繭のとくべつなみゅー (1) 投稿者: 奈伊朗
  どーもっ。奈伊朗で御座います。
  一昨日、自分で書き込んでみて初めて分かったことなのですが、行頭のスペー
スは省略されちゃうんですねー。
  何か、読みにくくなるような気がしますが、私なんかには分からない、深い理
由があるのかしらん?
  この、【入力した通りに表示】つーので書き込めば良いのかな?
  時々、文字の大きさが違う作品があるのは、何故なのー?
  と、未だに要領を得ませんが、とにかく書いちゃいます。

************************************************************************

  とても幸せだった・・・。
  それが日常であることをぼくは、ときどき忘れてしまうほどだった。

  そして、ふと感謝する。
  ありがとう、と。
  こんな幸せな日常に。

  永遠に続くと思ってた。
  幸せのかけらをあつめていられるのだと思ってた。
  でも壊れるのは一瞬だった。
  永遠なんて、なかったんだ。

  知らなかった。
  そんな、悲しいことをぼくは知らなかった。

  知らなかったんだ・・・。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                 『繭のとくべつなみゅー』第壱回            大須 奈伊朗 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  とても不本意なことなんだけど、ぼくは死んでしまったんだ。
  でも、これはぼくが悪いんじゃない。不可抗力ってやつさ。だって、生き物に
は、それぞれ寿命ってモノがあるからねっ。
  どんなに健康に気をつけたって、人間ほど長くは生きられないよ。だってぼく
はフェレットなんだもの。自慢じゃないけど、フェレットにしちゃ長生きしたほ
うさ、自分自身を褒めてあげたいくらいだね。

  ぼくの名前は、みゅー。
  マユが、ぼくのために考え、ぼくにつけてくれた、ぼくの名前さ。今じゃすっ
かりお気に入りなんだけど、最初はちょっと抵抗があったんだ。だって、みゅー
なんて、まるで猫みたいな名前じゃないか。ぼくは猫ってのが大嫌いなんだよ。

  これは、ぼくがまだペットショップで売られている、名もないフェレットだっ
た頃の話しなんだけど。隣の檻に、灰色のこぎたない仔猫がいてね。こいつが嫌
なヤツだったんだ。
  ぼくが気持ちよく昼寝していると、隣で「カァァァ――ッ」とかいって、ぼく
を驚かすんだよ。ぼくが跳び起き、うろたえて檻の中を転げまわるのを、笑って
みていやがる。
  そんな性格だから、けっきょく売れ残って処分されちゃったんだ。
  いつもだったら、「明日は我が身か・・・」なんて、切ない気持ちになるんだけ
ど、あの時ばかりは愉快だったなぁ。

  可哀相?  そんなことなんかあるもんか。だってぼくたちは、お店で売られて
いる商品なんだからね。時間がたちすぎて商品価値がなくなれば、ファーストフ
ード店のハンバーガーやポテトみたいに、処分されちゃうのがあたりまえさ。
  生きたまま売られるか、死んでからパンに挟まって売られるかの違いだよ。檻
の外につけられた値札の数字が、ぼくらの価値のすべてだったのさ。

  そんなぼくに、マユはみゅーって名前をくれた。マユが、ただの名もないフェ
レットのぼくを、世界でたった一匹の、みゅーにしてくれたんだ。
  だから、マユはぼくにとって特別な人なんだよ。ぼくの女神様なのさっ。

  楽しかったなぁ。毎日、一緒に起きて、一緒に遊んで、一緒に眠って。次の日
もその次の日も・・・。マユは、ぼくにいろいろな話しをしてくれた。頭をなでて
くれた。ほお擦りしてくれた。

  掛け替えのない時間。大切な思い出。まゆはぼくに、それを与ええくれた。
  ――・・・マユは、ぼくのすべてなんだ・・・。

  だからぼくも、マユになにかしてあげたいと思った。
  生きているうちに何か一つくらい、マユの役にたちたいと思った。
  でも、ダメだったよ・・・・・・。最初から無理だったんだ。そんなこと、できっこ
なかったんだ。だって、ぼくはフェレットなんだから・・・。
  マユに必要なのは。・・・・・・マユが本当に求めているのは。
  ――・・・・・・人と人の、絆なんだ・・・・・・。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  ・・・・・・・・・。
  ・・・・・・。
  ・・・。

  うあ―――ん・・・。
  うあ―――――――んっ!

