悲しい雪(前編) 投稿者: 秀さん
ある病院の一室・・・
一人の女性がいる・・・
その女性は窓の外を見ていてる・・・
窓から見れる風景は一面の雪景色・・・
その女性はただ悲しそうにその風景を見ていた・・・
しばらくするとその女性は
ベットから抜け出して
ガウンを羽織り
病室を出て行った・・・・

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その頃
その女性のいる病室の正反対向こうの別の病室に浩平と瑞佳がいた・・・
「住井、お前なぁ〜何が危篤なんだよ}
「わはは〜折原〜そんなに怒るなよ〜こうでも言わないと横着なお前が
 来る訳無いって思ったから嘘をついたんだよ」
「たくっ事故でお前が危篤だって聞いたから、慌てて飛んできたのに、来てみたら
 ぴんぴんしてるじゃね〜か〜」
「まぁまぁ嘘も方便って言うじゃないか、大目に見ろよ」
「嘘にしても性質が悪すぎる」
「ははは・・・しかしお前達まだ結婚しないのか〜?」
「こらっ話しを逸らそうとするんじゃない!!」
「こっ浩平そう怒らないで、住井君は浩平にお見舞いに来てほしかったんだよ、
 ねっそうでしょ、住井君?」
「うんっそうそうさすが長森さん話しが判るなぁ〜」
「なっ長森ぃ〜こんな奴の肩を持つなよ」
「こんな奴とは失礼な、まぁそんな事より・・・でっどうなんだいつ結婚するんだ?」
「えぇ〜いうるさい、俺達がいつ結婚しようとお前には関係ないだろ」
「こっ浩平抑えて抑えて」

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「たくっあいつにはまんまと騙されたよ・・・大した怪我じゃなかったんなら何もこんな大雪の日に来なくても良かったんじゃないか!!」
「ふふふ、そうだね、でも住井君の怪我大した事なくて良かったね」
浩平と瑞佳は住井の居る病室から出て階段へと向かっていた・・・
二人は住井が危篤状態と聞いて飛んできたのだか
これはまったくのデマだったのだ・・・
お陰で浩平は怒り狂っている・・・
それをなだめているのが瑞佳である・・・
二人は階段にさしかかる前にある患者達がよく集まる広いホールへとさしかかった・・・
そこはいつもなら多くの入院患者達で賑わっているのだが
今日は不思議と人影は少ない・・・
しかし浩平はその少ない人影の中からある一人の女性を見つけ出し
立ち止まる・・・
「どうしたの浩平?」
瑞佳が浩平に声をかけるが浩平はそれに反応せずにその女性を見つめていた・・・
年はそう・・・40歳代後半から50歳代前半ぐらい・・・記憶に無いのだが不思議と気になる・・・
いや記憶に無いのでは無く薄れていると言った方が正しいのかもしれない・・・
瑞佳も不思議そうに浩平の見つめている先を見る・・・
そこに立っているのは女性・・・
窓から見れる雪景色を悲しそな雰囲気で見ている・・・
瑞佳には知らない人物だ・・・
浩平の知り合いの人かなっと思うが浩平に聞いても答えてくれそうにない・・・
そしてその女性もどうやら浩平の視線に気が付いたようだ・・・
女性が緩やかに振り返りそして近付いてくる・・・
その時、瑞佳は浩平が一瞬ビクッと震えたように見えた・・・
「浩平?浩平なのね、大きくなって・・・」
その女性から発せられた言葉・・・
瑞佳は驚く・・・浩平は無言だ・・・
そしてその女性はさらに近寄る・・・
しかし浩平は後退る・・・
「浩平、私が恐いの・・・ふふふ、無理も無いわね・・・
 私はあなたを殺そうとしたのだから・・・」
瑞佳はその女性から発せられた言葉に更に驚き言葉を無くす・・・
その女性は更に浩平へと近寄る・・・
浩平はその女性から逃げるように後退る・・・
しかしそれに構う事無くその女性は近寄って行く・・・
浩平の脳裏にあの日の事が甦ってくる・・・

