お気楽劇場わんとむ〜ん 第1話その3 投稿者: 藤井勇気
先手を打ったのは、由依だった。

「え〜い!1/2クリティカルです〜」
両腕をグルグルと回して、由依が突っ込んでくる。
それを半歩ずれて、難なくかわす七瀬。しっかりと由依の足に、自分の足を
引っかけておくことも忘れない。
「きゃあっ!?」

どってーーーーーーーんっ!

派手な音と共に、屋上の床に向かって由依が顔面から
ヘッドスライディングをした。

「隙ありっ!」
直後、七瀬の横から跳び蹴りを放つ晴香。
「くっ…」
木刀の切っ先と柄を両の手で握り、晴香の跳び蹴りを防ぐ。
「ちっ…!」
即座に体制を変え、今度はミドルキックを七瀬に放つ。
「遅いっ!」
「うぐっ…!?」
が、それよりも速く七瀬の鋭い突きが、晴香の脇腹を直撃した。
たまらず腹を抑え、晴香が後退する。それでも倒れ込まないだけ、
さすがと言えるだろう。
「…なかなかやるわね」
苦痛の表情を浮かべながら、七瀬を睨む。
その横には、いつの間にか由依が鼻を赤くして立っていた。

「はあ…はあ…に、2対1なんて……卑怯よ…」
なとか応戦しているものの、2対1では分が悪い。
晴香達が呼吸一つ乱してない事に対し、七瀬は肩で多きく息をしていた。

「だったら、七瀬さんも仲間に助けて貰ったら?そこのふたりに……」
郁未は余裕の表情を浮かべ、七瀬の後ろにいる浩平と瑞佳を指差した。
「くっ…!折原っ呑気に見てないで、手伝いなさいよっ!」
七瀬は怒気を含んだ声で浩平に怒鳴ったが………

「え〜…なんでオレがやんなきゃなんないんだよ…?」
「あっ浩平。ポップコーン食べる?」
「お、長森サンキュー♪」
すっかり観客と化していた………。

「あ、あんたらは〜〜〜〜〜〜っ!!」
一瞬、浩平達を先に半殺しにしてやろうかと思う七瀬だったが、
次の浩平のかけ声に、意識を晴香達の方に向けられた。

「七瀬っ!避けろっ!」
「えっ?きゃあっ!?」

ドガシャーーーーーーーッッ!!

突如として巻き起こる爆音と爆風。なにかが屋上の壁に激突し、
壁を半壊させてしまったようだ。
浩平のとっさの呼びかけで、七瀬は巻き込まれはしなかったが、
半壊した出入り口の壁を見て、七瀬は背筋が寒くなるのを感じた。

「はあっ!」
かけ声と共に、晴香が突進してくる。
「くっ…!」
すぐさま木刀を構え直し、来るであろう晴香の攻撃に身構える七瀬。
しかし晴香は七瀬を一瞥しただけで、その横を走り抜けていった。
「へっ?」
思わず間の抜けた声を出してしまう。
晴香はそのままガレキの山となった出入り口を登り、頂上当たりで
にゅっと突き出ていた手を、引っ張り上げた。

「はうぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜…………」
ガレキの山から引っぱり出されたそれは……由依だった。
「馬鹿っ!あんたがちゃんと協力しないから、外したじゃないっ!」
「そ、そんな〜〜〜……。酷いですよ〜〜〜〜〜」

「よーするに、あんたがその由依って子をあたしに向かって
 投げ飛ばしたって訳ね……」
ビービー泣いてる由依に罵声を浴びせている晴香に対し、七瀬は半眼で問うた。
「そうよっ名付けて由依カタパルト弾っ!この攻撃を食らって立ち上がった
 者は誰もいないわ」
「んな物騒な技、放つなっ!!」
あまりの馬鹿らしさにいい加減しびれを切らし、晴香に飛びかかって
いこうとする。
「おっと、今動いても良いのかしら?」
「くっ…」
晴香がグルグルと片手で、由依をぶんまわし始めた。
その言葉の意味を理解してか、七瀬が立ち止まる。
多分あの体勢は、由依カタパルト弾の攻撃準備なのだろう。さっきは浩平の
おかげでなんとか避けることは出来たが、つぎは避けれるという保証はない……。