  泣き声が聞こえる。
  誰のだ・・・?
  ぼくじゃない・・・。

「うあ――――んっ!  みゅー。みゅ――――――――っ!」

  マユだ。マユがぼくのせいで、泣いている。
  だんだん冷たくなっていく、ぼくの抜け殻を抱きしめて。いつまでも。
  いつまでも・・・・・・。
  ぼくも、マユと一緒に泣いた・・・。マユと別れるのが悲しくて・・・・・・。マユを
悲しませることしかできなかった自分が、悔しくて・・・・・・・・・。

  でも、ぼくの想いは、・・・・・・マユに届かない・・・・・・。
  それが悲しくて、いつまでもぼくは泣きつづけた・・・。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  その日。空が明るくなるとマユは、冷たくなったぼくをつれて家をでた。
  右腕でぼくを胸に抱え。左手には、小さなシャベルを持っている。
  冷たい風に身を竦めなから、胸のなかのぼくに囁くように話しかける。
「・・・みゅー、やっぱり外は寒いね・・・」
  そういいながら、自分のマフラーでぼくの亡骸を包む。ダメだよ、そんなこと
しちゃ。マユが寒いじゃないか。ぼくはもう寒さなんか感じないんだよ。そして、
マユの温かさも・・・。もう、感じることができないんだよ・・・。
  ――それじゃ、このぼくはいったい何者なんだろう・・・・・・・・・。

  公園を通り抜け、その奥の林の中にはいるとマユは、マフラーに包まれたぼく
を地面にそっと寝かし、持ってきたシャベルで、ガシガシと穴を掘りはじめた。
普段、殆ど外出しないマユがこんな所に来たのは、ぼくのお墓を作ってくれるた
めだったのか・・・・・・。

  ガシガシッ、ガシガシッ。小さなシャベルを、必死で地面に突き立てるマユ。
  ガシガシッ、ガシガシッ。でも、なかなか穴は大きくならない。
  ときどき、かじかんだ指に息をはきかけながら、それでも穴を掘り続ける。
  ガシガシッ、ガシガシッ。時間ばかりが過ぎていく・・・・・・。

  ――もういいよ、マユ。もうじゅうぶんだ、お墓なんかどうでもいいから、は
やくお家にお帰り。マユ・・・・・・。

「なにしてるの」
  不意に後ろから、女の人の声がした。マユは、振り返って、無言でそのお姉さ
んの顔を見上げている。
「そいつの墓か・・・?」
  そんなマユに、お姉さんと同い年くらいの、男の人が話しかける。
 
  ・・・・・・見つけたっ。あぁ、なんて偶然なんだろう。
  ・・・・・・この人に、絶対間違いない・・・・・・。
  彼は、マユに必要な人だ。彼ならきっと、マユの特別な人になってくれる。教
えなきゃ。なんとかして、このことをマユに伝えなくちゃ・・・。
  ――でも、・・・どうすればいいんだ・・・・・・・・・。

「死んじゃったんだ、可哀相にね・・・」
  そういって、ぼくの亡骸を見つめるお姉さん。マユの横にしゃがみこんだお姉
さんからは、猫の匂いがした。それも、一匹や二匹じゃない。五匹以上?  もっ
とたくさん・・・。――猫姉さんだ。
「しゃあない、手伝ってやるか。貸しな」
  そういうとお兄さんは、小さなシャベルでシャカッ、シャカッ、シャカッと、
あっというまに、ぼくの墓穴を掘りあげた・・・。――穴掘り兄さんだ。

「これぐらいでいいのか?」
「フェレットね。名前は・・・?  ――みゅー、って言うんだ」
「うん・・・」

  そしてマユは、マフラーに包まれたぼくを、穴の底にそっとおいた。
「いいか、埋めるぞ」
「うん」
  穴掘り兄さんに向かって、小さくコクリと頷くマユ。
「・・・・・・・・・」
  だんだん土に埋もれ、見えなくなっていくぼくの亡骸・・・。ぼくとマユの思い
出が、土にかえっていく・・・。マユはただ無言で、それを見つめていた・・・。

  マユの目から溢れた涙が頬をつたい、雫となって土に吸い込まれていく。いつ
しか、その喉の奥から嗚咽が漏れる。
「うぐっ・・・。――ひぐっ・・・」
  ぼくの亡骸が、完全に土に隠れてみえなくなると同時に、マユは火が付いたよ
うに泣きだした。
「うっ、うああぁ―――――――――――んッ!」

  ――泣かないで・・・・・・・・・。もう、ぼくのために悲しまないでおくれ。大好き
なマユ。
  ――・・・・・・・・・ぼくの特別な人・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・!?」
  マユは、一瞬息を呑み、周りを見廻す。そしておそらく、ぼくにしか聞こえな
い小さな声で呟いた。
「・・・みゅー?  みゅーなのっ・・・」
  ――マユ?  ・・・・・・聞こえるのかい!!  ぼくの声が聞こえるのかいっ!?
「うああぁ―――――――んっ!」
  マユは、穴掘り兄さんを押し退け、素手でぼくの亡骸を掘り返すと、両腕に抱
きしめ、顔をうずめて泣きじゃくる。
「みゅ――――っ、みゅ――――っ!」
  ――ちがうんだよマユ。それはもう、ぼくじゃない、ただの抜け殻さ。ぼくは
マユの傍にいるよ・・・。

「ほら、もう眠らせてあげないと・・・。――もう一回だけさよなら言って、眠ら
せてあげよ。――・・・ね」
  ――猫姉さんのいう通りにしょうよ、マユ・・・。涙と土で、顔も服も泥だらけ
だよ。せっかくの美少女が、台無しじゃないか。
「みゅー・・・」

