「あなたはふられたのよ。」
・・・・・なに言ってるの、私。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
なにも答えてくれないよね、浩平。
「あなたはふられたのよ。」
・・・・・まだ言うのね、この口は。
なぜ、私の口はこんなこと言うの?
・・・・・ミテイラレナカッタ、コウヘイヲ
・・・・・アカネトオナジヨウニナッテイタコウヘイヲ
そうじゃないよ。ううん、それだけじゃないよ。
私は・・・・・・・・
もう言わないで何も・・・・・
私なんかの言うことなんて聞かないでよ・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・そうだな。」
虚ろだった目にほんの少しの光がもどった。
私の好きな彼の目に。
そして・・・・・・彼は言った・・・
「ふられたんだ・・・・・・・・・・・・・オレは」
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1月26日
茜は私と折原君の前で消えてしまった。
「ごめんなさい・・・・・。」
たった一言の言葉を残して・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
私は茜の親友・・・・・・・・・だった。
幼稚園からいつも一諸
俗に言う幼なじみという関係
「私たち親友だよね。」
「はい。」
「・・・・・・茜、またそれ食べてるの・・・・・・・。」
「おいしいです。」
「茜ー、遊びにきたよー。」
「授業、始まります・・・・・・。」
いつも二人・・・・・最近はこうへ・・折原君も入れて三人・・・・そのはずだった。
でも・・・・私は思い出した。
もう一人の幼なじみの存在を。
渚
私が最初に本気で好きになった人。
私は彼を忘れた。
『この人、茜の知り合い?』
・・・・・・好きだったはずなのに、どうしようもなく好きだったはずなのに・・・・・
『詩子は覚えていないのですね・・・・・』
空き地で”待っていた”茜に言われた言葉。
茜は覚えていた、渚のことを。だから待っていた。ずっと・・・・・・
なぜ茜は渚のことを覚えていたのかな・・・・・・
好きだったから・・・
大好きだったから・・・・・
そんな茜の想いが伝わってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「茜・・・・・・私よりもずっと、ずっと渚のこと好きだったんだ・・・・・それなのに私・・・・・・渚のこと忘れて・・・・他人扱いして・・・・・ごめんね。」
全てを思い出して私は立ちすくんだ。
『私たち親友だよね。』
『はい。』
ごめんね・・・・・・・茜。
「詩子!先に行くぞ!」
折原君の声が頭の中に虚ろに響いた。
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茜のことを覚えている人はいなかった。私と折原君を除いて。
みんな忘れてしまった。あの時の私のように。
折原君・・・・・いや、浩平は私に言った。
「詩子・・・・・・・・お前は知ってるよな。里村 茜という女の子が存在したことを。」
みんなの反応を知った後のことだ。
「・・・・・忘れるわけないじゃない。親友なのよ、私は。」
ほんとは泣きたかった・・・かもしれない。でも私は無理に笑顔を作った。
浩平だって・・・・・・。
「オレ達だけでも覚えていれば・・・・・・。」
「覚えていれば?」
「もどっ・・・・・いや、そんなことないか。」
戻ってくる。
浩平はそう言って歩き始め・・・・・・
「オレはあいつのことも忘れないぞ、絶対。」
「・・・・・渚のこと?」
浩平・・・・・
「戻ってきたら一発ぶんなぐる。茜を待たせた罰だ。」
「それだけ?」
「ああ。」
浩平・・・・・・それで本当にいいの? あなたは・・・・・茜のことが・・・・・
いいんだ、それで。
浩平の想いが伝わってきた。
浩平が帰った後で気づいた。
「そう言えば浩平・・・わたしのこと詩子って呼んでたな。」
だから私も折原君じゃなくて浩平と呼んでるんだけど・・・・・・心の中で。
こんな時なのになぜか・・・うれしかった。
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2月6日
久しぶりに茜の学校へ行く。
長森さん、七瀬さん、澪ちゃん。私のことは覚えてくれた。
ただ覚え方が・・・・・。
「あっ、柚木さん。おはよう。浩平ならあっちだよー。」
「あなたも物好きねー、よりによって折原とは。」
『二人、とっても仲良しに見えるの』
あたしは浩平の彼女・・・・・・・という扱いになっている。
「そんなんじゃないよね、折原君。」
「いや、オレと柚木にはふかーい因縁と絆が・・・・・。」
「ないってば。」
浩平は面白がっているのか、否定はしていないけど・・・・・・・
呼び方が柚木に戻ってしまった。
だから私も呼ぶときは折原君だ。
やっぱりあの時、詩子って呼んでくれたのは茜がいなくなった直後だったからなのかな・・・・。
