チチチチチチチチチ
スズメ達のさえずりが聞こえてくるような・・・・・朝早い時刻。
私は学校の校門を通って部室へ向かう。
「昨日の作業がまた残ってたのよね・・・・片づけなきゃね。」
私−深山雪見の朝は結構早い方だと思う。
だって・・・・・。
しーーーーーーん
「・・・・ちょっと早く来すぎたかしら?」
・・・・誰も学校に居ないんだからね。
まあ、独り言はおいといて、とっとと部室中に散らばる小物を片づけないと・・・・。
・・・・誰か手伝ってくれないかしら。例えば・・・・”彼”とか。
はっ!?何考えてるの?私は・・・・そんな事考えてないで早く終わらせないと。
授業が始まる前に別の仕事があるんだから。
そう・・・・この大量の小物を片づけるより100倍も大変な仕事がね。
『雪ちゃんの朝』
「はあ・・・・・今日もこの時間が来てしまったわ。」
私は今部室の仕事を終えたばかりの学校を出て、学校のすぐ前にある一軒の家の玄関の前にいる。
そう・・・・私の親友、川名みさきの家だ。
「いくら学校の目の前に家が有るっていったって・・・・寝坊したら意味無いじゃないの!」
そんな事をぶつぶつ言いながら私はみさきの家に入っていった。
「あら?雪ちゃん、来てくれたのね。うちのみさきはホントに朝に弱いから・・・・ご免なさいね。」
「いえっ、もう慣れましたから・・・・。」
玄関でみさきのお母さんにそう言われる・・・・はあっ、たまには早く起きなさいよ。
ちなみにみさきのお母さんがみさきを起こさないのは、
「家の中では私が一人で行動出来るようにしたいんだよ。」
と、当人が宣言したから・・・・・らしいわね。
そしてみさきの部屋に入る。私の目に入ってくる光景。
「う〜〜〜〜ん・・・・・・もう食べられないよお・・・・むにゃむにゃ。」
・・・・・やっぱりまだ寝てるわ。
幸せそうな顔してからに・・・・・・って、みさきが食べられない状態ってあるのかしら?
さて・・・・・みさきを起こさないと。今までの経験からすると・・・・普通の起こし方じゃ起きないのは分かってるし・・・・。
うーーーん、どうしようかしら?
<どうやってみさきを起こす?>
1.まくらを顔面に押しつけて窒息させる。
2.目覚めのキスで起こす。
3.布団を引き剥がす。
・・・・・何で選択肢が出てくるのかよく分かんないんだけど。
でも出たからにはこの中から選ばないとね。(ホントに?)
えーっと、『1.まくらを顔面に押しつけて窒息させる』だと・・・・。
−−−−−−思考開始−−−−−−
「こらっ!みさき、起きなさいっ!」
ばふっ
「むにゃっ?・・・・・わーーーーい、美味しい肉まんだよーーー!!!」
むしゃむしゃ
「えええええーーーー!!!????枕食べたああああーーー!!!???」
−−−−−−思考終了−−−−−−
・・・・んなわけないわよね。(だったら考えるなよ)
まあ、これは基本技だし・・・・みさきには効かないと思うから止める方が賢明ね。
じゃあ、次の『2.目覚めのキス』だったら・・・・。
−−−−−−イメージ開始−−−−−−
「みさき・・・・起きて・・・。」
ちゅっ
「ゆき・・・・ちゃん?」
むくっ
「あっ、みさき。起きたのね・・・・・って、なんで私の両肩を掴むの?」
がばっ(雪ちゃんを押し倒すみさき)
「きゃっ!?み、みさき?そ、その妖しい目は何なの・・・?」
みさきは微笑みながら私に言った。
「やっと・・・雪ちゃんも私の気持ちに気付いてくれたんだね・・・・嬉しいよ。」
・・・・二人の影が重なる・・・・
そして・・・・えいえんのせかいへ・・・(何故に?)
−−−−−−イメージ終了−−−−−−
・・・・ああああああ!!!!何レ◯な事考えてるのよ私はっ!!!
却下よ、却下!
