茜色の姉妹 序章  胎動 ―fetal movement― 投稿者: 高砂蓬介
「それ」は、ゆっくりと息をついた・・・というか、気分的にはそうしたかった。いかんせんまだ肉体も持っていない存在なのだから、出来ないのは仕方のないことではある。
誰も知らない場所。
何者も到達出来ないひとりの人間の心の奥深くで、「それ」は生まれた。
いつのことだかは覚えていない。「それ」に明確な時間の意識が生まれたのは、生まれてからしばらく経ってからのことだったからだ。
「それ」は考えた。どうしたら、この窮屈な場所から出ることが出来るのか。
そのためにはまず、「自分」が必要だった。女がいい。それも、宿主に出来るだけよく似た。
「それ」は「自分」を作り始めた。完成するまでには、まだしばらくの時間が必要だ。けれども、とりあえずの骨組みは出来た。日本人、十七歳、女。まずはこれで十分だ。
「それ」―いや、もはや「彼女」と呼ぶべきか―はほくそ笑んだ・・・またしても気分的には。
完全に「自分」を完成させ、世界に具象するまでは感情を動作で表すのは我慢せねばならない。不満だったが仕方がない。もうしばらくの辛抱だ。
「彼女」は眠りにつくことにした。愚かな彼女の宿主は、彼女の存在に気付いてさえいないだろう。気兼ねなく休息をとれるのはすばらしい。最高だ。
短いまどろみの時間、彼女は考えた。世界に生まれたとき、自分は何をすべきだろう?
決まっている。

里村茜を、この世界から排除するのだ。

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どうも。ちょっと久しぶりな高砂です。
今回は目先を変えて、茜メインのサイコサスペンス風です。
またしても新キャラが出ますが、まあそれは大目に見てやって下さい。
「彼女の扉を叩く者」も書いてますが、もーちょっとかかる予定です。何しろ中間の真っ最中でして。
しかしわけわかんない文章・・・(汗)
つぎはまともに書く予定です。それでは、おそらく「彼女の扉を叩く者」第二話でお会いしましょう。