もうすぐ授業が始まると浩平に教室を追い出された私に、長森さんが声をかけてきた。
「柚木さん、あとで時間ある?」
「一応学校にもどらなくちゃいけないから・・・・・・放課後ならいいけど・・・・」
「じゃあ、放課後に屋上でまっててね。」
なんだろう、長森さん。
・・・・・・・・・・・・・・
私は走っていた。・・・・・・あの場所へ。
長森さんの話はこうだった。
「ここ1週間くらい浩平が変なんだよ。学校が終わったらすぐに帰っちゃうんだけなんだけど、おととい私が帰っていく時あの・・・・柚木さん、浩平の家から学校の間の空き地って知ってるかな?」
まさか・・・・・・・・
私がうなずくと、長森さんは続けて、
「その空き地で浩平がずっと立ってるんだよ。なにしてるのって聞いたら”待ってるんだ”って言ったきりなんだよ。きっと1週間続けてるんだよ。これは変だよ、絶対。」
そこまでで十分だった。私は長森さんの話を最後まで聞かずに屋上を飛び出した。
運が悪かった。屋上から昇降口に行く間に一人の教師につかまってしまった。
髭のある浩平達の担任しか見たことなかったから油断していたのだ。
偶然通りかかった七瀬さんに助け船を出してもらってなかったらもっと時間がかかったのは間違いない。
しかしかなりの時間をロスしていた。
私が昇降口を飛び出したときには雨は本降りだった。
「これじゃあ・・・・・まるであのときじゃないのよ!」
茜の消えた日・・・・・・そっくりだった。
七瀬さんに貸してもらった傘がなければあの場所へ行けなかっただろう。
雨の降る空き地
彼はそこにいた。たった一人で・・・・・。
彼はぐしょ濡れで目は虚ろだった。でも私の方を向いてこう言った。
「茜か・・・・・・遅かったじゃないか・・・・・」
浩平・・・・・やっぱり茜のことをまだ・・・・・
「詩子も・・・・オレも・・・・心配してるんだぞ。親友に迷惑かけるなよな・・・・・」
「!」
浩平はそのまま崩れ落ちかけた。
「浩平!!」
私は浩平を抱き留めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガタンッ
起きたようだ。彼が。
「入るよー」
ドアを開いて中をのぞき込む。
「・・・・・・?」
ベットの上で体を起こした浩平が不思議そうな顔で私を見ている。
周りを見回してここが自分の部屋だということを確認している。そしてまた不思議そうな顔で私を見た。
「こうへ・・・折原くんはあの空き地で倒れたのよ。それをこの詩子さんがここまでつれてきたのよ。感謝しなさい。」
わざと明るく言ってみる。でも浩平はいつもの軽口で返してくれなかった。
「・・・・・・・・」
ただ頷くだけだった。
私はいたたまれなくなっていた。早口で言った。「じゃあ落ち着いたら、また上がって来るね。」
部屋から出ようとした私の目に虚ろに頷く浩平の姿が写った。
もう限界だった。
ごめんね、茜
そして・・・・・・・・
「あなたはふられたのよ。」
ごめんね、浩平。
「あなたはふられたのよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・そうだな。」
「ふられたんだ・・・・・・・・・・・・・オレは」
泣きたかった。
私は折原浩平のことがどうしようもなく好きだったんだ
それなのに・・こんなことを言ってしまうなんて。
「帰るね・・・・・・・。」
私はそう言って階段を降りようとした・・・・・
「あっ!」
私を後ろから抱き留める温かい腕
私の2番目に本気で好きになった人の腕
「詩子・・・・・・ありがとう。」
・・・・・・・・ありがとう浩平。私を選んでくれて・・・・・・。
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はい、変身動物ポン太です。このSSは(3)まで続きます。まだ終わってません。
ようやくこのSSのヒロイン、詩子の視点ができました。
つまりこのSSは詩子SSです。間違えた人、ごめんなさい。私の表現力不足です。
えっ?ショートストーリーコーナーにKOH様の詩子SSが置いてあるって? ((1)をUPするまでホントに気づかなかった。ごめんなさい。)
・・・・・・・・・・・(KOH様のSSを大学でコピー。読んでいる。)
・・・・・・・・・・・(自分のSSを読み返している。)
げふがふっ!!(KOH様のSS(素晴らしい)と自分のSS(ひどい)のあまりの差に大吐血したらしい。)
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・(20分たったようだ・・・・あ、起きあがった。)
ううっ、KOH様のSSはゲーム中で使える位、ストーリーがいいのに私のSSときたら・・・・・・・。
詩子は詩子っぽくないし、なんか浩平はよわよわだし・・・・・・・精進せねば・・・・・・。
<感想>
諸先輩方のSSは恐れ多くて書けませーん。ごめんなさい。(KOH様のは書いとるやん・・・・。)
それでは(3)でまたお会いしましょう。
1998.12.1
追伸 まてつや様、茜っちほしいです。