すると残るは『3.布団を引き剥がす。』よね。
まあ、この技は基本だしそれなりに効果も期待できそうよね。これにしようかしら。
・・・・でも一応イメージはしてみようかしら。演劇にもイメージは大切だし・・・・。(もはやイメージではないぞ)
えーっと・・・。
−−−−−−妄想開始−−−−−−
「こらっ!みさき、起きなさいっ!」
かばあっ
「・・・・えっ?誰かみさきの横で寝てる!?しかも裸!?」
むくっ
「・・・・長森、深山先輩の変装が上手くなったな・・・ぐう。」
ばたっ
「えっ!?折原君!?って・・・・みさきの横で裸で寝てるって・・・・えーーーー!!????二人はそんな関係なの?」
むくっ
「・・・・・そうなんだよ、雪ちゃんには悪いけど浩平君は私のものなんだよ・・・・・ぐう。」
ばたっ
「ええええええええええーーーーーー!!!????」
−−−−−−妄想終了−−−−−−
ま、まさか・・・そんなことが・・・・。
はっ!?何考えてるの私はっ!
そうよ、”彼”が誰と付き合ったって関係ない・・・・・ただの同じ部員同士というだけで・・・。
いつも遅くまで手伝ってくれたとか、私の言うことを嫌な顔一つしないで聞いてくれるとか、クリスマスの時も一緒に部室で作業したとか・・・・・・。
ふ、普通の関係よねっ!?(・・・・違うと思う)
「・・・・・雪ちゃんって朝から面白いね。」
えっ?何か後ろから、のー天気な声がしたような気が・・・・。
私が振り返ると・・・・。
「ふ〜〜〜ん、雪ちゃんも浩平君の事が好きなんだね。」
にっこりとした笑顔のみさきが其処にいた。既に服来てるし・・・・・。
あっ・・・布団には誰も居ない・・・・。
硬直しながら聞く私。
「・・・・聞いてた?」
「うん。殆ど全部。」
がーーーーーーん、みさきに弱みをられるなんて・・・・・深山雪見、一生の不覚だわ。
「ふふっ、雪ちゃんの秘密聞いちゃった♪」
喜んでるみさき・・・・・ううっ・・まずいわね。
ん?『雪ちゃんも』って・・・・・ひょっとして。
「みさき・・・・折原君の事好きなの?」
「な、何でそう言うこと言うの?」
「・・・・雪ちゃん『も』・・・って。」
私の返事にハッとするみさき・・・・自分のミスに気付いたわね。
それからお互い黙り込んでしまう。
・・・・・・はっ!?時間!?
・・・・わっ、始業3分前じゃないの!?
「みさきっ!学校始まるわよっ!」
「えっ?そうなの?・・・急ごうよ!」
私達は急いで家を出た。
「はあはあ・・・みさき、あんたが悪いのよっ!寝たふりしてるからっ!」
「そんな事ないよ〜〜〜〜〜〜。」
いつもの朝に戻ったわ・・・そんな事を思いながら先に教室に入ろうとした私にみさきが・・・そっと呟いた。
「お互いに頑張ろうねっ♪浩平君の事。」
・・・・・・・みさきったら・・・そう来たわね。
なら私だって・・・。
「負けないからね、みさき。」
私の言葉にみさきはこっちを向いて笑いながら・・・・・
どごーーーん
・・・・扉に激突した。
「いたいよー。」
「みさき、大丈夫?」
・・・・・・・
みさき・・・・お互いに・・・・ホントに・・・・頑張ろうね。
輝く季節は・・・・・いつもみさきの側にあるから・・・・ね。
だから・・・・・
「みさきっ!たまには早く起きなさーーーーーーーい!!!!!!」
おしまい
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ポン太「はいっ、ポン太です。妄想雪ちゃんSSはいかがでしたか?( ̄∇ ̄)」
雪ちゃん「誰が妄想雪ちゃんよっ!」
ざくざくざくっ!
ポン太(重傷)「最近刺す物凝ってきたね・・・・今回は手裏剣ですか。」
雪ちゃん「それはいいけど・・・・これって”粉雪の・・・”のサイドストーリーの筈だったんじゃ・・・。」
ポン太(重傷)「初めはその予定だった。でも書いてくうちに・・・雪ちゃんは妄想に走るし・・・みさき先輩はライバル宣言するし・・・あうあう。(TT)」
雪ちゃん「それにみさきが寝坊だってデータ・・・あるの?」
ポン太(重傷)「見たこと無いです。でも・・・・早起きだってデータも見たことないもんっ!( ̄∇ ̄)」
雪ちゃん「・・・・はあ。」
1999.6.5