「もう、結局今日も逃げられた」
掃除がおわり、鞄を持って教室を出る。
「せっかく今日は、クラブがないから一緒に帰ろうと持っていたのに」
掃除の時間になったとたん、浩平はいつものように逃げていった。
「あれ?」
教室を出たところで、変わった風景を見た。
最近浩平と一緒にるところを見かける生徒。同じクラスの里村さんと、見たことのない女の子が一緒にいた。
里村さんは、無口だけど綺麗な子だった。浩平が興味を持つのも何となく解る気がする。でも、彼女がこんな風に笑っているところを私は見たことがなかった。
一緒にいる女の子が、持っているスケッチブックに何かを書く度に、里村さんは返事をいている。女の子の方は何も言わずに、ただ一生懸命、スケッチブックに何かを書いている。
少し離れたところいた私には、それがとても変わった光景に見えた。何だろう?何かが不自然だった。とにかく、私は特に用もなかったから、簡単に挨拶だけして帰るつもりだった。
「里村さん、さようなら」
「あ、長森さん。さようなら」
その時、横にいた子と目があった。すると、その子は里村さんの後ろにさっと隠れてしまった。
「え?」
私には何が起きたのか解らない。里村さんも同じみたいだった。その子は、里村さんに隠れながら、スケッチブックに何かを書いて、それを里村さんに渡した。
「見て下さい」
里村さんはそう言って、スケッチブックを差し出した。
「怖いの」
スケッチブックにはそう書いてあった。
「怖いって、私のこと?」
うん、うん。と、その子が頷いている。
「何で?」
私が聞いても、里村さんの後ろに隠れてしまい、何も教えてくれない。
「長森さん、この子は澪といって、訳があって言葉が話せないんです」
「え?」
「だから、スケッチブックを使って会話をしていました」
「そうなの」
「はい。でも長森さん心当たりありません?」
「・・・。だって、私この子にあうの初めてだもん」
「澪、何で長森さんが怖いの?」
なんか、普段の里村さんより5割り増しで優しい感じがする。
「食べられるの」
スケッチブックには、そう書かれていた。
「誰に?」
里村さんがそう聞くと澪という子は、私の方を指さした。
「・・・・」
「・・・・」
私と、里村さんは、訳が分からず、考え込んでいた。
「長森さん、浩平は?」
「へ?浩平なら、どこかに逃げたよ」
「そうですか、彼ならこの事を知っていると思うんです」
「え?」
「澪と、長森さんを繋ぐ共通の人物が浩平・・・、折原君です」
そう言えば、いつの間に浩平は里村さんと仲良くなったんだろう。浩平も里村さんのこと茜って名前で呼んでいたし里村さんもさっき浩平って言った。
「聞いていますか?」
「え!!うん。聞いている」
「折原君なら、このとを知っている。というより彼が原因だと思います」
「じゃぁ、この子が私のことを怖がるようなことを、浩平が言ったの?」
「たぶんそうだと思います」
「でも、なんて言ったんだろ?」
「解りません」
「お、変わった取り合わせだな」
「!!」
浩平が丁度よくやってきた。さっきまで、隠れていた澪ちゃんが、浩平に突進していく。
「うぉ!!」
澪ちゃんは、今度は浩平の後ろに隠れた。
「浩平、一体澪に何を言ったのですか?」
里村さんが、何も前フリもなく本題を切り出した。
「何のことだ?」
「怯えてます」
そう言いながら、澪ちゃんの頭をなででいる。
「澪がか?」
「はい。長森さんの事を怖いって言っていました」
「あっ!!」
「何か言ったの!!」
今度は、私が詰め寄る。
「そう言えば、昨日澪と合ったときに、長森のことを聞かれたんだ。いつも一緒に登校している人は、誰ですかって」
「なんて答えたの?」
「あれは、幼なじみの長森といって、肉食の獣を8匹自由自在に操る事ができる奴だ。澪も、食べられないように気をつけろって言ったような気がする」
うん、うん。
浩平の後ろで澪ちゃんが一生懸命頷いている。どうやら本当らしい。
「どうしてそんな嘘を言うの。あの子達、人なんか食べないもん」
「・・・」
「・・・」
里村さんと、澪ちゃんが、私達から少し距離を取る。
「あの、長森さん。本当に、肉食の獣を8匹も飼っているんですか?」
「え・・・。肉食の獣って、猫の事だもん。浩平意地悪だから、いつもそう言うんだもん!!」
「だって、猫って肉食だろ?」
「獣じゃないもん。猫は猫だもん。あんなに可愛いのに・・・」
結局、澪ちゃんの誤解は解けました。その後、浩平と一緒に澪ちゃんに私の自慢の猫を見せるために家に行きました。里村さんは先に帰ってしまったけど、日が沈むまで、猫達と一緒に遊びました。
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皆さん、いつも感想を書いていただきありがとうございます。
何か書いてあると、すっごく嬉しいです。
いけだもの様
りーふ図書館に行って来ました。そうですね、音楽で気持ちを伝えるという方法もいいですね。選曲次第で、色々な気持ちを伝えることもできそうですし、楽しいかもしれません。
それでは、ここまで読んでくれて、ありがとうございました。