第3話 好きな人達
月日の過ぎるのが最近は早く感じてしまう。季節は夏。
私達は秋にある演劇コンクールに向けて、毎日練習している。
毎日、くたくたになるまで練習して、家につくと、すぐに眠ってしまう。今の私には、この生活に救われていた。何も考えられずに、流れてゆく時間が、私には救いだった。
高校生活最初の冬、気になる人が出来た。私のドジで、ラーメンを頭から浴びる羽目になってしまった人・・・。優しい先輩。
何となく、一緒にいて、安心する人だった。懐かしく、そして、温かい人だった。
2年生の時、不思議と、先輩に会わなかった。後で聞くと、入院していたらしいけど、私はその事に気づかなかった。
そして今、先輩と同じクラスになれた。嬉しかった。
でも、最近知った事。先輩の彼女のこと・・・。私の知ってる人。私の好きな人。優しくて、温かい、お姉さんみたいな人・・・。
二人から、その事を聞いたとき、心の奥が痛かった。でも、私は、笑いながら
”お似合いなの”
と言って、二人を祝福してしまった。それは、心から思ったこと。でも、少しせつなかった。
毎日が忙しく過ぎてゆく中、私の心の中も、少しずつ変わっていた。先輩のことは好き。でも、何となく前とは違った感じの好きという感情だと気づいた。先輩のそばには、私が昔、望んだ空気がある。あの夢に見た兄妹の様な関係。私はそれを望んでいるのかもしれない。
「今日は午前中で、終わりだから、どこか行かない?」
クラブが終わり、えんちゃんの誘いに乗って、商店街を歩いている。軽くファーストフードで昼食をすまし、ウインドウショッピングを楽しむ。えんちゃんは部活で使う衣装の布を、探していて、私達は歩き回った。
「あ!今すいてる!」
えんちゃんが見つけたのは、山葉堂。今は丁度人の少ない時間らしく、行列が出来ていない。
「このチャンスを逃すわけにはいかないね!」
えんちゃんが私の手を引いて、山葉堂に向かう。えんちゃんも甘いものが好きで、良くここでワッフルを食べている。
「いらっしゃいませ」
店員さんが、出迎えてくれる。
「あれ?澪・・・、久しぶりです」
店員さんは、アルバイトの茜さんだった。
「あれ?澪の知り合いなの?」
”茜さんなの”
えんちゃんに、教える。茜さんの名前は、教室で先輩と話しているときに何度も出ているから、えんちゃんも知っている。
「じゃぁ、折原君のガールフレンド?」
”そうなの”
「澪、少し時間ありますか?」
お姉さんが、聞いてきた。えんちゃんの方を見ると、OKと言っている。
”大丈夫なの”
「では、いつもの公園まで来て下さい。食べてもらいたいものがあります」
”わかったの”
「すぐいきますから。それまで、これでも食べて待っていて下さいね」
そう言って、焼きたてのワッフルの入った箱を手渡してくれた。
「私のおごりです」
お姉さんは、優しくそう言うと、店の奥に行ってしまった。そして、別の人がレジに来る。私達は事後との邪魔になるといけないので、急いで店から出て公園へと向かった。
「綺麗な人だね。折原君にはもったいないぐらいだわ」
”そんなこと無いの”
「そうかな?」
”お似合いなの”
今の私は、心からそう言える。先輩達を包む空気は、優しくて、気持ちよかった。
「でも、何のようなんだろ?」
”試食なの”
前にも一度だけ試食したことがある。あの、お店は新しい味の研究に余念がなく、アルバイトも日夜研究に励んでいるらしい。先輩がそう言っていた。
「待ちましたか?」
そこへ、お姉さんがやってきた。手には、少し大きめのワッフルの箱を持っている。
それから、お姉さんの持ってきたワッフルをみんなで食べた。おいしかった。
「うみゃぁぁ・・・、甘い・・・」
えんちゃんには、甘すぎたようだった。先輩の話だと、
「茜が作るワッフルは、とてつもなく甘い。普通に作った奴も、他の人間が作るより1.5倍は甘い。お前も、気をつけろよ!」
と言うことらしい。そう言えば、一緒にアルバイトをしているはずの先輩の姿を今日は見なかった。
「えーと、茜さんで良いですよね」
「はい。貴女は?」
「私は、遠藤 玲子。みんなはえんちゃんと呼んでいます。私も、その呼ばれ方好きだから、えんちゃんで良いです」
「そうですか・・・」
「今日は、折原君いないのですか?」
「浩平は、用事があって今日はアルバイトお休みです・・・」
なんか、悲しそうな表情だった。
”どうしたの?”
私は、聞いてみた。
「今日は、浩平の妹さんの命日だそうです・・・」
先輩の妹?
「今日が命日?」
えんちゃんは、何か考え込んでいる。
「はい。ずーとお墓参りしていなかったから、今日はそこに行くといっていました」
「茜さんは、一緒に行かないのですか?」
「私は、アルバイトがありましたから・・・」
その割には、簡単に抜け出している。何でだろう?
「それは、何処にあるんです?」
何故か、えんちゃんがこだわっている。
「どうしてですか?」
「ちょっと・・・」
「確か・・・・」
お姉さんが言ったお寺は、私達の家の近くのお寺だった。先輩の家とはだいぶ離れている。
「今から行きません?」
えんちゃんは、やっぱりこだわっている。何故だか解らないけど、こだわっていた。
「・・・、そうですね。やっぱり私も行きたかったですから・・・」
最後の方は、独り言のように呟いた。こうして私達は、三人でそのお寺に向かいました。
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皆さんこんばんは。パルです。昨日のSSで、今日感想を書くと言いましたが、出来ませんでした。ごめんなさい。
全部は無理でしたが少しだけ、感想書きます。
>ニュー偽善者R少佐 偽善者の恐怖館 病院編−1−
感想ありがとうございます。せっかく病室で良い雰囲気だったのに、詩子に邪魔をされる。この二人のカップルは、この先ずっと詩子に悩まされるでしょう。
>ブラック火消しの風 本当の自分 NO2
結局、浩平は消えてしまったのでしょうか?優しさを認めることの出来なかった浩平の辛さが、悲しいです。新しい世界で彼が幸せを掴めることを願います。
>PELSONA様 中庭にて
初めまして!PELSONAさん。茜の言う冗談。結構珍しいです。茜らしいけど、らしくない行動という感じがして、新鮮でした。
しゃべれるって素晴らしい
澪の虚しい努力なのかな?先の言葉を書いて手渡したスケッチブック。澪の芸の細かさが微笑ましいです。でも、最後が可哀想だったです。
>まねき猫さん お・わ・び(はぁと)
こちらの、質問に、丁寧に答えてくれてありがとうございました。
自分の考えは、ちょっと違うけど、参考にさせて貰います。
ふう・・・。ばやんさんが言っていた事が、本当に身に染みています・・・。都合により、ここまでしか感想書けませんでいた。本当はみさおをアシにして、チキンとやるつもりだったんですけど・・・。
少し長くなってしまいましたが、今日はこれにて失礼します。