「フフフ……さあ、どうする?七瀬留美」
不敵な笑みを浮かべ、今だグルグルと由依を回している晴香。
「はい〜〜〜気持ち悪いですぅ〜〜〜ウプッ…………」
なんだか顔が青白くなったような気がする由依。

由依カタパルト弾の威力は、あのガレキと化した出入り口を見れば、一目瞭然
だろう。更にあのスピード……。パワー、スピードとも申し分ない。
「くそっ…!」
極めつけに今の七瀬の体力では、俊敏に動けはしない。とてもではないが、
あの攻撃を避けれるとは思えない。
まさに絶体絶命の大ピンチだった。

「そろそろ年貢の納め時ね……いけええぇぇぇぇぇっ!
 由依カタパルト弾っ!!!」
「七瀬っこれを使えっ!」
突然、浩平(ちゃっかり瑞佳と避難してた)が七瀬にある物を投げよこした。
「こっこれは!!」
七瀬はそれを両手で受け取り、同時に驚きの声を上げる。
「おぉぉんどりゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そしてすぐさま、その物体を晴香に向けて思い切り投げつけた。

チュドオオオォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ………!!

晴香の投げた由依と、七瀬の咄嗟に投げた物体がちょうどふたりの中間に
激突し、何故か大爆発した。

「なっなんなのっ?一体っ!?」
さっきまでの余裕の表情はどこへやら、晴香は由依を投げたポーズのまま、
その爆発をぽかんと見ていた。
爆発の中心地は、地雷が爆発したかのように、大きなクレーターが出来ていた。
さぞ下の階の生徒達はびっくりしただろう。
そしてクレーターの中心に、こんがりと真っ黒に焦げている由依と…………
繭の姿があった……。

「折原ナイスっ♪」
ぐっと親指を立てて、浩平に突きつける七瀬。
「まかせろっこんな事もあろうかと、用意しておいたんだ。感謝しろ」
同じようにぐっと親指を立てる浩平。
「でも、浩平。なんで繭が当たっただけで爆発するの?」
「それはな、椎名の制服に少しだけ火薬を仕込んでおいたんだ」
「だったら繭を投げないで、その火薬で爆弾作った方が良かったんじゃない?」
「チッチッチっ甘いな長森は…それじゃ『椎名カタパルト弾』って
 叫べないじゃないか」
「あっそうか。わたしったらうっかりしてたね、えへ♪」
「でも、あたしの制服が、汚れちゃったんだけど………」

「はうぅぅぅ……目がチカチカしますぅ〜〜〜〜〜……」
「みゅ…みゅ〜〜〜〜〜……………」
どーでーもいーけど、誰か心配しろよ………。

「鬼ね…あんたら……」
ひとり腕組みをして、観戦していた郁未が、ぽつりと呟いた。
「あんたに言われたくないわよっ!それより晴香っこれでもうあんたの
 切り札はなくなったわ、今ならまだ許してあげる。おとなしく降伏なさいっ!」
ビシッと木刀を晴香に突きつける。しかし晴香は薄ら笑いのような物を
浮かべ、ガレキの山の上から七瀬を見下ろす。降伏する気はさらさらないようだ。

「ふふ…なにを言うかと思えば馬鹿馬鹿しい…。あれが切り札とでも思ったの?
 まったく……面白い冗談ね…」
「なんですってっ!」
鼻でせせら笑い晴香に、頭にきた七瀬が食ってかかろうとする。
しかし、それを浩平と瑞佳に引き留められてしまった。
「待てっ七瀬。あいつの言っていることは、ハッタリじゃないぞっ!」
「ふふ……その通り」
晴香の周囲の空気が震える始める。えもいわれぬ恐怖が、ビリビリと
肌に突き刺さる。
そしておもむろに晴香が………浮かび上がった!?

