わんとむ〜ん 第1話 その1 投稿者: 藤井勇気
第1話 「謎の美少女現る?」


ある日、それは起こった……。


「おっす、七瀬」
今日も浩平は前にいる七瀬に、朝の挨拶をした。

「……」
いつもならここで、七瀬から返事が返ってくるのだが、今日は返事どころか
こちらを見もしない。

「おいっ七瀬。シカトしてんのか?」
「……」
やっぱり返事は帰ってこない。しかも席に座らず、突っ立ったままでいる。
少しおかしいと思い、浩平は七瀬の顔をのぞき込んで見た。

「……」
七瀬は顔を真っ赤にして、肩を小刻みにふるわしている。
今にも奇声を発して、口から火でも吐きそうな雰囲気だ。

「どうした七瀬。二日酔いか?」
「……」
「それとも便秘か?」
「……」
「あれ?、浩平〜。七瀬さんとなにやってるの〜」
浩平と七瀬の間に、不穏な空気が流れ始めたのを感じたのか、瑞佳が近寄ってきた。

「いや、実はな、こいつ今日アノ日らし………」

ドグシイィィィィィィィィィィィィーーーーーーッ!!!!!!

「はぶうぅぅぅぅぅぅぅぅ…………!!」

「だーれーがっアノ日ですってえぇぇぇぇーーーーーっ!!」
天を突き刺すような大声とともに、七瀬の細い腕から繰り出された
コークスクリューパンチが見事、浩平の左頬を強打した。
ふたつの鼻の穴から、真っ赤な鼻血がキラキラと吹き出す。

「ええっ、おいっってめえっ!!。まだ二日酔いやら便秘だとかなら
 我慢してやったけどなーっ!、言うに事欠いて『アノ日』だあーっ?。
 ふざけんのもいい加減にしやがれよっ!!。
 てめえの目ん玉えぐり抜いて、両手両足の指全部ぶち切って、
簀巻きにしたあげく、道頓堀に投げ捨てて、てめえのきたねえ◯◯◯を
 ミンチにして、野良犬に食わすぞっこん、ダボがっ!!!」

そう罵声を浴びせながら、倒れた浩平の脇腹に容赦なくヤクザ蹴りを入れる。

「あ、あの…、七瀬さん……」
たまらず瑞佳が止めに入った。
「あん?、瑞佳止めないでっ。こうゆう人間のクズは早めに始末しておかないと、
 後が大変よっ。知ってる?、害虫は殺しても罪にはならないのよ」
「あのね…そうじゃなくて…、みんな見てるんだよぉ……」
「えっ?」

じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…………………………。

みんなが…、クラスの生徒全員の眼が、七瀬に注がれていた。
女子生徒からは、奇異と軽蔑の入り交じった視線…。
男子生徒からは、驚愕と絶望のこもった視線を……。
ちなみに出席を取りに来ていた髭さえも、出席簿を落とし顎がはずれるほど
(実際にはずれてたのかもしれない)口をあんぐりと開けて、七瀬を見ていた。

「え、えっと……」
七瀬は照れ隠しに頭をかこうと手を上げるが、自分の手は浩平の返り血で
真っ赤に染まっていた。

「あの、これは、なんて言うか……、そうっ!ちょっとした朝の挨拶なのっ。
 一種のコミュニケーションなのよ」

「朝の挨拶で人ひとりを半殺しにするんだ、七瀬さんて……」
床に転がっている浩平だった物体を見て、男子生徒の一人がぽつりと呟いた。
「こ、これは…、違うのよっ。ほらっ、折原も挨拶しなきゃっ」
ちょっと首が不自然な方向に曲がっているが、とりあえずは気にしないでおく。

『やあっみんなおはよう。浩平だよ〜ん♪』

「…七瀬さん。後ろで腹話術しても駄目だよ……」
「うっ……バレてる……」
当たり前である。

「そうか…、七瀬さんて実はそう言う人だったんだ……」
「ち、違うのよっみんな」
「オレ達…、騙されてたんだな……」
「そんなっ!」
「七瀬さん。良い夢をありがとう……。そしてさようなら……」
男子生徒が口々に呟き、自分の席へと戻っていく。
「そんなあ……。ねえ、みんなっ!」

「やっぱ、七瀬さんより里村さんの方が良いよな〜」
「なに言ってんだ!長森さんの方が断然良いぞっ」
「…オレは、繭ちゃんが良いな」
「げえっ、お前いつからそっちの道に走ったんだっ!?」
「僕は…、どっちかって言うと広瀬さんの方が……」
皆、口々に言いたいことを言っていた。

「そんな……、そんな………」
がっくりと肩を落とし、その場にくずおれる七瀬。
そんな七瀬と、ついでに血塗れになっている浩平を無視して、
一時限目の授業は始まるのであった………。



「……たくっ、ひで目に会ったぜ」

昼休み。浩平は学食で買ってきたパンをほおばりながら、教室で毒づいていた。
あの後、浩平は瑞佳に保健室へつれて行かれ、今の今までずっと寝ていたのだった。
七瀬に負わされたけがは、もうすっかり良くなっていた。
ここら辺は、さすがに主人公(?)というか、都合が良すぎると言うか……。
まあ、兎に角治ったのである。

