剣技修行ZERO NO.2 投稿者: ブラック火消しの風
夢の事が気になったが修行場を離れて家に向かった。
体がかなり疲労していた。歩くのがやっとだった。


「ただいま・・」
「お帰りなさい。」

台所の方から声が聞こえた。
僕は台所に行った。

「今日はアルバイトは?」
「今日はお休みよ。」
「そう。」
「また、修行してたの?」
「うん、そうだけど。」
「ずいぶん疲れてる顔してるけど、大丈夫?」
「大丈夫、いつもの事だから・・・」
「大丈夫ならいいんだけど・・・」
「僕、もう寝るから。」
「もうすぐ夕御飯できるけど?」
「いらない。今日は、もう、疲れたから・・・」
「そう、わかったわ。」

僕は部屋に戻りそのまま眠りについた。

・・・・・・・
・・・・
・・・

「シュン、これがアルテマブレードよ。」
「うん、すごい技だね。」
「この技が私に教えられる最後の技よ。」
「すぐに使いこなしてみるよ。」
「そうね、シュンならできるわ。がんばってね。」
「(姉さんのためにがんばるよ。)」
「その必要はないわ。」
「え!?」
「私には他に守ってくれる人がいるから。ふふふ。」
「姉さん?ねえさあああああん!!」

・・・・・
・・・・・・・・

「はあ、はあ、夢か・・・」

時計を見るともう遅刻だった。

「いいや、なんかだるいから寝てよ。」

僕は再び眠りについた。

・・・・・・
・・・・
・・・

「ねえ、シュン君、君にお願いがあるんだけど。」
「柳、さん、なにか?」
「悪いけどこの家から出ていってくれないか?」
「なに言ってるんです、ここは僕の家ですよ。」
「君のお姉さんと一緒になるには邪魔なんだよ、君が!」
「そう、確かに邪魔ね!」
「え!?姉さん?」
「シュン、あなた卒業したら出ていってよ。卒業式行ってあげるからさ。」
「ちょっと、姉さん?」
「シュン、強いんでしょ?毎日修行してるんだから。」
「でも、これは・・・」
「私のためにとでも言いたいわけ?」
「・・・・・」
「だったら、あなたのやってきたことは全て無駄だったわね。」
「なんで、なんでそんなこと言うんだよぉぉぉ!」

・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・

「ま、また、夢?・・・」

毎日こんな夢が僕を襲ってきた。
僕はその夢を見るたびに精神が破壊され心が歪んでいった。
いつしかこんなことを心に思っていた。

「姉さんさえ、姉さんさえいなければ・・・」

僕はもう疲れた。こんな生活に。姉さんは実際、夢で見たようなことは
口にはださない。だけど、言う可能性はあるように思えてしまう・・・
最近ではもう、ほとんど会話もなくなった。
そのことが余計にそう思わせた。
もう、僕に人を信用する心がなくなっていた。
そういう日が何日も過ぎて卒業式の日がやってきた。
卒業式の日、僕の姿はそこにはなかった。

「・・・あーあ、やっちゃった。」

いつもの修行場の草むらに寝ころんで空を眺めていた。

「楽しみにしてたはずだったのにどうしてこんなふうになったんだろ・・・」

僕はただ、ただ空を眺めながら無駄な時間をおくっていた。

・・・・・・・
・・・・・
・・・

やがて日が落ちてあたりがだんだん暗くなっていった。
空に月を確認したとき起きあがった。

「さて、どこに帰ろうかな。」

ゆっくりと歩いていると遠くに姉さんの姿があった。
僕は立ち止まり姉さんを見ていた。
姉さんは僕に気がつくと近づいてきた。

「シュン・・・最近、どうして・。」
「姉さん・・・どうしてこの場所がわかったの。」
「ミユちゃんに教えてもらったのよ。」

姉さんはとても悲しそうな顔で僕に話しかけていた。

「姉さん・・・これ以上、近づかないで。」
「え?!シュン?」
「そのまま引き返して、お願い・・・」
「なんで?どうしてそんなこと言うの?」
「・・・・・」

しばらく沈黙が続いたが、姉さんは何かを決心したように
再び僕に近づいてきた。

ヒュッ!

僕は剣を姉さんの首に突きだした。

「これは・・・アルテマブレード。」
「はい、姉さんに教えてもらった剣技です。レベル四百二十五まで
 昇華しました。もし、これ以上、僕に近づいたら、姉さんを殺します。」

この剣技に少しでも触れれば爆発がおこり光と衝撃で相手を粉砕する技。
このレベルなら跡形もなく消えてしまうだろう。
僕は姉さんが引き返してくれることを願った。

「・・・いいわ、私を、殺して。」
「!!!」

予想外の言葉に僕は震えてきた。

「あなたがそこまでするなんて、私はよっぽどあなたを傷つけるような
 事したのね・・・」

姉さんは下を向き涙を流していた。

「(違うんだ姉さん、僕が悪いんだ、僕の心が・・・姉さんはやさしすぎるよ
  そのやさしさが僕を・・・)」

「だめだ、僕にはできない。」
「シュン・・・」

「フフフ。」

右の方の岩から女の笑う声が聞こえ、僕たちが振り返った瞬間
何かが飛んできた。

「これは、アルテマブレードの光!」

飛んできたアルテマブレードは僕のアルテマブレードとぶつかり
爆発を起こした。

「し、しまった!」

ブーーーン、ズ、ガォォォ

・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・


「う、・・・」

僕が気がつきまわりを見ると全てが吹き飛び荒れ地となっていた。

「全て・・・終わった。」

姉さんの姿はなかった。消えてしまったのか・・・
僕が殺したんだ。もし、あのとき姉さんにアルテマブレードを向けて
いなければ、そんなことしていなければ・・・

「シュン・・・」

気がつくとそこにはミユがいた。

「これはあなたが?」
「そうだよ・・姉さんを殺したのは僕だよ。」
「・・・」
「もう、僕にはつきあわなくていいよ。」

僕が全ての罪を背負おう、自分にも他人にも。
そして僕はまだ自分をやめる訳にはいかない。
あの女を、殺すまで・・・


ブラック火消し「読んでくれた方々、感想をくれた方々どうもありがとうございます。
        それでは失礼いたします。」