三つの想い (3) 投稿者: 変身動物ポン太
私はなぜ”ここ”にいるのだろう・・・・・

彼はなぜ”ここ”を選んだのだろう・・・・・

わからない・・・・・・・・誰も分からない。私も彼も。


でも私はここに来た

ずっと待ち続けた人がいる 大好きな人が
ずっと一諸にいられる  そう・・・・永遠に

もう待つ必要はない

なのに・・・・・・

なぜ胸が締め付けられるように痛むの?
なぜ・・・・・・・・

えいえんの問いかけ えいえんの痛み

私はこう思っていた。


あの人が来るまでは・・・・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「浩平・・・・・・・・・・・。」
浩平が顔を上げる。
雨の降る学校裏のフェンスの外れ 
座り込んでいた浩平が、起きあがった。
「詩子・・・・・・。」
詩子はそれ以上何も言わず、浩平の胸の中に飛び込んだ。

「私は忘れてないよ・・・・・絶対に忘れないよ!」

浩平も黙って、詩子の頬をつたう涙をぬぐっていた・・・・・。


私はこの光景を見ていた
不思議と驚きは無かった
私が消えた日 浩平と詩子は二人であの空き地に現れた
その時から漠然とした予感があった
でも・・・・・・
小さな痛みが私の胸をちくりと刺した

・・・・嫉妬なの?
なぜ痛いの?

わからない・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「茜を待っていた、あの青年が消える。」
幼なじみの彼・・・・・渚がそう言ったのは少し前だった
”ここ”には時間の感覚はない

「・・・・・なぜですか。」
これだけ言うのが精一杯だった

「・・・わからない、でも消えるのだけは間違いない。」
渚がこう言ったと同時にこの光景は突然始まった。
私も渚も驚いていた・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
詩子に支えられた浩平が森の中に消えていく所で、唐突にその光景は途切れた
出来損ないのビデオテープ
そんな感じだった

「茜が気にかけているのはこの青年の事なのか?」
突然、渚がそんな事を言い出した
「・・・・・・・違います。」
私は否定していた 
「そうなのか・・・・・・・・。」
渚の顔は無表情だった。私の中の全てを分かってしまっている・・・そんな表情だった
そう・・・・・
浩平が空き地で私を見つめていた時のように

長い時間がたったような気がした
渚が口を開いた
「茜・・・・・・・この世界をどう思う?」
私は少し周りを見て言った
「・・・・・寂しいです。」
きれいな景色・・・・のようにも見える
でも・・・・・・
「そうか・・・・・・茜もそう思うのか・・・・・。」
渚はこう言って笑った。自虐的な笑いだった

「初めにここに来たとき、僕もそう思った。」
「こんなはずじゃない、って。」
渚・・・・・
「大切な宝物を忘れていたって思ったんだ。」
えっ?
「大好きな人のことを。」
あなたは・・・・・
「だから茜を連れてきてしまったんだ。」

「取り返しのつかない事をしてしまったんだ、僕は・・・・。」
「渚・・・・・。」
私はうずくまった渚を抱きしめていた

「いいんです。渚。」
私が決めたことですから・・・・・もういいんです


「よくねえよ、全然。」

聞き覚えのある声

顔を上げた私たちの視界に飛び込んでくる人影
見慣れた風貌
そして何もかも見通すような目を持った人

「・・・・・・・浩平。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
折原 浩平

初めはただの冷やかしだと思っていた
だから相手にしなかった
でも・・・・・

『うまそうだよな。その弁当』
『たい焼き屋行くんだが・・・・一諸に行くか?』
・・・・・・・・・・・・・・・

いつの間にか私の心の中に入り込んでいた

私は彼の事が好きだったのでしょうか

答えを出せないまま・・・・・・・・今、私は”ここ”にいます・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうやって・・・・君はここへ・・・・・。」
渚は呆然とした顔で浩平に言った
「渚・・・・あんたの世界は壊れかけているんだよ。だからオレみたいな他人が入ってこれるんだ」
浩平は無表情でそう言った
「なぜ・・・・・。」
「茜のおかげだよ。」
突然私の名前がでてきた
「・・・・どういう事ですか、浩平。」
「本来、”自分の世界”と言うものは本人しか居られないんだ。」
つまり・・・・
「・・・・・たとえ愛する人でも呼び込んでしまうと崩壊してしまうということか・・・・・。」
渚は自嘲気味にそう言った

「オレがここに来られたのはそれだけじゃない。一人じゃ無理だったからな。」
えっ?一人じゃない?
と、浩平の後ろの右からかわいらしい、幼い女の子が顔を出した
そして・・・・・
「どうしてもついて来るって、きかなかったんだよな・・・・。」
言い訳のような事を言う浩平の左からおずおずと出てきたのは・・・・・