「いいか、埋めるぞ。今度は掘り返すなよ」
「うん・・・」
  穴掘り兄さんは、ぼくの亡骸を埋め直してくれた。
「よし、目印になんか石でも置いておこうな。――ほら。――これで次来たとき
も、ここがみゅーの墓だってわかるだろ」
  ――立派なお墓だ、ぼくはとっても嬉しいよ。ありがとうマユ、そして穴掘り
兄さん。
「うん・・・」
「まあ、次来るときは花ぐらい持ってきてやるか・・・」
  ――お花より、てりやきバーガーの方がいいな・・・・・。
「・・・・・・・・・」
  ――冗談だよぉ、マユ。
「じゃあ、いくか」
「私たち行くけど、大丈夫・・・?」
「うん・・・」
  マユは、二人に向かってコクンと頷いた。

  うーん。素晴らしい大発見だ。それも二つ。一つはあの穴掘り兄さん、もう一
つは、ぼくは人間と話しができるということさ。もしかしたら、ぼくは人間がい
うところの、ユーレイってヤツなんじゃないだろうか?  あぁ、ユーレイという
のは、なんて画期的なんだっ。だってフェレットのぼくが、人間と話せるんだよ。
こんなことなら、もっと早くユーレイになるべきだった。

「じゃあな」
「じゃあね、ばいばい」

  いいかい。ぼくの聴いた話しでは、人間ですらユーレイになるのは難しいんだ。
ユーレイってのはね、誰にでもなれるほど甘いもんじゃないんだよ。それにぼく
は、なれたんだよっ。おぉ、ぼくはなんて凄いフェレットなんだろう。
  これでぼくも、マユの役にたてるかもしれない。とにかくその目処はついた。

  なんてこと考えてるうちに、二人がどっか行っちゃうじゃないかっ。
  
  ――穴掘り兄さんに、猫姉さぁーんっ。ちょっと待ってよぉーっ。
「みゅー・・・。聞こえないと思うよ・・・」
  二人は、振り向きもしない。

  ――ねぇー、待ってってばぁーっ。
「みゅーの声はたぶん、わたしにしか聞こえないと思う・・・」
  なぁーんだ、ぼくの声はマユにしか聞こえないのかぁー。

  ――って、呑気にしている場合じゃないっ。すぐにあの二人の後を、つけるん
だ!!
「ほぇー?  ストーカーごっこするの・・・?」
  ――言葉の意味がよくわからないけど、多分そうじゃない。穴掘り兄さんは、
なんとしてもマユがゲットするんだ。急げ、マユ!  もたもたしてたら、猫姉さ
んに取られてしまう。
「はぅー?  言葉の意味がよくわかんないけど、後をついていけばいいの?」

  やがて二人は、大きな建物の中に入っていった。

  ――うわぁー、でっかい家だねぇー。あの人達、大金持ちだったのかぁー。
「ちがうよ、みゅー。ここは学校だよ」
  ――ガッコウ・・・?  あぁ、これが学校ってヤツなのか。よし入ろう、マユ。
「・・・いやだ。勝手に入ったら怒られるもん・・・。それに・・・・・・」

  そういってマユは、目を伏せ自分の服を見た。あちこち土で汚れている。よく
見るとマユの顔にも、まだ泥がついていた・・・。
  ――わかったよマユ・・・、いちど出直そう。夕方くらいまであの人達は、ここ
に居るはずだからね・・・。焦ることはないよね・・・・・・。

  そうさ、焦っちゃだめだ・・・・・・。ごめんよマユ。
  でも、ぼくにはあまり時間がないんだよ。

  それまでに、ぼくはマユの役にたちたいんだ・・・・・・・・・。

(つづく)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  わぁーっ。たった二日間で、こんなに沢山の作品が・・・。
  どれも趣向を凝らした個性的な話しで、おもしろいです。
  反面、既に同じような話しが書かれているのではないかと、不安になっちゃい
ますぅ。

  余り長くなるのもよくないので、近作にのみ感想などを書かせて頂きます。


『二人のしいこ −2−』    KOH 様

  なんと!  ニセ詩子は、あの北川さんでしたかぁー。
  一般人の北川さんにとって、逸般人と間違われ易いあの高校は、住みにくい所
かも知れません。


『ケンカしよ?』    まてつや 様

  浩平と澪は、一体どんな理由でケンカしたんだろう?
  二人は、一体どんなふうにケンカしたんだろう?
  そんな想いも、最後の。
  世界で1番好きだから……。で、なんだか納得しちゃいました。
  きっと、構成が良いんですねー。


『2つの完全版』    ここにあるよ? 様

  みさき先輩も茜も、魅力的で存在感がありますね。
  キャンプの、みんなでワイワイやる楽しさが伝わって来ます。


『無邪気に笑顔』の歌詞    しーどりーふ 様

  私は、楽譜すら読めないので、作詞、作曲、楽器の演奏なんかが出来る人には、
唯ひたすら感心しちゃうのです。


『Moonな日々−2−(後編)』    スライム 様

  すっかり浩美になりきっている浩平が、プリティーです。
  これから、ダークな展開になるのでしょうか?


  ネタバレのボードの話しで恐縮ですが。
  よもすえ 様、感想ありがとうございましたぁ。

  それでは、この辺で。