「でも、浩平がちょっかい出すからいけないんだよ」
隣でハンバーグを食べやすいように、箸で器用に切りながら瑞佳が言う。
「なにもあそこまですることはなかろーにっ!、オレは一瞬、三途の川と
 花畑が見えたぞ!」
「自業自得だよ」
一口サイズに切り分けたハンバーグを美味しそうに食べる。
「そう言えば七瀬さんは大丈夫なの?。一緒に保健室に運ばれたみたいだけど」
「ああ、あいつはまだ保健室で寝てるはずだ。外傷は全くないんだが、
 始終うなり続けて意識が戻らないらしい……」
「やっぱりねぇ………」
はあ……と、小さな溜息が漏れる。
「なんだ?、なにかあったのか?」
「実は、朝の騒ぎで七瀬さんの人気が、かなり落ちちゃったみたいなんだよ……」
正確にはかなりではなく、底の底のズンドコまで落ちたのだが……。

「そうか…。いつかとは思っていたが、ついにくるべき時が来てしまったんだな……」
「…七瀬さん。安らかに眠ってね」
「今度線香の一本でも上げてやるか………」

「勝手に殺すなあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」

いきなり頭上から罵声が降ってきたかと思うと、浩平の机の上に七瀬が降ってきた。

「どわっ!?、どっから現れやがんだお前はっ!」
「さっきから天井に張り付いてて、あんた達の話を聞いていたのよっ」
「ゴキブリのような奴め……」
「あんたに言われたくないわよっ!」
ふんっと鼻を鳴らして、浩平の机の上で仁王立ちになる七瀬。
「……パンツ見えてっぞ」
メリィッ!!
浩平の顔面に七瀬の白い足がめり込む。
「見んじゃないわよっスケベっ!!」
自分から見せるようにしてよく言う……。

「良かった七瀬さん。わたしすっごく心配してたんだよ」
「あんた…、いい正確してるわ……」
もの凄くやるせない顔をしながら、七瀬は机を降りた。

「で、なんか用か?。まだ殴り足りないとかって言うんじゃないだろうな」
「まあ、それもあるけど。とりあえずあたしの話を聞いてくれない」
「話し?」
「そ、。ちょっとあたしの机を見てみて」
言われるがままに浩平と、ついでに瑞佳も興味津々の顔で、七瀬の机を見る。
机にはなにか刃物のような物で掘ったのか、あるメッセージが刻まれていた。


『拝啓 七瀬留美様』

『ファッキンッ!! てめえなんぞクソっくらえってんだコンチクショウッ!!
 てめえみてえな、「立てばビヤダル、座れば土台、歩く姿はドラム缶を、
 絵に描いたようなクソ野郎なんぞこのオレ様が修正してやるっ!
 と、言うわけで放課後屋上まで来い。貴様に引導を渡してやるぜっ
 チン○ス野郎っ!!』  か・し・こ♪
                      謎の美少女より


「……」
「……」
「どう?、これであたしの言いたいことは、解ったでしょう…」
七瀬が押し殺したような声でふたりに聞く。
ふたり共ぼーぜんとしたまま、七瀬の机に刻まれているメッセージに見入っている。
「七瀬……これは……」
浩平は驚きの表情で七瀬を見る。
「ラブレターじゃないかっ!?」
「その通り。これはラブレター……って全然違うわっ、果たし状でしょうこれはっ!」
「やったね七瀬さん♪これで七瀬さんも彼女持ちだね♪」
「果たし状って言ってんのにっ。それに何故彼女?」
「大事にしろよ七瀬。なにせお前の机に熱烈なラブコールを刻む奴なんて、
 そうそういないからな。よっぽど好きなんだろうな、お前のこと」

「だ・か・ら、違うっつってんだろがぁぁぁぁあああーーーーーーっ!!!」

七瀬は吠えた。そりゃあもう、声が潰れるんじゃないかと言うくらい、
目から血の涙を流しながらしばらく吠えまくり、教室中の机をちゃぶ台替えし
よろしく、机返しをしまくった。




「はあ…、はあ……、うぐっ………、ぐるるるるるぅぅぅぅぅぅ………………」
今だ猛獣のような鳴き声を発しながらも、七瀬は落ち着きを取り戻した。

「さて、七瀬をからかうのはこれくらいにしておくか」
「えっ?、わたしは本気だったけど」
「長森は黙ってろ……」
「はあ…、ふう…、や、やっと本題に入れるわね……」
肩で息をしながら、七瀬が安堵の溜息をつく。
「で、この果たし状とやら、お前はやっぱり………」
「行くに決まってんでしょうっ!!」

七瀬は即座に答えるのだった………。(続く)

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 勇気「さすがに一日2回も書き込むと、疲れました」
繭ママ「明日はパートがお休みですからね」
 勇気「2つも連載物を書いてるのにまたシリーズ物を書いてしまいました。
    一応この『お気楽劇場わんとむ〜ん』(題名全部は入らない)は
    5回まで続けるつもりです。」
繭ママ「5回やってもやっと第一話終了ですけどね」
 勇気「偽善者Zさんだってもう10回以上も連載してるじゃないですかっ」
繭ママ「偽善者ZさんのSSは面白いから良いんです。
    藤井さんのと一緒にしたら、可哀想です」
 勇気「そ、そこまで言いますか普通?」(泣)
繭ママ「このお話で私の出番はあるんですか?」
 勇気「ありません」(きっぱり)

ドグッ!!

 勇気「ほ、ほらね……、すぐこうやって…暴力を振るうから、繭だって………」

ガスッ!ゴスゴスッ!!コキャッ☆!!!

 勇気「……」
繭ママ「え〜……、藤井さんが意識不明の重体になりましたので、
    感想はわたしが読ませていただきます」

nadeさん
>雪のロンド
確かに茜エンド以外の場合だと、茜はずっとあのままかもしれませんからね。
雪とともに茜の心も真っ白に塗り替えられ、また新しい人生を歩んでほしいです。


繭ママ「それではどうも失礼致しました〜♪」(ぺこり)
 勇気「……」(返事がない…ただの屍のようだ)