・・・数年前・・・

みさおが・・・みさおがついに死んでしまった・・・
僕はみさおに何かしてやれたんだろうか・・・
僕が元気に外で遊びまわっている間もみさおは部屋から出れず
1日窓の外を眺めているだけだった・・・
僕はみさおに何かいい思い出をあげる事は出来たのだろうか・・・
・・・・・
みさおの四十九日・・・
「折原さんも悲しかったろうに・・・」
「えぇ〜ずっとみさおちゃんの病気が良くなる事を信じていましたからね〜」
仏壇の前で親戚の人や近所の人が雑談している・・・
しかしそこには母の姿は無い・・・
では何処に行ったのか・・・
母の姿は浩平の眠っている部屋にあった・・・
母は無言で浩平を見つめ・・・
そしてかがむ・・・
手を浩平の首の所に持って行き何を思ったのか
いきなり浩平の首を締める
息苦しさに、浩平は目を覚ます
目の前には目から涙を流しながら自分の首を締めている母の顔があった・・・
『お母さんどうして、そんな事するの僕、何か悪い事したの?』
浩平はそう声に出して言いたかったが、苦しくて言えなかった
「ねっ義姉さん、何してるの!!」
この時、後に浩平を引き取る事になる由起子が止めに入らなかったら
浩平は死んでいただろう・・・
「浩平が・・・この子が死ねばみさおが生き返るのよ、だから止めないで!!」
母は正気を無くしているようだった・・・
「義姉さん・・・」
後になって判った事だが、母は重度のノイローゼになっていた
みさおを死なせてしまった事が余程の重圧を与えていたのだ
周りからは、自分のせいじゃないと言われるが、結局は自分のせいなんだと
みさおをもっと丈夫な身体で生んでやれなかったんだと
母は背負いこんでしまう・・・
それが積もりに積もった結果がこの悲しい出来事に繋がったのだった・・・
その後、母は心の治療を受けるべく病院に入院する事になる
浩平は母の側に置いておくと同じ事が起こりかねないと言う事で
由起子が引き取る事になった・・・
この時浩平もちょっとした催眠治療でこの時の記憶を記憶の奥底に
封じられたのであった
しかし、思わぬ場所での母との再会が浩平にこの記憶を鮮明に思い出させる事となる・・・

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浩平が子供の時に受けた2つの心の傷
1つは大切な妹みさおの死
そしてもう1つは母に殺されそうになった事
この2つの心の傷は先に述べた催眠治療によって
記憶の奥底に封じられていたのだが
後に知らず知らず浩平を永遠の世界へと
導く結果となっていたのだった
そして浩平が永遠の世界へと旅立ち帰って来た時には
妹みさおの事は記憶の中に甦っていた
しかしもう1つの記憶は今だ封じられたまま
今まで生きてきたのだが・・・
・・・母との再会・・・
この事が浩平のもう1つの心の傷を思い出させる事になってしまった
・・・・
「くっおふくろ・・・あんたが俺に何をしたのか判っているのか、今まで俺の前にも現れずにいたあんたが・・・あんたに殺されそうになった俺の気持ち判っているのか?!!」
浩平は思わず叫んでいた
母の動きは止まる
そして・・・
「うぅ〜ごめんなさい、浩平私はあの時どうかしてたのよ・・・」
母は涙を流しそう言ってその場に崩れ落ちた
浩平は逃げるようにその場に泣き崩れてる母を残し
足早に階段へ向かう
「あっ浩平」
瑞佳も慌てて後を追う
階段を降り出入り口に向かう
「ねぇ浩平、このままでほんとにいいの?」
瑞佳は聞くが浩平の表情は硬く答えようとしない
その時・・・
「あっあの・・・」
二人を呼び止める声
立ち止まり二人は振り向く
振り返った先には看護婦が立っていた
「あの、折原さんのご親族の方ですか?それともお知り合いの方?」
「えっ何の事ですか?」
「あっ先ほど上の階であなた達が折原さんと何か話されていたようなので、それでちょっと  気になりまして」
「あぁ〜一応あんな女でも俺の母親です・・・」
「浩平・・・」
「そうですか・・・息子さんでしたか、でも仲違いされているのでしたら出来れば
 早く仲直りされた方がいいですよ・・・もう折原さんに残された時間は少ないのですから」
「えっそれはどう言う事ですか??」
浩平と瑞佳は同時に聞き返していた
「はい、もう折原さんは・・・あなたのお母様の命はそう長くはないんです・・・」

・・・続く・・・

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こんちゃ〜(^^)ノ
浩平のおっかさんを絡めた話しを何とか書いてみました〜
浩平のおっかさんはどうしたのだろうかとか
浩平が叔母に引き取られた理由とかも自分なりに考えてみました
う〜いかがだったでしょうか・・・
大変長くなった上にまたも前後編2部作(予定)になりました(^^;

聖なる夜の小さな幸せと感想戦記に感想を下さった方へ
ありがとうです〜(^^)ノ
大変うれしいです(^∇^)
ほんとうにありがとう御座いました〜(^^)

では〜(^^)ノ

http://www2.plala.or.jp/omo/