新しい生活 NO.5 投稿者: ブラック火消しの風
ブラック火消しの風「よろしければお読みください。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 俺はあの夜をさかいに前向きに生活をおくっていた。
 さとみさんは俺に対してまるで家族のようにやさしくしてくれた。
 とても楽しかった。いろいろあり、時にはけんかしたりもしたがそれも幸せの一つだった。
 もう、昔の記憶が戻らなかったらそれでもいいと思っていた・・・
 しかし、俺には何かやらなくてはいけない事があったような・・・

浩平「さとみさん、お願いします。あなたの知ってるかぎりの折原浩平を
   教えてください。」
さとみ「さあ、私は、」
浩平「お願い、します。」
さとみ「・・・わかったわ、教えましょう。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・

さとみ「ふう、という感じかな。」
浩平「それが、真実の俺、ですか。」
さとみ「・・・そう、本当のあなた。」
浩平「本当の俺?」
さとみ「実感ないわよね。」

 すべてを聞いた。俺は家族を事故で亡くしていること、妹がいたこと、
 そして、別々にひきとられたこと、そして・・・妹は病気で死んだこと、
 そのあとの生活のこと・・・・・まるで別人に思えてきた。

浩平「あの、さとみさん・・・妹の、名前、おぼえてますか・・・」
さとみ「えっと、・・・」
浩平「みさお・・・」
さとみ「・・・多分、あってる。記憶、戻ったの?」
浩平「・・・なんとなく、わかったんです。」
さとみ「そう。」
浩平「教えていただきありがとうございます。」
さとみ「うん。浩平君、昔がそうだからってことで今もっていう
    考え方だけはやめなさい。」
浩平「はい。」

 俺は部屋に戻り、ベッドに入った。

浩平「なあ、長森。」
瑞佳「なに、浩平?」

 向こうのベッドから長森の声が聞こえてくる。

浩平「もし、一つだけ願いが叶うとしたら、どんなことお願いする?」
瑞佳「うーん、毎日幸せに生活がしていたいかな。」
浩平「長森らしい、答だな。」
瑞佳「浩平は?」
浩平「俺か、そうだな・・・記憶戻してほしい、かな。」
瑞佳「・・・・・」
浩平「俺、さっきさ聞いたんだよ、昔の俺。」
瑞佳「・・・ど、どう思ったの?」
浩平「別人みたいだって、思った。」
瑞佳「・・・・・・・」
浩平「もう寝ようか、・・・おやすみ。」
瑞佳「おやすみ・・・」

 ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

瑞佳「浩平、ふ、ふああ、朝、朝、来たよ。」
浩平「んあ?朝?夜はどうした?」
瑞佳「んん、夜はもういないよ。」
浩平「んか、じゃあ、起きよう。」

 俺は支度をして学校に向かった。
 学校につき、教室に入るとクラスの雰囲気がおかしかった。

和也「おい、今日は持ってきたんだろうな?」
智「うううううう。」
健一「持ってきたよね?」

 体の小柄のほうの生徒がなにやら二人組に渡していた。

和也「これ、かりとくぜ!」
健一「また貸してくれよ?ははは。」

 二人組は教室を出ていった。
 そしてその生徒は・・・

智「うう、僕が、僕が何をしたっていうんだ!」
浩平「なぜそれをやつらに言ってやらん。」
智「言ったって、やめてはもらえないさ。言えば・・・殴られる。」
浩平「だけど、このまま続いてもいいのか?」
智「やだけど、言うことさえ聞いていれば痛い思いをしなくてもすむ。
  この学校にも僕みたいに何人もああやって脅しとられてるやつは
  いるんだ・・・僕、もう席に戻るね。」

 そう言うと席へと戻っていった。

浩平「長森、あいつは?」
瑞佳「え?柳瀬智君、浩平が転校してくる3週間前に転校してきたんだよ。」
浩平「そうか・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・
 今日の授業がすべて終了した。

