きっと・・・・ 投稿者: 風林火山
「・・・忘れます」
「・・顔も」
「・・・声も」
「・・・・全部、忘れます」
分かっていた。彼女がオレの事、忘れることができないと。

・・・・自分が消える。それを知ったとき、オレは愕然とした。
みんな、忘れてゆく。そんな中、アイツはオレを忘れなかった。
・・・・最後まで。
アイツ。いや、彼女は立っていた。
雨の中、たった一人淋しそうに佇んでいた。だから、オレは救いたかった。
アイツを。彼女を。なのに、、、、、
また彼女を悲しみの淵に立たせることになってしまった。
オレみたいな男のために。出来るなら、、、罵声を浴びせて欲しかった。
罵って欲しかった。お前はバカだって。なのに、、、、彼女は穏やかで、、、
悲しみを目の裏に隠してるのは明らかだったのに、、、、
一生懸命涙をこらえて、、、、、なるべく見せまいとして、、、気丈で、、
自分とそしてオレを傷つけまいとして、、、だから、、、よけい辛かった。
「・・・あなたのこと、、忘れます」
・・・そうしてくれ・・・よっぽどそう言いたかった。こんな・・・
オレなんかの事、もう忘れてくれ。、、忘れられるのは辛いけど、、、
それでも、、オマエの事、、好きだから、、だから、、、忘れてくれ・・・
心の中で、そうこだまする。でも、言えなかった。
言えば必ず、彼女を傷つけてしまうのが分かっていたから。。
いや、それさえ言い訳、逃げだ。オレは、なにも言えなかった。。。
そして、、、彼女がオレのこと、、、忘れられないのは分かっていた。
口ではああ言っているが、オレの事、、。辛かった。自分が許せなかった。
どうして、こんな事になっちまったんだろうな。

・・・帰る場所もなくなった。なのに、またオレはあの場所に向かっていた。
アイツを初めて意識した、あそこへ。
♪あ〜 だから今夜だけは 君を抱いていたい
商店街を通るとき、なつかしいその曲が聞こえた。
♪旅立つ僕の心を 知っていたのか 遠く離れてしまえば 愛は終わると言った
そのワンフレーズにギクリとする。
(旅立つ僕の心を、、、か)涙が突然、あふれてくる。雨と一緒に、
それは頬を伝った。
(そうだ、、アイツが、、、オレの心、、分かってないはずがない、、、
オレは、、オレは、、、なんて、、、バカなんだ、、)
気がつくと、走り出していた。あの場所に向かって。
そこには、彼女がいた。
「よォ!なにしてんだこんな所で」
「知らない!」拒絶。どうして、、、こんな事になっちまったんだろうな。、
「・・また人違いだったみたいだ、、」
「・・・待って」突然、彼女が呼び止める。
「話、しませんか」・・・そして。
オレは旅だった。ゴメンな。またオマエを苦しませることになっちゃって。

━━━━━気がつくと、あの場所に立っていた。
もうどれ位の時間がたったのだろう。
あのときと同じ、雨だった・・同じでもないか。
そこには見知らぬ建物があった。
(つい昨日、旅だったばかりなのにな。)
分かっていた。ホントはもっと時間が経っていること。
認めたくなかった。浦島太郎になるのが恐かったから━━━━━

そこは、、、やたらかなしくて、、でもやすらげて、、いつもそばには
みさおがいて、、、くうきょで、、みたされなかった。
のぞんだせかいなのに?コレは何かちがうんだ。そう思っていた。
ときどき、あのこのこと、おもいだす。あのこ?そう、あのこだ。
ぼくがココに来るまえ、ぼくのいちばんたいせつな人だった、あのこ。
あきちでいしきした、あのこ。・・・その世界で、オレは2人いた。
幼い自分と、それを客観的に見てるオレ。みさおもいた。
なのに。どこか満たされなかった。ずーっと考えていた。
答えが出たとき、オレはこの世界に戻ってきていた。


(ココ、どこだ?)そう思った。(とりあえず、帰ろう)
でも、どこへ?
(オマエ、浦島太郎だぞ。戻る家なんて、どこにもねェ筈だ)
(けど、行かないよりマシだ)行こう、由紀子さんの家へ。
(行ってからどうするか決める。それに、あの家にさよなら言いたいしな)
無理矢理自分に言い聞かせ、家まで戻る。家の前には車があった。
見慣れた車。由紀子さんのだ。・・・・多分。そう思っていると、
家の中から誰か出てきた。由紀子さんだ。(やっぱり、間違いなかった。)
そんな風に考えてると、突然、声がかかる。
「あ、、、あんた、久しぶりに見たわ。。。そうねェ、、1年ぶり位、、、
てあなたびしょ濡れじゃない!すぐに風呂に入りなさい!風邪ひくわ!」
そういうと由紀子さんはさっさと車に乗り込み、行ってしまった。
・・全く、この人は・・苦笑すると同時に、安堵が胸をいっぱいにする。
・・一年ぶり・・まだ、一年程度しか経ってないか・・・とりあえず、
オレの居場所は戻ってきた。風呂に入り、重大な事実に気づく。
「服が、、、ない」そういやそうだ。家財道具、一切なし。仕方がなかった。
「ま、この時間だと人もこねェし、乾かすか。」幸い
この家には乾燥機もある。1時間ほどはかかった。多少寒かったが、
仕方なかった。その間に腹ごしらえをし、色んな事を考えた。

