Everything here, only ONE 投稿者: ひろやん
よろこび。

「今から合図したら、恋人同士になる」
「うんっ」

いみなんか分からなくてもいい。
だって、しあわせだから。

「じゃあ、スタートっ!」
「うん」

ふたりは『こいびと』なんだから。
だから、うれしい。
でも…

「………」
「ほえ?」

『こいびと』って何?


もうひとつの繭の物語8+1/2
『Everything here, only ONE』


 SCENE 01

しあわせな1日。

「おはよう、繭」
「お、今日も早いな、椎名」

たとえば

「あんた達が遅いだけでしょ、って、ぎゃーーーっ」
「みゅ〜っ」
「ナイスなタイミングだ、椎名。特訓の成果が出たな」
「んな特訓すなっ!」

みんな、えがおでいられるような。
目も鼻も口も耳も、わらっていられるような。

「私は泣いてんのっ!」(注:七瀬)


 SCENE 02

いたい、うれしい。

「椎名…ずっとオレのそばに居たいか…?」
「うん…」

たとえば

「じゃあ、居てくれよな」
「うん…」

心も体もあたたかい、
『こいびと』のきもちよさ。


 SCENE 03

かなしいこと。

「彼女が新しいお母さんだ」
「だから、もう、前のお母さんのことは忘れろ」

たとえば

「繭ちゃん、みゅーはね…」
「だから、お墓作って眠らせてあげよ」

たとえば

「…浩平?誰?繭のお友達?」
「知らないわよ、そんな人。私の後ろの席はずっと空いてたじゃない」

みんな、えがおじゃない。
つめたい。


 SCENE 04

たとえば

「……」

…なんだっけ?

「……まゆ…繭!」

たとえば

「ほら、今日掃除当番だよ。私も手伝うから、早く終わらせて遊ぼ」
「・・・みあ」

こういうことも

「みあ、ありがとう」
「?…早く一緒に遊びたいだけだって」

しあわせっていうのかな?


 SCENE ??

分かること。

「強い子だって思ったからだよ」
「立派だって思ったからだよ」

だって、『こいびと』だから。

昔の涙をふいて、「さよなら」を。


たとえば

「椎名、卒業おめでとう」

しあわせもかなしみも
みんな、えがおになれるような。

「大人になったな」

今の涙もふいて、「おかえり」を。

いみなんて分からなくてもいい。

よろこんで生きていく『こいびと』なんだから。


おわり
(byひろやん&光夜じんB 6/21/99)
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あとがき

10日ほど前に書いた『Something there』の使い回しです。
同じような感じで繭サイトで書いてみました。
中身は思ったより結構違うものになってしまったかな。

「○○は、喜んで生きてますよぉ」
4歳になった姪っ子が言った言葉です。
「○○は、釣りをしておじいさんになっちゃったのだぁ」
なんてことも言ってたから、意味無く言葉を繋いで言ってたようです。
でも、その言葉を聞いた時、正直ドキッとしました。
僕は「喜んで」「生きる」という並列的な使い方、思ったことも無かった。
感性の違いを見せ付けられた気がしました。
(ま、彼女は何にも考えてなかっただろうけど)
というわけで、情けないことに4歳児の言葉を利用させてもらいました。

しかし、ネタを思いついて1日で書き上げたのはこれが初めてです。
前回との間隔が2週間を切ったのも初めて。
いつも真面目に2ヶ月はかかるからなぁ。
そういや、なんか文量少ないや、このSS(笑)
次は、長編繭SSを!(おそらく早くて2ヵ月後)