浩平「さて、屋上にいくか。」

 ・・・・・・・
 ・・・・・
 屋上につくといつも座ってる場所に人の気配がした。

浩平「先輩?今日ははや・・」
智「あ、折原君、・・・」
浩平「お前も夕日見に来たのか?」
智「いえ、・・・」

 しばらく黙ったまま二人は空を見ていた。

浩平「お前、俺より少し早く転校してきたんだってな?」
智「はい。でも、転校しなかったほうがよかったです。」
浩平「なぜだ?」
智「だって、前の学校とほとんど同じだから・・・」
浩平「・・・俺でよかったら話、聞かせてくれ。」

 俺は智の話を聞いた。友達がいないことや前の学校でも
 お金や物をとられたこと。そして、生きることに望みを失っていること。

浩平「なぜそこまで俺に話し、してくれたんだ?」
智「なんでですかね、僕にもわかりません。だけど、少しすっきりしました。」
浩平「・・・・・・・・」
浩平「俺と、友達になろう。」
智「え?」
浩平「俺もちょうどほしかったんだ、友達。」
智「い、いいんですか?」
浩平「何、言ってんだ。もっと自分に自信を持て、そうだ!えっと、これ
   貰ってくれ。」

 俺は、緑色の石を渡した。

浩平「きれいだろ?その石ともう一つ紫の石も川で拾ったんだ。
   だから片方お前にやる。」
智「う、うん。ありがとう。ありがとう。」

 智は泣きながらお礼を言っていた。

浩平「ば、ばか。泣くな。」
智「うん、うん。」
浩平「もう、帰ろう。」
智「うん。」

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・
 次の日、俺が教室に入ると、

智「折原君、おはよう。」

 元気よく挨拶してくる智の姿があった。

浩平「おう、おはよう。調子はどうだ?」
智「うん、そこそこ。」

 智はまるで別人みたいだった・・・よほどうれしかったのだろう。
 智と話をしていると昨日の連中が入ってきた

和也「智くーん、ちょっとお話があるんだけどー。」
浩平「何か用か?俺もつき合おうか?」
健一「げっ、いえ、なんでもない。帰るぞ、和也。」
 
 二人組はさっさと退却した。

浩平「ほらな、二人でいればなんともないだろ?」
智「う、うん。」

 ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・

和也「くそ、智のやつ!」
健一「あいつは関わらない方がいい。」
和也「くそ!むかつくな!・・・おい健一、智の家知ってるか?」
健一「大体は。」
和也「くく、よしよし・・・」

 ・・・・・・・
 ・・・・・・
 今日の授業も終わり家に帰ることにした。

浩平「じゃあな、智。」
智「うん。さよなら。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・
 次の日、俺が学校にいって聞いたことは・・・

浩平「長森!今、なんて言った!?」
瑞佳「智君が、大けがで入院したって・・・」
浩平「ばかな!!」

 俺は速攻で智の入院する病院へと向かった。
 ・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・
 俺は病院につくなり近くにいた看護婦に智の病室を聞き、そこに向かった。

浩平「智!!」
智「折、原君?」
浩平「大丈夫か?大丈夫なんだな?」
智「う、うん。そ、それより、こ、この石・・・」

 智が俺に見せた石はぼろぼろになっていた。

智「ご、ごめん。守れなかった、せっかく、せっかく。」
浩平「ばか、こんな石のために、そんな目にあって。」
智「だって、僕の、僕の最初の友達からもらった大切な物だから
  大事にしたかった。これだけはって・・・でも身体がついてこなかった。」
浩平「さ、智。」
智「眠いから、寝てもいい?」
浩平「おう、いいぞ、・・・また、明日来るよ。」
智「うん、ありがとう。」
浩平「じゃあな。」

 俺は病室を後にした。

智「さようなら・・・浩平。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・
 俺は家に帰りこれからのことをベッドで考えていると
 いつの間にか眠りについていた。明日、おきる事をしらないまま・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブラック火消しの風「読んでくださった方、どうもありがとうございます。
          それでは失礼します。」