図で返事をすることで、簡単な会話が出来た。これは、二人で考えた事だった。
「澪、折原君のことで、少し話があるんだけど、いいかな?」
”うん”
それを、あらわす合図を送る。えんちゃんの話は、私が予想した事を裏付ける内容だった。
「どうする?」
最後に、えんちゃんはそう言って、電話を切った。どうするか?どうしたいのか?私も、それを考える時間が欲しかった。
−続く−
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こんばんは、パルです。ちなみに。”PARU”です。
うーん、少し風邪気味。インフルエンザが流行しているみたいだから、気をつけねば・・・。
このお話、もう少し続きます。よろしければ、最後までつき合って下さい。
それでは、またお会いしましょう。