存在定義 投稿者: 藤原白葉
明るめの色に統一された部屋が鮮血に染まる。
 見慣れた筈のこの部屋は、ただ朱く…
カーテンも、シーツも、カーペットも、なにもかも。
 鮮血に染まる。朱く…朱く…朱く…朱く…朱く…朱く…

遠くなる意識の中、彼女の声だけが耳に響いていた。
 普段は絶対に聞かないような…悲痛な叫び声。
「嫌ぁぁぁっ…どうしてっ、どうしてっ…」
答えられない疑問を、ただただ問いかける。意味のない繰り返し。
 僕の死は…僕が望んだ事だ。
「君が嘆く事はない。」…と思いはしたものの、口には出せなかった。

正確には言えなかった…のか?

「もしも、本当に…僕の事を愛してくれているのなら…
 殺してほしい、君の手で。」
――そう彼女に伝えた。
生きる事に疲れた僕の最後の望み。
 老いゆく体。荒みゆく心。消えゆく想い。
生きる事に疲れた僕の僅かな望み。

禁忌ともいえる…その異様な形こそ、心無い…虚ろな僕にとって、
 真実の愛。
 魂の救済。
 回帰の時。
唯一、受け入れられる現実だった。

けれど…僕のエゴは僕だけのものだ。

彼女は首を横に振った。…嫌だと否定した。
 当然の答えだった。
愛していても、愛していなくても、変わらないだろう…普遍性。
 生の放棄を肯定出来ないように教えられたぼくらは、
  死すらを自由に望めない。
だからこそ…なのだろう。
 止められるよりも、殺されたかった。
  その中に愛を感じて、愛を感じながら…自らを開放したかったのだ。

けれど…君のエゴは君だけのものだ。

僕はナイフを手に取った。僕は僕を肯定した。
 当然の答えだった。
愛していても、愛していなくても、変わらないだろう…普遍性。
 生の放棄によってしか、存在を認識出来ないぼくは、
  死すらどうでもいい事だった。
だからこそ…なのだろう。
 止められるよりも、死にたかった。
  絶対的な絶望の中、自らを開放したかったのだ。

そして、扉は開かれた。

明るめの色に統一された部屋が鮮血に染まる。
 見慣れた筈のこの部屋は、ただ朱く…
カーテンも、シーツも、カーペットも、なにもかも。
 鮮血に染まる。朱く…朱く…朱く…朱く…朱く…朱く…

消えゆく意識の中、彼女の声だけが響いていた。
――届かなくなる。全て、届かなくなる。
その世界から『ぼく』の存在は消え、『ぼく』は永遠になる。



※たまたまTVを付けてみると、特命リサーチ200Xがあっていて、「依存症の
原因について」報じて(?)いたけど…どうでもいい事なんじゃないか?と感じま
した。確かにその「依存症について」知識を持っていれば、何かあった時に対応出
来るかもしれないけど…意識すら公式に当てはめてしまうのは物質的過ぎるような
気がして。理論的に考えれば、確かにそうだといえる事も、感情的にはそうともい
えない事ってあると思うけど。人間の心って、なんなんでしょうね。一体。

>睦月周さま
いつもいつも、僕のSSを読んでいただいてありがとうございます。三匹が読む!
はいいと思います。現状だと、感想を返そうにも、SSを書かないといけないよう
な感じがしていましたから。SSというにはおこがましい作品しか書けませんけれ
ど、これからもよろしくお願いいたします。
>まさたさま
りーふ図書館、覗かせていただきました。僕のSSがなぜかあって、少しばかり驚
きましたが…置いていただいてありがとうございます。駄文書きなどそんな事はな
いと思います。キャラクターのSSが書けない僕の方こそ…。