みさき先輩とグレイ君ニューイヤーズイヴ  投稿者:高砂蓬介


1999年12月31日、夜。
「はあ……孤独だよ……」
みさき先輩は一人こたつに入って紅白を聞くともなしに聞きながら、19個目のミカンの皮を剥いた。
「……ちょっとすっぱいかな」
一粒目を口に入れ、つぶやく。すると、どこからともなく伸びてきた灰色の手がミカンを良い感じにもみしだいた。ミカンはもむと甘くなるって宇宙の常識なんですね。
「ありがとう、グレイ君」
ちょっと照れる灰色の生き物。
「浩平君、どこに行っちゃったんだろうね……」
静かに首を振る灰色の(以下略)。
「去年のクリスマスはね……浩平君が一緒にいてくれたんだ」
灰色(以下略)はただ黙ってみさき先輩の話に聞き入っている。
「二人でぽてちをいっぱい食べて、仏間のロウソク一本を囲んで……どうしようもないくらい怪しいクリスマスだったんだけどね。わたしはそれでよかった。ただ浩平君がそばにいてくれる……それだけで、よかったんだよ」
心なしか、灰(以下略)の顔がシリアスになってきている。
「お正月はね、浩平君に年賀状を書いたんだ。一生懸命書いたけど、届くかどうかも分からないような出来で……それでも浩平君は返事を書いてくれた。ひとつだけ打ちまちがえた、点字の年賀状」
みさき先輩はふっと窓の外を仰ぎ、小学校の運動会並みなノリの紅白を写し続けるテレビの電源をそっと切った。
「どうしてあんなに幸せでいられたんだろうね……」
立ち上がったみさき先輩は窓を開け、窓枠に手をついて白い息を吐いた。
「今日は、星が綺麗なのかな?」
それを聞いた頭の大きな灰色のアイツはみさき先輩の手を取り、何故か窓の外に浮かんだ円盤へと誘った。

「と、いうことがあったんだよ」
「そ、そうか……よかったじゃないか、先輩」
(ああ……どうか先輩の脳内にゲルマニウムなんかが埋め込まれてませんように……)
20世紀最後の年、折原浩平はそんな思いとともに過ぎゆく年を見送っていたそうな。
それはただ、それだけのお話。

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考えてみるとONEのシナリオではミレニアムイヴを一人で過ごすことになるんですよね、ヒロイン全員。ちょっと悲しいお話です。周りがあれだけ盛り上がってるのに浩平不在ってのはつらいだろうな……(じゃあ何故こんなものを書くッ)

ちょっと前に「彼女の扉を叩く者」を予告してたんですが……年が明けてからということにして下さい。冬休みの課題が結構あって……。
「ジャガーノートアタックッ(轢殺)!」
へぶしっ! い、今謎の車椅子による一撃が高砂を……
「セカンドチャリオット(二度轢き)!」
   ぐちゃっ

「ふう……ゴミの処理は終わりましたね。年末ですもの、こういうことはきちんとしておかないと。
ええと、はじめましての方も結構いますよね。高砂の連載処女作の主人公……のような役を務めさせていただいております、萩野ちとせと申します。浩平君を待ち続けるみさきちゃんとわたしの絆を描いた連載SS『彼女の扉を叩く者』は新年に向けて高砂が一応書いてるみたいです。もう少々お待ち下さいませね。
何でも彼によると私はオリキャラ4人(そういえば深錫君はまだあとがきに出ていませんね)の中で一番の難産だったそうですが……それにしたって、ねえ?」
  ぐりぐり(高砂の屍を車椅子で何度も轢く音)
くっ……2000年はリベンジだからな……覚えてろ俺のオリキャラども……(死)