いままでのこと、そしてこれからのことをだ。ふとカレンダーに目をやる。
やっぱり1年程度しか経ってなかった。安心する。
「明日・・・・アイツに言おう、、帰ってきたぞって、、」
ちょうどその時、乾燥も終わった。とっとと着替え、明日に備えて寝た。

「・・・ヘえッくシ!」次の日は結局、朝から起きれなかった。
しょうがない、、、明日こそは、、、そう思い、夕方まで寝る。
夕焼けの空の赤さで目が覚める。体は完全に(とまではいかなかったが)
直っていた。ふと枕元を見ると、服が置いてあった。
由紀子さんが買ってきたモノだろう。横には手紙もあった。
“服を捨ててゴメン!一応、コレだけ置いておく。由紀子”
きっと由紀子さんはなんで服を捨てたか憶えてないだろう。
けど、事実として服を捨てた記憶があった。だから買ってきたんだと思う。
とにかく、今はその気持がありがたかった。
さて、、やることもないし、、、電話してみるか。
・・・誰に?もちろん、ヤツにだ。
《ハイ、住井ですが》本人だ。
《こちらはNTTです。お客様がおかけになった・・・》
《なんだ、オマエか。随分久々だな。どうしてた?今まで》
さすが長い付き合いだ。一年のブランク程度じゃさすがに憶えていた。
オレの事。
《イヤ、別に》
《そうか、なら別にいいけどな》住井はいいヤツだ。そう思う。
《今日はオマエに聞きたいことがあってな》
《あぁ?なら早くしてくれよなァ。オレは忙しいんだ》
《あぁ、なるべくそうするよ。で、早速本題だ》
《なんだ?もうか?》
《アイツ、どうしてる?》
《アイツ・・・あぁ、彼女なら元気だよ》
さすが親友。言いたいことはすぐ分かる。
《彼女、またこの頃元気がなくてよ。一時期元気だったのに》
《一時期?》
《あぁ、え〜と、そうだ、オマエの失踪の直前くらいかな》
《そりゃまた随分前だなァ》
《ま、んなこたァどうでもイイ。他に聞きたいことは?》
《う〜、、じゃ、そうだな、彼女が明日どうすっか知ってるか?》
《知るかよ、ンな事。オレはストーカーじゃねェし》
《いや、オマエのことだ、十分怪しい》
《バーカ。オレに頼りたい気持はわからんでもねェがな》
《バーカ。ンで?全くしらねェのか?》
《そういやぁ、またアイツが来てたぞ。明日が云々って》
《アイツ?》
《ほら、あの賑やかな、、お前に似てる、、、》
《分かった》
《で、他にはねェのか?あのコンテストのこととかさ》
《あのコンテスト?》
結局、電話し終えたのは1時間後だった。
学校のことが出なかったのは、アイツなりの親切だったんだろう。
「まったく、、アイツ、、忙しいんじゃなかったのかよ」
電話を切り、ちょっと住井に悪態をつく。・・・全く、住井ってヤツァ、、
だが、オレの知りたい情報は手に入った。この一年間の彼女の様子も。。。
(彼女はあそこにいる)そう思った。住井の話を聞いているうち、
唐突にそう思ったのだが。いつしかそれはだんだん確信に近くなっていった。
次の朝、それは絶対的な確信となっていた。
(・・そうだ、たい焼き)あのときは結局、探し当てきれなかったもんな。
たい焼き屋は、全く別なところにあった。(オレ、方向音痴なのか?)
ちょっと悔しかった。(アイツと、、オレ、、、それにあの賑やかなバカ、、
もう一人、、、)4つほど買う。
(行くか)道に迷ってたどり着いた、
アイツとのファースト・キスの思い出のあるあの公園へ。
・・・案の定、彼女はいた。あの賑やかなヤツも一緒に。
澪がいるかと思ったが、残念ながらそれだけは外れていた。
なんて声をかけようか━━━━━
(ほら、いつかの約束通り、たい焼きだ)う〜ん、あんまりよくねェな。
(よォ!なにしてんだこんな所で)あのときを思い出しそうでイヤだな。
思い悩んでいると、先に彼女がオレに気づいてしまった。
そして、、オレに気づくと、彼女は突如、泣き出した。。。
でも、、、それがオレに対する嬉し涙だって事がすぐに分かったから、、
彼女はオレにほほえんでくれたから、、嬉しかった。いとおしかった。
そして、そんな彼女を見て、俺に似てると噂のアイツがこちらを振り返る。
「あァッ!やっぱりねェ、あいつは噂をすれば現れるような
 タイプだと思ったのよ」・・・本人を前にして、そういうこと言うか、
フツー。もうちっと考えろよ、柚木。

・・・結局、まとまった言葉見つけきれないまま、、だから、、、
とりあえず、、オーソドックスに、、


「ただいま」・・・・ただいま、茜

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やたら長い上、なんか支離滅裂です。
なんて言うか、心の旅出したかっただけだったりして。
感想・苦情のメール待ってます。
主人公の名前出さないようにするのと、茜を最後まで
名前出さないようにするのがつらかったぁ、、、
だって主人公名前無い方が感情移入しやすいでしょ。
だからね。