粉雪の舞う舞台で・・・ (2) 投稿者: 変身動物ポン太
何かを追うことが、悪い事とは言わない。

何かを知ることが、無駄な事とは思えない。

でも・・・・・・・・・・

それをしてしまった時の代償を、私達は知らないだろう・・・・・・そう、永遠に。


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「折原 浩平です、どうぞこれからもよろしく。」
オレは”二度目”の自己紹介をしている。
周りの部員達の顔も、ほぼ全員オレの頭の中に入っている。
ぱちぱちぱちぱち
拍手がわき起こる。ひときわ大きな拍手は澪のだ・・・・。

今日は12月23日
オレ−折原浩平が正式に演劇部員になった日だ。
「はい、新入部員の紹介はこれでおしまい。みんな、持ち場に戻っていいわよ。」
いつものように、てきぱきと深山先輩が指示を出す。
澪がオレのそばにやって来る。
『今日から一緒にがんばるの』
スケッチブックを見せてにこりと微笑んでくれた。
「ああ、これからよろしくな、澪先輩。」
澪はあうー、といった顔になった。
「じゃあ早速、澪先輩の手伝いをさせてもらいますか・・・って、うおっ!」
オレが続けてからかうと、澪はスケッチブックでぽかぽか叩いてきた。角で。
「いたたたたたたた、ごめんごめん。」

「折原君、上月さんをからかっちゃ駄目よ。上月さんもそれぐらいにしといたら、折原君痛がってるわよ。」
深山先輩・・・・さっきまで向こうにいたと思ったら・・・・いつの間に。
さすがに部長さんの言葉だけあって、澪は叩くのをやめてくれた。
「すいません、で、今日はどんな仕事を・・・・。」
「えーっとね、あっちの舞台背景のベニヤ板を・・・・・・。」
さっと答えてくれる・・・・さすがだ。

この日もオレは充実した一日だったと感じた。


12月24日
オレの記憶が正しいなら・・・・・今日はクリスマスイブのはずだ。
・・・・オレの今年のこの日はいつもとは違う日になるだろう・・・・・
そんな漠然とした予感があった・・・・。

「・・・寝過ごしたな・・。」
終業式でごったがえした体育館の入り口で待つ俺の視界に、深山先輩の姿が入ってきた。
「深山先輩。」
オレが呼びかけると先輩は振り返ってくれた。
「あっ、折原君。あなたも入れないの?」
「ええ・・・・。ところで今日は部活・・あるんですよね?」
「まあ・・・一応あるけど・・・休む人が多いわね。今日はクリスマスイブだしね。」
なるほど・・・・普通はそうだよな。
「折原君は・・・休むの?」
「えーっと、オレは・・・多分行きますよ。どうせ予定も無いですし・・。」
オレの言葉を聞いた深山先輩はクスリと笑った。
「へー、折原君・・・今日の予定何にもないんだ。」
じろじろ見てくる・・・・何かいつもの深山先輩じゃないな・・・・。
「そういう深山先輩はどうなんです?」
意地悪く聞き返してみる。
「えーっと私は・・・あっ、入り口もうすいてるわね。じゃあ。」
・・・・・逃げられた。
(でも、少しだけど慌てた深山先輩を見られたからいいか。)
そう思っておくことにする。


放課後・・・クラスのあちこちで今日の午後の予定を話す声が聞こえる。
まあ、オレには・・・と思ってると住井がよってきた。
「おい折原、これからどうするんだ。」
「うーん、まずは綺麗な嫁さん手に入れてだな・・・。」
「だれも人生の計画聞いてないって、今日の予定だ。」
予定か・・・・まあ、とりあえず・・・。
「オレはこれから部活だ。」
・・・・一時的にオレと住井は無口になる。
「折原、正直に答えろ。何を拾って喰った。」
「オレは正常だって・・・じゃあな。」
何か言いたそうな住井を残してオレは教室を出た。


部室に入ると、さすがにいつもより部員の数は少なかった。
「へぇー、澪やみさき先輩もいないんだな・・・・。」
なんか寂しかったような・・・・・・気もする。
この日は少々の作業と雑談だけで皆帰ってしまう・・・・まあ当然か・・。
とりあえず、部室をぐるっと見渡してみる。
「深山先輩も・・・いないか・・・・。」
誰もいなくなった部室を後にする。
オレは親しくなった部員達(最後まで残っていた)と挨拶をかわしながら夕暮れの昇降口を後にした。