「・・・・・・・・詩子。」

私の親友、柚木 詩子だった


「茜!!」
詩子は私に飛びついてきた
「心配したんだから・・・・・・本当に心配したんだから・・・・。」
涙を流しながら顔をすり寄せてきた
少ししか離れていなかったのにすごく懐かしいような気がした
そして・・・・・うれしかった
私も詩子を力一杯抱きしめた
私たちの間にそれ以上の言葉はいらなかった


「お兄ちゃん・・・・・・なにぼーっと見てるの?」
幼い女の子にそう言われて、はっとした浩平が私に言った
「茜・・・・・・あいつと先に帰っててくれるか?すぐ帰れるようにするからさ。」
まるで買い物に出かけた帰りのように聞こえた
「・・・・・・浩平はどうするのですか。」
「オレはまだやることがあるからな・・・・・・・。」
そう言って浩平は女の子の方に歩き出した

「浩平・・・・・・・。」
私の中で小さな痛みが胸を刺激した
じっと浩平を見つめる
詩子も
渚も
浩平を見つめていた

浩平の足取りが止まった

「そんな目で見るなよ、茜。また、その気になっちまうぞ。」

そして・・・浩平は言った

「お前はまだふられてないんだから・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


私を縛る想いは断ち切られた


「・・・・・・・・はい。」
不思議と涙は出なかった


「待ってよ、浩平!」
詩子が走って浩平に追いついた
「ずっと一諸だって約束したじゃない。」
「みさおー、男二名なー。」
「だれが男よ!」
「早くー、時間が無いよー。」

三人の声が小さくなっていく・・・・・

最後に聞こえた声は二人ほぼ同じだった

「「必ず帰ってくるから・・・・・茜、渚・・・・・」」

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気がついたとき、私と渚はあの空き地にいた。

「浩平・・・・・・うそつきです。」

「私、ふられたんですよね・・・・・・・・・・・・浩平には。」

今になって涙が流れた。
たった一滴だけの涙が・・・・・・・・。


ばさっ、と私の背中に服がかかった。
「帰ろう、茜。」
全てを包み込むような口調で渚がいった。
「はい。・・・・送ってくれますよね。」
「ああ。」

歩き出した渚が言った。
「詩子にも・・・浩平だっけ、彼にも礼をいってないな・・・・・・。」
「・・・・二人とも根にもつタイプではないです・・・・・。」
「そ、そうだっけ?詩子って。」
「はい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

浩平、詩子、そして渚、みんな私の大切な人です・・・・・・・・・・・
だから・・・

早く帰ってくださいね・・・・・・詩子、そして浩平。




エピローグ


平穏な日々・・・・・・・・・・日常が日常であるように・・・・・・・・
四人であの公園を歩こう・・・・・・・・・・・。


「留年・・・・・・・マジかよ・・・・・・・・・。」
「あたしも・・・・・・・・・なんで?」
「・・・・・・当然です。」
「・・・・まあ、たしかに・・・・・・(汗)。」


輝く季節、それは彼らの目の前に来ている。


「納得いかーん!渚!変わってくれ!!」
「あっ、渚くーん。わたしもお願いー。」
「ええっ、無理だって!」
「・・・・・・・無理です。」


なぜなら・・・・・・・・・・
それは彼らの”想い”が生んだ結末なのだから・・・・・・・・・

(曲:輝く季節へ)



三つの想い  END

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完成じゃあああああああああ!!!!!!!!
と、いうことで変身動物ポン太です。最後の視点、茜様です。
茜様の想いは報われませんでしたか・・・・・(茜様ファンのみなさま、ごめんなさい)

裏ポン太:茜様の幼なじみの渚、浩平以上によわよわじゃねーか。

げごがふっ!!(四回目の吐血。死ぬな・・・・・・こいつ)

・・・・・・・・・・・・・・(おっ、一分で生還。)

ポン太:ううう、不満点は山ほどあるわい!!例えば・・・・
裏ポン太:(2)のあとがきで”このSSは詩子SSです”って言ったのに・・・・・調整失敗か。
ポン太:っていうか調整してない。当初の構想そのまんまですな。
裏ポン太:”大晦日の夜に”を出した意味って一体・・・・・・
ポン太:あと、後半&エピローグが弱いな・・・・・精進せねば・・・・・。

ポン太:詳しい解説&先輩がたのSSの感想は明日出す予定の”感想・解説SS”でしまーす。
裏ポン太:五日間連続SSUP計画、”メルトダウン”(←センス最悪)は出来そうだな。
ポン太:と、言うわけで、裏ポン太君。(にやーりと笑う)
裏ポン太:な、なんやねん。
ポン太:このSS以外のUPされている49個のSS、ぜんぶコピーしてこい!!!!
裏ポン太:でー!!!全部、感想書くつもりかいなー!!
ポン太:目標はそうだね。
裏ポン太:ひーん。

ポン太:と、いうわけでみなさん、また会いましょー。

1998.12.3