今を奏でるピアノ その一 投稿者: どんぐり
11月30日
部活・・・。
所属するにはしているが・・・幽霊部員、いや、部自体が幽霊船とかしているからな・・・。
出向いたところで、誰ひとりとしていないだろう。
人気のない渡り廊下を渡り、滅多に赴くことのない別校舎へと向かう。
美術室、音楽室など特殊な教室はこの校舎の一、二階に集中している。
そして目指す部室も、その参会に文化系クラブの部室として並んでいる。
オレは外見からも無人であると明白な、部室の前に立ち、そしてドアを開けた。
すると、誰もいないと思っていたその部室の隅に、ひとりの見知らぬ少女がいた。
なんて漫画みたいな出会いがあるなら、わざわざ出向いてくる価値もありそうなのだが、現実はそんなにドラマティックではない。
いや、本当にいた。
教室の隅で窓に映る夕日を見ていた見知らぬ女子生徒がドアを開けたオレの方に振り向いた。
「こんにちは」
白い肌。そして雪の中に漂う水のような青い髪。
まるでおとぎ話に出てくる雪女を見ているようだった。
歳は・・・オレより一つ上くらいだろうか。
「あ、ああ・・・こんにちは。」
少女に見とれつつも、挨拶を返す。
この場にいるのだから、おそらく軽音部の部員だとは思うが、顔に覚えがない。
「あの・・・練習しないんですか?」
「あ、いや。顧問もいないのに、練習なんか・・・」
「折原君、確か楽器はサックスよね。私が教えてあげるわ。」
「え・・・? よく知ってるな、オレの名前・・・」

 「ずっと、見ていたから・・・」

「え、何か言ったか?」
「ううん、何も。」
「オレの名前を知っているということは、何処かで会ったか何かしたかな。」
「折原君、有名だから」
確かに、有名になるようなことをした節は、いくつかある。
放送室で友人と話をしていたのが全校に筒抜けで、すぐに先生が飛んできたこととか・・・。
あのときは長森に
「はあっ・・・」
とか長いため息をつかれたな。
「そうそう、自己紹介がまだね。私は杉原美奈子。みんなにはミナって呼ばれてるから、そう呼んで。」
「オレは折原浩平。まあ、好きなように呼んでくれ。でも・・・見たところ、オレより上級生だろ。ミナってのは・・・」
どう見たって、抵抗がある。
「私は気にしないけど?」
「いや・・・さすがにミナっていうのは・・・。せめて美奈子先輩とか・・・」
「ん・・・ま、いいわ。それじゃよろしく、浩平君」
「ああ、よろしく。美奈子先輩」
窓から外を見ると、外は暗くなってきていた。
「もう、暗くなってきたな・・・。オレはそろそろ帰るが、美奈子先輩は?」
「ん・・・私はもう少しここにいるわ」
夕焼けの空を見ながら、そう言う。
オレは鞄を持つ。
「じゃ、お疲れさま。美奈子先輩」
「お疲れさま、浩平君。また明日ね。」
別れの挨拶をして、オレは部室を後にした。

家へと帰る途中、ずっと、あの言葉の意味を考えていた。

「ずっと、見ていたから・・・」

あの先輩に会った事は、オレの記憶の限りでは一度もないはず。
それなのに、なぜ、オレの事を知っていたのか。
普段は細かいことを気にする性分ではないオレだが、この事に限っては、どうしても頭の中から離れなかった。
ずっと見ていた・・・?
まるで後輩から告白される男子学生の様じゃないか。
まあ・・・悪い気はしないが、初対面の相手に対しては戸惑いと疑問を感じさせる言葉ではあるな・・・。
そんな事を考えながら、オレは家へと帰っていった。

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さて、何故かSS作家の方々に名前だけは知られている
どんぐりの初投稿です。皆さん、よろしくお願いいたします(^^
この作品、うちのHPにUPはしてあるのですが・・・色んな方々からの
励ましもあって投稿することとなりました。
ってなことで・・・こちらに投稿はしていますが、HPに来られますと
続きが読めます(爆)
早く続きが見たい方、他のどんぐりの作品が見たい方は下のリンクから飛んでいただけろとありがたやです(^^
さて、今回の投稿をするにあたって、ここへの投稿に関してどんぐりを
応援してくれました「WTTS」さん、「まねき猫」さん、「ここにあるよ?」さん、他多くの方々に感謝感謝しつつ、これにて〜♪

次の投稿は・・・書きあがってますから直ぐにでも・・・と行きたいところですが、
約一週間後を予定中・・・。次の作品との兼ね合いもありますし。
感想・雑感をうちの掲示板に書いてもらえると、どんぐりとしてもすぐ見られて
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でわわ〜♪ミ☆

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