「嘘っ!?」
晴香を見上げ、七瀬が驚愕の表情をする。
「いや…嘘でもなんでもない。不可視の力を扱える奴は、空すら自由に飛べる
 と聞いたことがあるが……こいつも力を使えたとは………」
「ちょっと聞いてないわよ!そんなのってありなの!?」
「もう、遅いわよ……」
2メートル程浮かび上がった晴香が、静かに呟く。
その瞳は金色に輝き、独自のウエーブがかかった紫色の髪は、フワフワと
不自然に浮かび上がり、漂っている。

「まずは……あんた達よっ!」
右手を振りかざし、七瀬の側にいた浩平と瑞佳の方に、空気を凝縮した球の
ような物を放つ。

ゴウッ!

まるで空気を引き裂くかのようにして、球は浩平達の足下に命中した。
「ぐあっ!?」
「キャッ!」
その衝突の衝撃波で、ふたりは屋上のフェンスまで吹き飛ばされてしまった。

「折原っ!瑞佳っ!……きゃあっ!!」
先程と同じ空気の固まりが、七瀬の頬をかすめた。後方に轟く爆音。
そして前方には、右手を七瀬に向けて不気味に微笑む晴香。
「よそ見をしてる暇はないわよ」
「そのようね……」
木刀を正眼に構える七瀬。その白い肌から一筋の汗が流れる。
そんな七瀬を見てさも可笑しそうに笑う晴香。あんた完全に悪役だよ……(笑)

「さあ〜て、楽しいショウの……」
両腕を思い切り振り上げ、更に高く浮かび上がる。

「始まりよっ!!」

その合図と共に、地獄のような宴が始まった………。(続く)

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 勇気「オッス!オラ勇気!まいったな〜敵さんなかなかつえ〜……」
ガスッ!
繭ママ「…また人様のネタを使ってますね」
 勇気「はっはっはっなにも釘バットで殴ることはないじゃないですか」(流血)
繭ママ「心配しないで下さい。みあちゃんと違って、わたしは
    ひと思いにあの世に送って上げますから」(バットを振り上げる)
 勇気「さ、さあ〜て、感想いってみましょうかあ〜」


偽善者Zさん
>浩平犯科帳 第二部 第四話
氷上シュンだ!名前は出てないけど、多分氷上シュンだ♪これでMOON.の
少年だったらしよう(^^;

偽善者Zさんはず〜とこのシリーズを書き続けてるから、飽きるかも
しれないですけど、これを読んでいる方は毎回楽しみにしてると思いますよ♪
大変かもしれないですけど、頑張って続きを書いて下さいね♪

>永遠の園から4
しめさばは食べたこと無いから、解らないです(TT)

火消しの風さん
>涙を越えてNO.6
のせられやすい七瀬の性格を付いた、浩平の見事な作戦ですね♪
でも、シュンにまかせたのが間違いだったのかも(^^;

火消しの風さん、ギャンブルも程々にして下さいね(^_^)

もうちゃん@さん
>焼き鳥(感想)
文化祭頑張って下さいね♪そう言えば、パート先のスーパーの近くに
専門学校があるのですが、土日に文化祭をやってました。
バイトに来る子も文化祭があるからって休むし、昨日はパートが忙しかったです(T^T)

瑞希 龍星さん
>始まりはいつも最終章 Vol.1a
いきなり始まる最終章!常人の力を遙かに越えた力を持つ浩平達、
そしてその力を与えた(引き出したのかな?)氷上シュンの謎の裏切り!?
ああっなんだか話の状況が、全て飲み込めないけど、面白そうです♪(なんだかなあ自分も……)

>始まりはいつも最終章 Vol.1b
くぅぅ……(TT)何故何故シュンとはこうもおいしすぎるキャラなんだ!
(これが感想か自分…)
まあ、それはおいときまして、浩平と七瀬がいい雰囲気ついさっきまで
太刀をを振り回していたとは思えない感じですね(^-^)
後、ラスボスみたいな人物はいるのでしょうか?


 勇気「今回の感想はここまでです。なかなか書く時間が……」
繭ママ「さっさと書かないと、どんどん増えていきますよ」
 勇気「それだけ新しい方も増えたと言うことで、嬉しい限りです」
繭ママ「それでは皆さん、次回でまたお会いしましょ〜♪」
 勇気「ああっ!いきなり締めにはいってるぅ〜〜〜」