忘却者達の鎮魂歌 (1) 投稿者: 変身動物ポン太
ここは何処だろう・・・・・・

僕の望んだ世界? それとも他の人が?

何も無いようで、何かがあるようで

分からない世界、分かりたくない世界

しかしこれは言える−僕はそこに居る−とだけ

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「ご、ごめんなさい。名前、思い出せないの・・・・・。」

・・・・・記憶

「みゅー?お兄さん、だれ?」

・・・・・忘却

「あなた、一体何者?」

・・・・・絆

『どなたなの?』

・・・・・空虚

「・・・・誰ですか、あなた。」

・・・・・そして

「えーっと、初めて会う人だよね?」

・・・・・消滅


忘却という言葉の意味・・・忘れることだ。
良く知った人間に忘れられていく・・・・・苦痛だ、かなりの。

オレの体の感覚は、時がたつにつれて軽くなって行くようだった。
いや、無くなって行くという方が正しいな。
そして感覚だけでなく・・・・記憶も。
 
 ・・・・・・・・

オレは永遠を望んでいた・・・・昔は。
悲しみから逃れるため
大切な人を二度と失いたくなかったから
そして・・・・あの言葉を聞いてから

『えいえんはあるよ』

・・・・友人に忘れられる事がか!?
そんな永遠があるわけないだろう!
オレはそんな事を望んではいない!

 ・・・・・・・・

・・・・・だが
オレはこの世界から消える。これは間違いない・・・・なぜならば

今のオレには何の絆も無いから・・・・だな。
だから消えるのか・・・・・幼い頃の自分の作った世界に行くために。

オレの真上には寒々とした星空が、広がっている。
「まだ、寒いな。」
さすがに野宿はきつかったな・・・そんな、どうでもいいような事を考える。


消えたくない


ふと、そんな考えが頭に浮かぶ。
なぜだ。
今のオレには何もないのに・・・・・誰かとの想い出も、絆も。
・・・・いや、何かあったのか?
最後に残った記憶を引き出して考える・・・・駄目だ、思い出せない。

すっ、体が吸い込まれるような感覚。

うっ・・・・・時間か。

オレの体は・・・少しずつ周りに溶け込んでいった。
感覚が無くなり、全てが曖昧になっていく。

オレは”あの世界”に行くのか・・・・・・。

どこかへ意識が流されていく・・・・



・・・・!?何かが見える!?光か!?

流されて行く方に対して、真横にある光・・・・・。
その光は、オレの目には最後の可能性に見えた。
いや、可能性では無いが・・・もう一つの選択肢ではあった。

「・・・・・行くか?でも・・・・。」

みさお・・・・いや、みずかが・・・・。

「いいんだよ、お兄ちゃん」
みさお!?
「そっちへ行ってよ、その方がお兄ちゃんのためになるから・・・・・」
だが・・・・
「私は大丈夫。心配いらないよ」
オレはお前の事が・・・・
「・・・・たまには私のわがままも聞いてよね。・・・いや最後になるのかな」
・・・・みさお

強い衝撃と共に、オレの意識は光の方に飛ばされる。
・・・・みさおの奴、いつもオレのことばっかり気にしやがって・・・・。
あ、
・・・・そうか、これがオレに残った最後のきず・・・

「まだ、終わってないよ、お兄ちゃんの絆は」

みさお・・・・ごめんな

オレの意識はそこで途切れた・・・・。

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オレの顔に照りつける日差し。
暖かいな・・・・・春なのか、もう。

「あれ?・・・生きてたんだ。」

聞き慣れた声・・・いや全然聞いたこと無いぞ!?

がばあっ

慌てて飛び起きる。

「おー、起きた起きた。」

・・・どうやら喋っているのは女らしい・・・・。
視界がはっきりしないな、相手の顔がわからん。・・・・お、見えてきた。

「へえっ、・・・・なかなかいい男だね。うん。」

ぱっちりとした目にポニーテール。年は22、3だろう・・・・。
ジーンズに黒いポロシャツを身に着けて・・・・うむ、貧乳では無いな。

「ちょっと、何処見てるのよ。」

こつんと頭をこずかれる、・・・なんか誰かを思い出させるんだが・・・。
美人と言うよりは・・・なんか・・・・って、おい。

「・・・・七瀬?」

なんか、七瀬に似てるぞ・・・・未来の想像図って言われても驚かんぞ、オレは。

「少し違うね・・・・私の名前は、美香。七倉美香(ななくら みか)って言うんだよ。」

その男勝りの(そうにしか見えない)女の人はそう言った。
とりあえずオレも自分の名前を名乗り、そして一番聞きたいことを言おうとする。

「あのー、七倉さん・・・・」
「美香お姉さんでいいわよ。」
・・・・なんだかなあ。
「じゃあ、美香さん。ここは何処なんです?」

美香さんは少し考えて、答えた。
「・・・・・・村。」
・・・・・おい、それが答えかい。

確かに周りを見ると、田んぼが広がっていて藁葺きの家があって・・・どっから見ても村だけどさ。
「どこの村か聞きたいんだけどな。」
オレがそう言うと、
「うーん、折原君の方が知ってるんだと期待したのになあー。・・・・私も知らないわよ。」
そんな答えが返ってきた。
おいおい・・・・何処なんだよ、ここは。

「まあ、ここで立ち話もなんだから家に来なよ。」
「え?・・・・はい。」
得体の知れない村に、得体の知れない女・・・・不安だ。


『えいえんはあるよ』
オレへの鎮魂歌は・・・・まだ始まりを見せていただけにすぎなかった・・・・・・・。


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ポン太「こんにちは、相変わらず自分勝手に永遠の世界を作ってるSS作家、ポン太です。」
雪ちゃん「去年最後の後書きで言ってた”忘れられた者は・・・忘れられた場所へ”の改題がこれなのね。」
ポン太「えーっと、最初の方なんですけど、この光景は誰とも絆を作れなかった浩平の姿を書いて居るんですけど・・・・。」
雪ちゃん「ポン太はゲームの方では、バッドエンディングは嫌いだから殆ど見てないのよね。」
ポン太「だから、真の”バッドエンド”は知らないんですよ。(知ってるのは繭のバッドのみ)だから今回は全部想像。」
裏ポン太「だから『全然違うやんけ!』とあまりきつく突っ込まないでくださいね。」
ポン太「お願いしますぅー(涙)」

ポン太「しかし・・・ヒロイン達に次々とセリフを言わせる所は・・・・書いてて辛かった・・・ううっ。」
雪ちゃん「うーん、確かにね。」
ポン太「あと、”鎮魂歌”の所を”レクイエム”って読んでくれると嬉しいですな。」
雪ちゃん「かっこつけてるだけじゃ・・・・」
ポン太「うるさいわい!」

雪ちゃん「そう言えば、七瀬さんSSを書くとか言ってたような気がするんだけど。」
ポン太「・・・・構想が進まないの・・・・だからかなり後回しになるけど、そのかわり・・・。」
雪ちゃん「そのかわり?」
ポン太「激突!!の第二章の構想が思いついたから・・・・書くかも。」
雪ちゃん「昨日、外伝を出したばっかりなのに?」
ポン太「・・・仕方ないんだよ。浮かぶネタが偏っているんだから。このSSだって、続きを殆ど考えてないんだよ・・・ううっ」
雪ちゃん「はあー。先が思いやられるわね・・・・。」

ポン太「それでは今日はここまで。」
雪ちゃん「明日は感想SSですよー。」
裏ポン太「それでは皆さん。」

三人「さようならー。」

1999.1.7