帰り道を歩きながら思う。
終業式とクリスマスイブの日に部活に出る・・・知り合いの少ない部活に。
・・・・・なにやってんだろうな・・・オレ。
「寒いな。」
一言つぶやいてポケットの中に手を入れた時・・・・・んっ?
「あっ、シャープペン忘れたな・・・・。」
いつもポケットに入っているはずなんだが・・・教室か部室に忘れたか・・・。
・・・不細工なシャープペンだが、オレはあれ以外めぼしいペンを持ってないからな・・・。
どうしよう・・・・取りに行くか、帰るか・・・。


校舎の前まで戻った時には、すっかり周りは暗くなっていた。
「これは・・・早く帰らないとまずいな・・。」
まず教室に向かう。そして机の中を漁る。
「・・・・・・ない。」
と、いうことは部室か・・・。
オレはクラブの部室練のある校舎へと向かう。
周りは真っ暗だ。澪や繭なら泣き出しているかもしれないな・・・・・。
と、オレの足が止まった。
「あれ・・・?部室に明かりが・・・・なんでだ。」
確かオレが出て行くときはもう誰もいなかったはずだが・・・・。
「まさか・・・・・。」

扉を開けるとそのまさかが居た。
「あれ?折原君、まだ居たの?」
それはこっちのセリフだよ・・・・深山先輩。
よく見ると、先輩はなにやら小道具が一杯入った紙袋をいくつか置いて中身を確かめていたようだ・・。
(また、買い物か・・・今日ぐらいなあ・・・・ってオレもか)
そんな事を思いつつ、
「いや、忘れ物を取りに来ただけですけど・・・ふっふっふっ、深山先輩も予定無かったんですね・・・・。」
と、少し意地悪な事をいってしまうオレだった・・・。
「うっ、・・・・昼間は悪かったわ、折原君。・・・はいはい、どうせ私はクリスマスイブに一人で部室に居るような女ですよ。」
おっ、珍しく深山先輩いじけてる。
「深山先輩なら、お声の一つや二つかかりそうなもんですけど・・・・あっ、手伝います。」
小道具の選別を手伝いながら、聞いてみる。
「理由ね・・・・多分、折原君と一緒だわ。」
「と、言うことは先輩も部活へ行くって言っちゃったんですか?みんなに。」
「そう言うことね。・・えーっとこれはこっちに入れてね。」

二人で作業すること30分、ようやく仕分けは終わった。
「これで今年の作業は終わりね・・・・・。帰りましょうか。」
そう言って深山先輩は外を向いた。
「・・・・・真っ暗ね。」
「気づかなかったんですか?」
「ええ。」
・・・・・ホントに深山先輩って演劇関係には集中してしまうんだな・・・。
そんな事を考えていたのが悪かったのか・・・・次にオレが言った言葉は自分でも意外だった・・・・かも。
「先輩・・・オレが家まで送った方がいいかな?もう暗いし・・・・。」
長森や七瀬にならともかく・・・・しかし、先輩の返事も意外だった。
一瞬、ぽかんとした深山先輩だったが・・・
「うーん、じゃあ途中までお願いしようかな。」
すぐににっこりと微笑んで、そう言ったのだった・・・・・。


オレと深山先輩はそろって校門を出た。
「寒いわね・・・・ホントに。」
「さすがに・・・もう暗いしな・・・・・。」
ホントに寒かった。二人の会話も途切れがちなほどに・・・・。
商店街のほうに入ると・・・街はクリスマス一色だった。
「ホントに今日クリスマスなんだよね・・・・・。」
「そうだな・・・・・。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
先輩はなんか寂しそうに見えた。いつも颯爽として部活の指揮を取ってる深山先輩が・・・。

