永遠への誘い −その6− 投稿者:  パル
 第6話 もう一つの永遠

 俺は急いでいた。みさおによって、みさき先輩、七瀬、茜と繭。そして澪が消えてしまっている。みさおの目的は解らない。でも、一人食堂で待っている長森の所へ、俺は急いでいた。

 「長森!!」
 俺は、大声で名前を呼びながら、食堂のドアを開けた。
 「どうしたの浩平!!」
 長森は、少し驚いたようだったが、まだ食堂にいた。
 「よかった・・・」
 「あれ?他のみんなは?」
 「・・・消えた・・・」
 「消えた?」
 「あぁ。みさおがいたんだ・・・」
 「みさおって誰?」
 「誰って、俺の妹だ」
 「あれ?浩平に、妹いたの?」
 「いたのって、知らなかったのか?」
 「うん」
 そう言えば、長森にみさおのことを話した記憶はない。でも、何となく長森とみさおが一緒にいたような気がする。
 「その、みさおちゃんは、何処にいるの?」
 長森は、浩平の家の複雑な家庭環境の全てを知っているわけではない。ただ、理由があって叔母さんの家に住んでいる程度のことしか知らないし、浩平が話しくれるまで、聞こうとも思っていなかった。
 「みさおは、ずいぶん昔に、死んだんだ・・・」
 他の人に、みさおのことを話すのは、初めてだったかもしれない。
 「死んじゃったの?」
 「病気でな・・・」
 「でも、なんか私って、結構浩平のことで知らないことあるんだよね」
 「どうした?」
 「私、ずっと浩平といて、何でも知っていると思ってたもん」
 「確かに、お前が、一番俺のこと知っていぞ」
 「でも、みさおちゃんのこと、私知らないもん。それに、えーと、澪ちゃんのことも知らなかった。でも、里村さんは澪ちゃんのこと知ってるし、七瀬さんとも最近浩平仲良いもん。それと、知らない先輩と知り合いになってるし・・・」
 「どうしたんだ?」
 「最近、浩平が、遠くに行ったみたいに感じるだよ・・・」
 「長森?」
 「変だよね・・・。いつもは、大丈夫だもん。浩平は一緒にいてくれるもんって、思えるけど、最近は駄目だもん。浩平が、遠くに行きそうなんだもん・・・」
 「それは、一つの永遠が終わる証なんだよ・・・」
  食堂の中心に、みさおが姿を現す。それを見て、長森が驚いている。
 「幽霊??」
 「そうだよ。優しいお姉ちゃん。今まで、お兄ちゃんの励みになってくれて、ありがとう・・・」
 「励み?」
 「そう。お兄ちゃんは昔、この世界を否定した。私とずっと一緒にいる世界を捨てきれなかった・・・」
 「当たり前だ!!何で、お前が・・・」
 それ以上言葉が続かない。みさおは、悪くない。何でお前が助からないんだ!俺は、そう言いたかった。
 「浩平、泣いてるの?」
 「・・・」
 胸が痛い。心が、悲鳴を上げている。あの時と同じだ。でも、これは、消えたはずの痛みだ。
 「お兄ちゃんは、お姉ちゃんと会った。それでね、無意識のうちに、お姉ちゃんと、私を重ねていた・・・」
 そうかもしれない。
 「だから、お兄ちゃんの中の私の記憶が、お姉ちゃんに変わっている・・・」
 そう言われてみると、心当たりがある。
 「そうやって、お兄ちゃんは私を忘れることで、悲しみを隠した・・・」
 そう。俺は、悲しみを乗り越えたわけではない。ただ、心の奥に隠したんだ。
 「でも、小さかったお兄ちゃんには、それしか方法がなかった。だから、私もそれでいいと思っていた・・・」
 「駄目なの?」
 長森が尋ねる。
 「うん・・・。お兄ちゃんが望んだもの。変わらない永遠の世界・・・。お兄ちゃんがいて、私がいる・・・。ずっと兄弟仲良く暮らしていける永遠の世界。兄弟なら、ずっと一緒だから・・・。それに・・・もうひとつ」
 「??」
 「永遠に続く世界・・・。決して終わることのない、ただ続いているだけの世界・・・」
 「???」
 「お姉ちゃんが、私の場所に立ってくれたおかげで、お兄ちゃんは今まで今の世界にいることが出来た・・・。でも、お兄ちゃん自身の心の変化と、お姉ちゃんの心の変化が、ここに来て、変わってしまった・・・」
 兄弟と過ごす永遠か、好きな人との永遠・・・。
 「兄弟に近い幼なじみか、もっと身近になるか・・・。それに、もうひとつだよね」
 「お姉ちゃん優しいから、お兄ちゃんに彼女が出来たら、お兄ちゃんの前からどこかに行こうと思っているでしょ?」
 「だって、浩平の好きな子が、私とことで誤解したらやだもん」
 「・・・だから、もう一つの世界が、やって来る・・・。幼い頃に願った世界と、違う世界に行こうとするお兄ちゃんを、迎えに・・・」
 「俺を、迎えに?」
 「そうだよ・・・」
 「そんな馬鹿な話が、現実にあるのか?」
 「お兄ちゃんは、今の状態を、現実だと思う?」
 確かに、外に出られない。目の前で人が消える。それは非常識なことだ。
 「純粋な思いは、奇跡を起こす・・・」
 「大切だったんだね、みさおちゃんのこと」
 「当たり前だ!」
 「私もだよお兄ちゃん。だから、これからのことに耐えてね」
 「え?」
 俺は、一瞬何が起きたのか解らなかった。ただ・・・
 「みさお?長森?」
 周りに誰もいなくていた。俺は、一人になっていた。
 「・・・、誰もいないの?一人は、嫌だよ・・・」
 「お兄ちゃんは、一人じゃないよ・・・」
 みさおの声がしたが、俺の耳に、その言葉は届いていなかった。


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 えーと、皆さん、こんばんは。第6話です。みんな消えてしまいました・・・。残り2話です。よろしければ、最後までつき合って下さい。
 小説ONE2巻。何とか購入できました。とっても、予約しておいたから、焦る必要はないけど、書店によっては入荷していないところがあったみたいです。茜様の話でした。結構新鮮でよかったです。
 それと、感想ありがとうございます。感謝してます。でも、今回も感想書けませんでした。すいません。それでは、また・・・。