明かりで眩しい街の中を二人で歩く。
「家に帰っても誰もいないのよね・・・・はあー。」
深山先輩の独り言とため息がオレの耳に入ってくる。・・・・先輩も今日は一人か・・・。
『先輩、もし良かったらオレの家で・・・』
うーん、誘っても無理かな・・・・第一、オレの家には何もない・・・はずだ。
そんなオレの目にコンビニの明かりが入ってきた。
・・・・・これなら・・・・。
「・・・・深山先輩。」
「何?折原君。」
「なんかコンビニで暖かい物・・・・買いませんか?」
少しでも先輩の寂しさを取って上げたかったから・・・・だよな。

オレと深山先輩は近くの公園のベンチに座っていた。
手に肉まんと缶コーヒーを持って・・・。
「折原君、ありがとう。奢ってくれて。」
「いやいや、大したこと無いですよ。」
深山先輩はあの小物を買ったため、お金が殆ど無かったようだ・・・・。
「まだ学校から部費が来てないのよ・・・だから自費でね。」
オレはそれを聞いて・・・・つい・・言ってしまった。
「・・・深山先輩って・・・ホントに演劇が・・・・大切なんだよな・・・。」
それを聞いた深山先輩は・・・・
「そうかな・・・・私って・・・そうなのかな。」
一瞬だけ顔を曇らせた・・・・が、すぐにいつもの顔に戻って・・・・・。
「私は・・・これしか才能がないからね。」
と微笑んでくれた。そんな時だった・・・・・。

「あっ、雪・・・・・・。」
本当だ・・・・・ちらり、ちらりと、粉雪が降ってくる・・・。
「ホワイトクリスマスか・・・・。」
オレはそうつぶやいていた・・・・・。
「綺麗だよね。」
そう言って、深山先輩がベンチから立ち上がる。そう、それだけのはず・・・・だった。
でも・・・・・・。
「!」
オレは思わず息をのんだ・・・・・。


ちょうど街灯が、スポットライトのように深山先輩に降り注いでいた・・・・
そして・・・・彼女は純白の粉雪をまとったように見えて・・・・。

全てが・・・・綺麗で幻想的だった・・・・。


これは・・・・・まるで・・・・・。

「舞台だ・・・・。」
それが出来たのは偶然だったかもしれない。
しかしそこは、間違いなく一つの舞台だった。深山雪見という女優の・・・・・。
セリフも何もない、観客はオレ一人の・・・・・
「深山先輩・・・・・・・・・・」
オレはそれしか言えなかった・・・・それほどこの光景に引き込まれていた・・・・。

粉雪の降る中・・・・雪を見上げている深山先輩・・・・。
オレは先輩を見ていた・・・・・飽きることなく・・・・ずっと・・・・・。


降り続ける粉雪だけが・・・・オレ達を見続けていた・・・・・・・・・。


To be continued・・・・
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ポン太「はいー、ポン太です。・・・・何だか書いていて、訳分かんなくなってきた・・・。特に後半が・・。(←無責任)」
雪ちゃん「・・・確かに後半は・・・分かりにくいかもね・・・。」
ポン太「”雪のように白く”や”追想”、果ては”A Tair”を全開で聞きつつ書いてたからなあ・・・かなりトリップしてたかも・・・。」
雪ちゃん「言ってるそばから”追想”聞いてるし・・・。」(←マジ)
ポン太「話が分かりにくかった人、ごめんなさい。」

ポン太「今年は12月28日までしか投稿出来ないから・・・急がねばいかんな・・・。」
雪ちゃん「あっ、ポン太の大学って28日までなんだ。」
ポン太「来年のSS一番乗りは誰かなー。皆さんがんばれー。」

ポン太「あと、いちごう様のチャットで私と話してくださったスライム様、ありがとうございますぅー。」
雪ちゃん「そっちの方にも進出してるの・・・研究そっちのけで・・・・。」
ポン太「・・・・いいんだよ・・別に・・・(半分やけ)。」

ポン太「とりあえず明日は感想SSですな。」
雪ちゃん「あれ?いつもこの辺で出てくる裏ポン太は?」
ポン太「今UPされているSSを全部コピーに・・・・」
雪ちゃん「今夜は徹夜ね・・・・・はあー」

ポン太「と、言った所で今回はおしまい。」
雪ちゃん「それでは、明日お会いしましょー。」

1998.12.21